入江聖奈、倉吉市立河北中学校で防災授業 「ボクシングも防災も日頃からの備えが大切」

時間がない人向けの30秒で理解ゾーン
東京五輪ボクシング女子フェザー級金メダリストの入江聖奈(26)が10月21日、鳥取県倉吉市の倉吉市立河北中学校で防災授業の講師を務めた。鳥取県中部地震からちょうど10年となる日で、1年生から3年生まで336人が参加。「ボクシングも防災も“日頃からの備えが大切”」と語り、今からできる備えを呼びかけた。
倉吉市立河北中学校の336人に伝えた「今からの備え」
授業は鳥取県が主催した「鳥取県中部地震10年行事」の一部として、10月21日の午前中に行われた。入江は県の「ぼうさい変(か)エル大使」として登壇し、全校生徒を前に、地震はいつ起きるか分からないこと、だからこそ普段の準備が身を守ることを伝えた。
「地震はいつ起こるかわからない。非常用バッグや備蓄品の用意、避難ルートや避難場所の確認など今からできる備えをしてほしい」。県の発表によると、入江は生徒にそう求め、「ボクシングも防災も“日頃からの備えが大切”です」と続けた。
報道によると、入江は、普段の暮らしも見方を変えれば防災につながるという趣旨の話もしている。この日は「いつ起こるか分からないから日頃の備えがめちゃくちゃ大事だよということ」とも話している。
生徒全員には、県が作った「防災ガイドブック」が配られた。授業では避難訓練や備蓄品の準備といった日頃の準備の大切さが伝えられ、地震を想定した避難訓練では、生徒が机の下にもぐって身を守る動きを確かめた。
金メダリストの話から入った防災授業
授業は、いきなり防災の話から入ったわけではない。最初の演題は「不器用な私が金メダリストになれた思考力~金メダルから学んだ目標達成方法~」。オリンピックで金メダルを取るまでの努力に加え、入江が大学院で続けるカエルの研究の話もあった。
ボクシングと防災が、どうつながるのか。
入江の答えは一貫している。取材に対し「ボクシングもカエルの研究も日頃から備えておかないと、いざ試合のときや、いざ論文書くってなったときに、ちゃんといいパフォーマンスが出せないので、そこは日頃の備えが大事、日頃の準備が大事」と明かした。試合に向けた準備も、研究も、防災も、根っこは同じだという考え方だ。
授業の後半には、河北中学校の生徒らが書いた防災絵馬を並べて「支え愛」の文字を描いたモザイクアートがステージでお披露目された。この作品は約3週間、鳥取県立美術館で展示される。
最後は、入江から各クラスの代表生徒へ「ぼうさい変エル金メダル」が手渡された。カエルがボクシンググローブを着けたデザインで、入江の防災メッセージ「もしものために今からそなえよう!」が入る特製のメダルだ。会場の全員で「防災意識を変エル!」と声を合わせると、会場は拍手に包まれた。
生徒の感想と、缶詰を使った「防災献立」
授業を受けた生徒の受け止めは具体的だった。3年生の生徒は「いつ起きるか分からないし、起きてから何ができるかどうかもちゃんと今は決めていなかったので、今回の授業を聞けて、これから生かしていけると思いました」と話した。
県の発表では、別の生徒が「今日家に帰ったら家族全員で避難場所を確認したり、防災バッグを作るなど、みんなで防災意識を変えていきたい」とコメントしている。「家に帰ったら防災のブックなど開いて防災意識をもっと高めていきたい」という声もあった。
昼の給食も防災仕様となった。メニューはさばのみそ煮(缶詰使用)、ツナわかめサラダ(乾物・缶詰使用)、具だくさんのすいとん、お米と野菜のふりかけ。入江も1年生と一緒に同じ給食を食べた。
この日は、地震の被害を振り返る日でもあった。10年前の地震では倉吉市の給食センターの天井が崩れ、市内全域で給食が止まった。この日の献立は、缶詰や乾物など災害時にも活用できる食材を取り入れたものだ。生徒からは「缶詰とかそういうのでもすごくおいしいし、家の防災袋とかにも入れたいなって思います」という感想が出た。
鐘とタイムカプセル、校庭にはゴヨウツツジ
授業のあと、入江は倉吉市の鳥取県立美術館県民ギャラリーで開かれた「鳥取県中部地震10年セレモニー」に出席した。平井伸治知事や中部地区1市4町の代表、県議会議員、倉吉幼稚園の園児25人が参加し、地震発生時刻の午後2時7分に合わせて「未来に向けた希望の“鐘”」を3回鳴らした。
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園児たちが「未来への願い」を書いた絵馬はタイムカプセルに納められ、10年後に開けられる。入江は「鳥取県の絆を感じました。10年後、園児の皆さんと一緒にタイムカプセルをあけたい」と述べ、園児代表にもぼうさい変エル金メダルを贈った。
一連の行事の締めくくりは、再び河北中学校。校庭に平井知事、倉吉市の吉川仁彦副市長、倉吉市の地区防災リーダー、河北中学校の生徒会、そして入江がそろい、ゴヨウツツジの苗木2本を植えた。10月の「ぼうさいこくたい2026in鳥取」を訪れた愛子内親王殿下のお印にちなんで選んだ木で、初夏には白い花が咲く。平井知事は生徒に「皆さんで可愛がって育ててほしい」と頼んだ。
10年前、入江も高校の教室で揺れを感じた
鳥取県中部地震は2016年10月21日午後2時7分に起きた。マグニチュード6.6で、倉吉市、湯梨浜町、北栄町で最大震度6弱を観測。死者は出なかったものの、けが人が出て、住宅などの建物被害は約1万5000棟に及んだ。
米子市出身の入江にとっても、ひとごとではない地震だった。当時はまだ高校生。10月12日に倉吉市で開かれた復興イベント「福高祭」では、「技術の授業中でパソコンをかまっていて、その時に地震がきて、技術室の床が波打って」と当時の様子を口にしている。21日の取材にも「私は当時高校生で震度4ぐらいだったんですけど、震度4でもすごく揺れて、中部は本当に大変だったんだろうなと」と語った。
入江は2021年の東京五輪で、日本の女子ボクシング史上初の金メダルを手にした。2022年に現役を退き、現在は東京農工大の大学院でカエルを研究する。大の“カエル好き”として知られることから、鳥取県は9月17日、防災意識を「変える」とカエルをかけた「ぼうさい変エル大使」に入江を任命した。
任命式で入江は「防災には“備え”が最も大切。防災を自分事として考え、明日からではなく“今から”備えることが大切だと伝えていきたい」と話している。大使としては10月12日の福高祭、17日と18日に倉吉市で開かれた「ぼうさいこくたい2026in鳥取」の併催イベント「防災のテーマパーク」に続き、地震から10年の当日に、河北中学校の教壇に立った。
防災のテーマパークでは、車に積んであるジャッキで机を持ち上げ、下敷きになったカエル人形を助け出す体験も見せた。洗濯竿と毛布で担架を作る体験もあり、身近な道具が防災に使えることを来場者に伝えている。身近な物や日々の習慣を防災の目で見直そうという河北中学校での呼びかけは、大使として1カ月かけて伝えてきたことの延長線上にある。
地震から10年。中部の被災地の中学校で、金メダリストは備えを“今から”始めるよう336人に求めた。
[文/構成 by スポーツライター 久遠(KUON)]
















































































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