シンクロ9、11月に米国で初の国際大会 日本チームが出場へ 2030年冬季五輪の新種目

時間がない人向けの30秒で理解ゾーン
報道によると、日本スケート連盟は10月21日に都内で理事会を開き、女子9人制のシンクロナイズドスケーティング「シンクロ9」の国際大会に、シニア3チームとジュニア2チームを派遣すると決めた。大会は11月7、8日に米カリフォルニア州アーバインで行われ、この種目で初めての国際大会となる。シンクロ9は2030年フランス・アルプス冬季五輪で初めて実施される新種目だ。
11月7日から米アーバインで初の国際大会
舞台は、米カリフォルニア州アーバインのグレートパーク・アイス&ファイブポイント・アリーナ。国際スケート連盟(ISU)が2026-27シーズンに組んだシンクロ9の国際大会4戦のうち、最初の1戦にあたる。日本スケート連盟も年間スケジュールに「Synchro9 International Competition USA 2026」として11月7日から8日の日程を載せた。
日本からはシニア3チーム、ジュニア2チームが出場する。理事会では、このアーバイン大会で日本勢の最上位になったチームを、11月28、29日にフィンランドのヴァンターで開かれる2戦目にも送る方針を固めたと報じられた。チーム名は、10月22日時点で連盟の公式サイトに掲載されていない。
狙いは来春の世界選手権の出場枠だ。シンクロ9の世界選手権は2027年3月27、28日に英国ノッティンガムで行われ、世界ランキングの上位チームに出場の道が開ける見通しとなる。竹内洋輔フィギュア強化部長は「世界選手権の枠獲得を目指す方向」と話したという。
2030年のアルプス五輪をにらんだ強化が、ここから動き出す。
国際大会はアーバインとヴァンターの後、2027年1月29、30日にフランスのルーアン、2月20、21日にハンガリーのブダペストと続く。シーズンの締めくくりは、2027年3月27、28日にノッティンガムで開かれるシンクロ9の世界選手権となる。同じノッティンガムでは、3月31日から4月4日にかけて、従来形式の世界ジュニア選手権と世界選手権も続けて行われる。
| 日程 | 開催地 | 位置づけ |
|---|---|---|
| 2026年11月7〜8日 | 米国・アーバイン | シンクロ9初の国際大会。日本はシニア3チーム、ジュニア2チームを派遣 |
| 2026年11月28〜29日 | フィンランド・ヴァンター | 2戦目。アーバインの日本勢最上位チームを派遣する方針 |
| 2027年1月29〜30日 | フランス・ルーアン | 3戦目 |
| 2027年2月20〜21日 | ハンガリー・ブダペスト | 4戦目 |
| 2027年3月27〜28日 | 英国・ノッティンガム | シンクロ9の世界選手権 |
16人から9人へ、何が変わるのか
シンクロナイズドスケーティングは、大人数の選手が手をつなぎ、列や円、車輪のような隊形をそろえながら滑る団体競技だ。従来のシニアは16人で1チームを組み、ショートプログラムとフリーの合計点で順位を争ってきた。
シンクロ9は、その人数を9人(ほかに補欠1人)まで絞った。少人数になった分、隊形はより詰まり、隊形から隊形への移り変わりも速くなる。
なぜ9人なのか。
背景には五輪の選手数の上限がある。1チーム16人では、選手村に送り込む人数が多すぎた。カナダの強豪レ・シュプレームのマリリン・ラングロワ・コーチは「1チーム16人の選手を五輪の選手村に連れていくことが、最大の課題の一つだった」と語っている。人数を減らして五輪の枠に収めつつ、競技の見応えを残す。その答えとして生まれたのが9人制だった。
勝ち抜き方式と2チームが同時に滑る対決
大会の進め方も、従来とは大きく変わる。チームはグループに分かれ、1日目にまず3分30秒の演技を1チームずつ滑る。演技には毎季テーマが設けられ、2026-27シーズンはストリートダンスに決まった。
続くのが、2チームが同時に氷上に立つ30秒間の対決だ。グループ内で直接ぶつかり、上位2チームが2日目の準決勝へ進む。3位のチームでも、対決に勝てば上位に食い込める仕組みとなる。2日目には順位決定戦が組まれ、金メダルを争う決勝と銅メダルを争う決勝で最終順位が決まる。
採点も簡素になった。技術(難しさと動きのそろい具合)と芸術(独創性と演技)を1から100の尺度で評価する。観客が勝ち負けをつかみやすい形へ、競技そのものを組み替えたのだ。
7月のIOC理事会で2030年大会入り
五輪入りが決まったのは2026年7月7日。国際オリンピック委員会(IOC)はオンラインで開いた理事会で、2030年冬季五輪の実施種目を決め、フィギュアスケートにシンクロ9を加えた。同じ理事会では、1924年の第1回冬季五輪から続いてきたノルディックスキー複合を2030年大会から外すことも決めている。
アルプス五輪は2030年2月1日から17日まで、フランスのアルプス地方で開かれる。シンクロ9は女子だけが出場する種目で、9カ国がそれぞれ9人と補欠1人のチームを1つずつ出す。冬季五輪の本大会でシンクロナイズドスケーティングのメダルが争われるのは、これが初めてとなる。ISUは、IOC理事会の決定を「歴史的」と歓迎した。
それより前に、シンクロ9は2028年にイタリアで開かれる冬季ユース五輪(ドロミティ・バルテッリーナ大会)での実施も決まっていた。2026年3月29日には、チェコ・プラハで開かれたフィギュアスケート世界選手権のエキシビションで、シンクロ9のデモンストレーション演技が初めて観客の前で披露された。4月にオーストリア・ザルツブルクで開かれたシンクロナイズドスケーティングの世界選手権でも、カナダのレ・シュプレームなど3カ国のチームがデモ演技を行っている。
日本の第一線は神宮のチーム、世界の壁は厚い
日本でシンクロナイズドスケーティングの第一線に立つのは、東京を拠点とするJingu Ice Messengers(神宮アイスメッセンジャーズ)だ。日本スケート連盟は令和8年度の強化チームBに、このチームを指定している。
2025年4月のヘルシンキ、2026年4月のザルツブルクと、世界選手権の日本代表は2年続けてJingu Ice Messengersが務めた。ジュニアの世界選手権にも、同じ系列のJingu Ice Messengers Juniorが送り出されている。
世界選手権での順位は、2023年と2024年が10位、2025年が9位、2026年は15位だった。上位はフィンランド、カナダ、米国のチームが占め続け、2026年はカナダのレ・シュプレームが優勝している。日本は9位から15位にとどまり、表彰台との差はまだ大きい。
| 年 | 開催地 | 日本代表 | 順位 | 優勝チーム |
|---|---|---|---|---|
| 2023 | 米国・レークプラシッド | Jingu Ice Messengers | 10位 | レ・シュプレーム(カナダ) |
| 2024 | クロアチア・ザグレブ | Jingu Ice Messengers | 10位 | レ・シュプレーム(カナダ) |
| 2025 | フィンランド・ヘルシンキ | Jingu Ice Messengers | 9位 | ヘルシンキ・ロケッツ(フィンランド) |
| 2026 | オーストリア・ザルツブルク | Jingu Ice Messengers | 15位 | レ・シュプレーム(カナダ) |
2026年2月の全日本選手権シニアでも、Jingu Ice Messengersが合計162.62点で優勝した。2位のチームは111.02点と、50点以上の差がついている。国内の層の薄さは、数字にもはっきり表れる。
一方で、シンクロ9の誕生を機に動き出したチームもある。チーム自身の発表によると、2026年夏には東京で、シンクロ9に挑むための新しいチームが結成された。指導するのは、スウェーデンのチームで世界選手権を2度制し、日本代表としても世界選手権に出場した経験を持つコーチだ。9人なら、16人をそろえるよりも人を集めやすい。少人数化は、これまでチームを組めなかった選手にも門を開く。
全日本でも新設、2030年のアルプスへ
国内の受け皿づくりも進む。日本スケート連盟は7月、シンクロ9の全日本選手権と全日本ジュニア選手権を新たに開くと発表した。2027年2月、従来の全日本シンクロナイズドスケーティング選手権と同じ期間に行う計画だ。
アルプス五輪に出られるのは9カ国。五輪への出場資格の決め方は、まだ固まっていない。だからこそ、最初のシーズンから国際大会で実績を積み、世界ランキングで上位に食い込んでおく意味は大きい。
日本はフィギュアスケートのシングルで、五輪の金メダリストを生んできた国だ。ただ、9人がぴたりと動きをそろえる団体の滑りは、一人で跳ぶジャンプとは別の技術を求める。11月7日のアーバインで、日本のシニア3チームが世界の強豪とどこまで渡り合えるか。新種目の物差しが、そこで初めて示される。
[文/構成 by スポーツライター 南條楓]














































































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