乃が美、今夏に倒産へ向けた法的手続きを検討していたと報道 店舗数は最盛期の200超から60店台に、閉店が相次いだ経緯

時間がない人向けの30秒で理解ゾーン
高級食パン専門店「乃が美」を運営する乃が美ホールディングス(大阪市中央区)が、今夏、倒産に向けた法的手続きを検討していたと11月6日に報じられた。元幹部の証言として、借入金を返すめどが立たず、大株主のファンドも再建を断念したとされる。会社と大株主は報道の時点で回答していない。店舗数は最盛期の200店超から60店台まで減った。
運営会社が今夏に法的手続きを検討と報道、会社側は回答せず
報道が出たのは11月6日だった。それによると、株式会社乃が美ホールディングスは今年の夏、倒産に向けた法的手続きの準備を進めていたという。根拠として挙げられたのは同社の元幹部の証言で、多額の借入金を返済する見通しが立たず、大株主の投資ファンドも経営の立て直しをあきらめたとされる。元幹部は、ここ3年ほど再生の専門家を招いて立て直しを図ったものの、うまくいかなかったとも明かしたという。
その後どう判断したのかは、報道の公開部分からは読み取れない。
報道側は乃が美ホールディングスと大株主のクレアシオン・キャピタルに事実関係を尋ねたものの、期限までに回答はなかった。11月6日午前の時点で、同社が裁判所に法的手続きを申し立てたという発表は確認できない。運営会社のコーポレートサイトにも、報道に触れたお知らせは見当たらない。
乃が美とは 大阪・上本町から始まった高級「生」食パン
乃が美は2013年10月、大阪・上本町に総本店を開いた。創業者は大阪プロレスの会長を務めた阪上雄司氏で、焼かずにそのままでもおいしく食べられる食パンを、高級「生」食パンの名で売り出した。
すぐに売れたわけではない。阪上氏はかつてのインタビューで、開業当初は1日30本も売れない日が続いたと語っている。2016年には「パン・オブ・ザ・イヤー」の食パン部門で金賞を受け、Yahoo!検索大賞の食品部門でも2017年、2018年と2年続けて大賞に選ばれた。今では高級食パンブームの火付け役として知られる。
店を増やす主な手段はフランチャイズ(FC)だった。会社の説明によると、事業の柱は直営店の「乃が美」と、加盟店の「乃が美 はなれ」で売る食パンの製造・販売にある。報道では、加盟店は毎月の売上の10%をロイヤリティ(ブランドの使用料)として本部に納める仕組みとされる。創業から約5年で100店を超え、2018年11月には東京都にも初めて出店し、2020年6月には47都道府県すべてに店がそろった。
ブームのさなかの2019年1月、投資ファンドのクレアシオン・キャピタルが資本参加を発表した。同社が運営するファンドの出資先であるCrustホールディングスを通じた出資で、経営の管理体制を整え、ゆくゆくは株式上場を目指すのが狙いだった。阪上氏は代表取締役を続けると発表され、報道では、このとき創業者らが株式の約半数をファンド側に譲ったとされる。持ち株会社の乃が美ホールディングスは、その少し前の2018年11月29日に設立されていた。
店舗数の推移 最盛期の200店超から60店台へ
公表資料と報道で確認できる店舗数は次のとおりだ。いずれもその時点の数字で、右側に出典の種類を添えた。
| 時点 | 店舗数と出典 |
|---|---|
| 2018年11月 | 108店、 |
| 2019年1月 | 111店、 |
| 2021年8月 | 230店以上、 |
| 2021年9月 | 238店、 |
| 2023年5月 | 国内143店と台湾1店、 |
| 2023年12月 | 116店、 |
| 2024年10月 | 国内107店、 |
| 2025年7月 | 国内87店、 |
| 2025年12月 | 国内84店、 |
| 2026年3月 | 国内70店、 |
| 2026年11月 | 60店台、 |
最盛期の数は、報道によって「200店超」「240店以上」と幅がある。2021年9月には238店を数え、このころは全国で1日に約9万本を売っていた。創業者の阪上氏は、2022年2月に乃が美を離れるまでに250店を出したとインタビューで語っている。
その238店は、2023年12月には116店と2年あまりで半分以下に減った。そこから3年足らずでさらに半分ほどになり、最盛期の200店超と比べると、今は3分の1ほどの規模となった。
閉店が相次いだ経緯 コロナ禍の後と加盟店との対立
ブームの落ち着きとコロナ禍
報道によると、高級食パンの人気が落ち着き始めたところにコロナ禍が重なり、各店の売り上げが落ちた。2022年6月の食品業界紙のコラムは、店先の行列を見かけなくなった一方で、乃が美が駅の構内や住宅街への出店を続け、日常的に買うパンへと軸足を移していると伝えていた。同じ年の3月には、海外1号店を台湾・台北市に出している。
加盟店との対立(2022〜2023年)
2022年7月、東京都内で加盟店を運営していた会社が本部に契約の解除を通知した。この会社は翌8月、契約時の説明義務違反などを理由に、損害賠償1円を求めて大阪地方裁判所に提訴したと発表し、9月末で都内の8店を閉めることも明らかにした。1円の損害賠償を求めた元加盟店オーナーの訴えについて、大阪地裁は2023年12月8日に請求を退けている。原告側は控訴したと報じられ、本部は取材に対し、訴えは事実無根だとして争う姿勢を示していた。
2022年12月には、加盟店のオーナー有志がロイヤリティの引き下げなどを求める要望書を本部に出したと報じられた。2023年に入ると、ロイヤリティの支払いが遅れたことを理由に、本部が加盟店6社との契約を解除したとも伝えられている。
閉店は北海道にも及ぶ。2023年7月17日には札幌市と北広島市の3店が営業を終え、札幌圏から店がなくなった。3店とも加盟店だった。
創業者らの退任と、今年の閉店
報道によると、経営が傾くなかで創業者らは会社を去った。創業者の阪上氏は2022年10月のインタビューで、同じ年の2月に乃が美を離れたと明かし、パン以外で人を喜ばせ、社会の役に立つことをしたいという思いなどを理由に挙げていた。ほかの創業メンバーが退いた時期は、報道の公開部分では触れられていない。
閉店は今年も止まらなかった。2026年3月8日には三重県四日市市の店が、建物の老朽化を理由に営業を終えた。地元のニュースは、桑名市の販売店もこれに伴って閉店し、県内から乃が美の店がなくなると伝えていた。そのあとに出てきたのが、今夏の法的手続きの検討をめぐる報道だ。
今の店舗は60店台、上本町の総本店は移転のため一時閉店中
報道によると、今の店舗数は60店台だ。会社も新商品の発表の中で、2026年3月31日の時点で国内70店を展開していると公表していた。創業の地である大阪・上本町の総本店は、移転のため一時閉店中とされる。移転先や営業の再開時期は、確認できる範囲では示されていない。
営業時間や営業日は店ごとに異なり、閉店の知らせも各地で続く。買いに行く前に、公式サイトの店舗一覧か各店への問い合わせで営業しているかを確かめておくと確実だ。
1日30本も売れない日から始まり、全国200店を超えるまでに広がった。その出発点の総本店は今、営業を休んでいる。会社と大株主が今回の報道にどう答えるのか、公式の説明はまだ出ていない。
[文/構成 by ライター 飯田タツヤ]














































































コメントはこちら