石井武志、つらかった日々と武居由樹の支えを語る 福岡県うきは市出身のWBA世界王者

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WBA世界ミニマム級王者の石井武志(27)=大橋=が、11月26日の初防衛戦を前に、大橋ジムに入門したころのつらかった日々を語った。11月6日に公開された地元紙のインタビューで、何度も「逃げよう」と考えたこと、そのとき支えになったのがキックボクシングの先輩、武居由樹だったことを明かしている。福岡県うきは市出身の27歳は、その武居と同じ日のリングで、同級11位のサイバージョン・メデシロ(フィリピン)を迎え撃つ。
「逃げよう」と考えた横浜での日々
石井が地元・福岡を離れ、横浜市の大橋ジムに入門したのは2021年の春、21歳のときだった。プロのキックボクサーとして3年間リングに上がり、大和KICKの52.5キロ級王者にもなっていたが、ボクシングでは一からのスタートになる。
周りには実績や才能を持つ選手がそろっていた。慣れない都会で黙々と練習を重ねる毎日はつらく、「逃げよう」と考えたことは一度や二度ではなかったという。努力家として知られる石井にも、そんな時期があった。
支えたのは武居だった。石井はインタビューで「具体的なアドバイスがあったわけじゃないけど、話をじっくり聞いてくれた。自分も涙を流して、ずいぶん楽になった」と話し、この恩を今も忘れていない。そこから苦しい練習を楽しめるようになり、東洋太平洋王座、そして世界王座へと階段を上がっていく。
羽田空港で出迎えた先輩、武居由樹
2人の縁は、石井がまだ福岡でキックをしていたころにさかのぼる。武居が育った東京のキックボクシングジム「パワーオブドリーム」の合同合宿に参加する機会が何度かあり、そこで初めて顔を合わせた。石井が高校生のころ、東京までK-1を見に通っていた時期に、K-1 WORLD GPで優勝したのが武居だった。石井にとっては憧れの存在だ。
転向を考えた理由は体重だった。身長156センチの石井に合う階級がK-1の最軽量級にはなく、ミニマム級のあるボクシングを選ぶ。武居の紹介で大橋ジムへの入門が決まった。
上京した日、羽田空港で石井を出迎えたのも武居だった。その日から入るはずだったジムの寮に布団も用意していなかった石井を、自分のマンションの部屋に泊めている。合宿の合間に言葉を交わす程度の間柄だった先輩が、ここから何かと面倒を見るようになった。
デビューまでの1年は、キック時代の夜2時間・週5日の練習から、1日2部、ときに3部の練習を週6日こなす生活へ変わる。武居はパワーオブドリームでの練習や、八重樫東トレーナーのフィジカルトレーニングにも石井を誘った。今年2月の専門誌の取材で、石井は「武居さんが引っ張ってくれて、ついていかせてもらえて、ほんとにありがたかったです」と語っている。
2022年5月に4回戦でデビューすると、その年のうちに全日本ミニマム級新人王を手にした。
眼窩底骨折、「もう辞めようかな」からの立て直し
順調に見えた歩みは、2023年9月に止まる。プロ8戦目で世界ランカーのリト・ダンテ(フィリピン)に判定で敗れ、左目の眼窩底(目の周りを囲む骨の底の部分)を骨折した。手術を受けた石井は「もう辞めようかな」とも考えたという。
ここでも心に残ったのは武居の言葉だった。真剣に話し合ったわけではない何気ない一言として、7月の世界戦発表時の取材で「まだまだだよ。これからだよ」という言葉を挙げている。走り込み合宿でいつも先頭を走っていた石井が最下位に沈んだ時期もあったが、ジムの仲間に支えられて立ち直ったと話した。
この敗戦が戦い方を変えた。左ボディーを得意とする接近戦のファイターは、距離感や駆け引き、フェイントを意識する「考えるボクシング」を身につけ、2024年9月に東洋太平洋ミニマム級王座を獲得する。2025年9月の2度目の防衛戦の後は、苦手にしていたフィジカルトレーニングにも本格的に取り組んだ。
下半身を中心に体を鍛え直すと、ぶつかっても力負けせずに押し込めるようになった。「相手が勝手に下がるんでスタミナも取られなくなった」。その成果が出たのが、2026年9月2日、横浜BUNTAIでのWBA世界ミニマム級王座決定戦だった。元WBO同級王者のウィルフレド・メンデス(プエルトリコ)を1回1分5秒でKOし、井上尚弥の1分10秒を5秒縮める日本男子の世界戦最速KOで王座についた。大橋ジムから生まれた6人目の世界王者で、5人目は2024年5月に東京ドームでWBO世界バンタム級王座を獲得した武居だった。
うきは市で育った27歳
石井は1999年10月26日、うきは市生まれ。市によると浮羽町の出身で、大石小学校、浮羽中学校を経て福岡県立浮羽究真館高等学校を卒業した。中学2年のとき、地元の道場「誠武塾」で空手を始めた。テレビやYouTubeでK-1を見るのが好きで、強い人への憧れがあった。高校卒業後にプロのキックボクサーとなり、キックでは4戦全勝(3KO)の戦績を残している。
世界王座を手にした直後、うきは市は公式サイトで快挙を伝え、9月10日に市役所正面玄関で石井の凱旋訪問を行うと告知した。世界戦の後には久しぶりに故郷で旧友と過ごし、好物のウナギを食べて英気を養ったという。
王座決定戦のリング上で、石井は自分を才能のない人間だと言い、周りに支えられて努力すれば夢はかなうと証明できたと話していた。11月6日のインタビューでも「人生をワクワクさせてくれるボクシングという競技に出会えて本当に良かった。努力し続ければ夢はかなうことを次戦でも証明したい」と語っている。
11月26日、武居と同じ興行で初防衛戦
初防衛戦は11月26日、東京・EBARA WAVE アリーナおおた(大田区総合体育館)で行われる「NTTドコモ Presents Lemino BOXING ダブル世界タイトルマッチ」のセミファイナルに組まれた。12回戦で、挑戦者のメデシロは同級11位の21歳。9戦全勝(5KO)のまま世界初挑戦を迎える。石井の戦績は13戦12勝(9KO)1敗だ。
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王座獲得から85日での防衛戦になる。石井は10月30日公開のインタビューで、11月に試合と聞いてすぐに武居と同じ日にできると思ったと明かし、それが一番うれしかったと話した。同じ興行で武居は、大嶋剣心(KOD LAB)とのスーパーバンタム級8回戦に臨む。
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メインイベントはIBF世界フライ級王者・矢吹正道(緑)の3度目の防衛戦。キックからボクシングへ同じ道を歩いた先輩と後輩が、11月26日、同じリングに上がる。
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防衛戦に向けて、石井は「守りに入らず挑戦者の気持ちでしっかり勝ちきりたい」と意気込みを口にしている。
[文/構成 by スポーツ担当ライター 久遠(KUON)]















































































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