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望月衣塑子記者の経歴 菅官房長官会見での追及や映画『新聞記者』の原案で知られる東京新聞記者、対談本の回収と社外活動をめぐる報道も

望月衣塑子記者の経歴 菅官房長官会見での追及や映画『新聞記者』の原案で知られる東京新聞記者、対談本の回収と社外活動をめぐる報道も

時間がない人向けの30秒で理解ゾーン

東京新聞(中日新聞東京本社)の望月衣塑子記者(51)は、2017年に菅義偉官房長官の定例会見で質問を重ね、名前が広く知られるようになった。著書『新聞記者』(角川新書)は2019年公開の同名映画の原案となり、映画は日本アカデミー賞で最優秀作品賞など3部門を受賞している。2026年11月には内田樹氏との対談本が販売中止と回収に至り、本人が謝罪した。前半で記者としての歩みをたどり、後半で対談本と社外活動をめぐる報道をまとめる。

俳優を夢見た少女が記者を志すまで

望月記者は1975年、東京都で生まれた。父は業界紙の記者だった。2025年10月に現代ビジネスで連載した「自分史」で、本人がそう書いている。

子どものころの夢は俳優で、連載ではミュージカル『アニー』の主役として歌った当時の写真も紹介した。関心が報道へ向かうきっかけは、中学時代に母親から勧められた1冊の本だった。フォトジャーナリストの吉田ルイ子さんが、南アフリカのアパルトヘイト(人種隔離政策)の実態を写真と文章でつづったもので、その衝撃から記者という仕事に憧れるようになったという。2017年の著書『新聞記者』にも「吉田ルイ子さんのあとを追って」という節がある。

進学先は慶應義塾大学法学部。在学中にはオーストラリアへ留学した。ところが就職活動は思うように進まない。テレビ局を受けても面接で落ち続け、最終面接まで進んだ局は一つもなかったと、連載で振り返っている。

2000年に中日新聞社へ 事件取材から武器輸出の取材へ

2000年、中日新聞社に入社し、東京本社(東京新聞)に配属された。千葉、神奈川、埼玉の各県警や東京地検特捜部を担当し、事件取材を中心に経験を積む。

2004年には、日本歯科医師連盟(日歯連)のヤミ献金疑惑をめぐる一連の事実を報じた。入社4年目の仕事だった。

その後は経済部などを経て、社会部の遊軍記者になる。遊軍記者とは、特定の担当を持たずに大きなニュースを追う記者のことだ。防衛装備品の輸出や、防衛分野と大学の研究の結びつき(軍学共同)を取材し、2016年7月には『武器輸出と日本企業』(角川新書)を出版した。

2017年6月、菅官房長官の定例会見で質問を重ねる

転機は2017年だった。4月から森友学園と加計学園をめぐる問題の取材班に加わり、6月6日、初めて菅義偉官房長官の定例会見に出席する。

当時は、加計学園の獣医学部新設をめぐって「総理のご意向」などと書かれた文書が問題になっていた。菅氏は会見で、文書は出所が分からず調査する必要はないとの姿勢を示していた。望月記者はこの文書の扱いを何度もただし、社会部の記者が官房長官会見で質問を続ける場面はテレビのニュースでも取り上げられた。

2018年12月には、首相官邸の報道室長が、望月記者の辺野古の埋め立て工事をめぐる質問に事実誤認があったとして、内閣記者会に「問題意識の共有」を求める文書を出した。日本新聞労働組合連合(新聞労連)は2019年2月、記者の質問の権利を制限するものだとして抗議の声明を出し、東京新聞も同じ月に、官邸側とのやりとりを検証する記事を載せている。

2017年10月には、記者としての歩みと会見での経験をつづった『新聞記者』を出版した。この本は第23回平和・協同ジャーナリスト基金賞の奨励賞を受けた。2019年度には、東京新聞の「税を追う」取材チームの一員としてJCJ大賞も受賞している。

『新聞記者』が映画の原案に 日本アカデミー賞で3部門

著書は映画になった。2019年6月28日公開の『新聞記者』(藤井道人監督)は、望月記者の『新聞記者』と河村光庸氏を原案にした作品だ。実在の人物名は使わず、フィクションとして組み立てている。新聞記者の吉岡エリカ(シム・ウンギョン)と、内閣情報調査室で働く官僚の杉原拓海(松坂桃李)の葛藤を描いた。

2020年3月6日の第43回日本アカデミー賞では、最優秀作品賞に加え、松坂が最優秀主演男優賞、シム・ウンギョンが最優秀主演女優賞に選ばれ、主要3部門を手にした。

本人を追ったドキュメンタリーもある。森達也監督の『i-新聞記者ドキュメント-』は2019年11月15日に公開され、官邸の記者会見などで取材する望月記者の姿を記録した。企画と製作は、映画『新聞記者』と同じ河村光庸氏だ。第32回東京国際映画祭の日本映画スプラッシュ部門では作品賞を受けている。

著書は2025年8月の自伝『ブレない人』(講談社)、『報道現場』(角川新書)、『ジャーナリズムの役割は空気を壊すこと』(集英社新書)、『追及力』(光文社)など多い。最近は入管の問題やジェンダー格差、ロシアのウクライナ侵攻なども取材し、自身のYouTube番組でも発信を続けてきた。

望月衣塑子記者の歩み 年表で振り返る

年出来事
1975年東京都に生まれる
2000年中日新聞社に入社
2004年日歯連のヤミ献金疑惑を報じる
2017年6月菅官房長官の定例会見に初めて出席
2017年10月著書『新聞記者』を出版
2018年12月首相官邸が内閣記者会に、望月記者の質問をめぐる文書を出す
2019年6月映画『新聞記者』が公開
2019年11月映画『i-新聞記者ドキュメント-』が公開
2020年3月映画『新聞記者』が日本アカデミー賞で3部門を受賞
2025年8月自伝『ブレない人』を出版
2026年9月内田樹氏との対談本を出版
2026年11月対談本の販売中止と回収が決まる

内田樹氏との対談本が回収に 本人は生配信で謝罪

ここからは、11月に入って報じられた出来事だ。

思想家の内田樹氏との対談をまとめた朝日新書『常識なき世界を生き延びるために』は、2026年9月11日に刊行された。望月記者の発言部分のうち、「日本中学生新聞」を創刊した高校生、川中だいじさんに関する記述に複数の誤りがあった。朝日新聞出版は10月27日に「お詫びと訂正」を出し、11月1日には電子版を含めて出荷と販売を中止し、回収すると発表した。

望月記者は、川中さんがXで誤りを指摘したのと同じ10月28日にXで謝罪し、11月1日には自身のYouTube番組の生配信で改めて謝罪した。誤りが生じた経緯は、弁護士とともに対談の記録などを照らし合わせて調べており、結果を公表する考えを示している。

東京新聞は11月2日、この問題を自社の記事で伝えた。新書の発行は計2万部で、回収の対象は書店に残る約8000部。記事には、望月記者の次のコメントが載っている。

チェックが不十分だったため、事実と異なる記述を公表した上、川中さんの気持ちを傷つけてしまった。川中さんをはじめ、関係する皆さまにおわび申し上げる

同じ記事で、東京新聞編集局もコメントを出した。

今回の事態は、社外の業務とはいえ、記者活動の根幹に関わる問題であると重く受け止めています。望月記者に対し、川中さんをはじめ関係者に謝罪と説明責任を果たすよう強く求めるとともに、再発防止を徹底します。

関連記事:望月衣塑子氏と内田樹氏の対談本、朝日新聞出版が回収へ 日本中学生新聞・川中だいじさんに関する誤記の中身と著者の謝罪

デイリー新潮が報じた社外活動の扱い

その後、11月6日にはデイリー新潮が、東京新聞が望月記者に当面の社外活動をしないよう言い渡したと報じた。デイリー新潮によると、個人で運営するYouTubeの「望月いそことオッカ君チャンネル」も含まれるという。

デイリー新潮はこの内容を東京新聞の記者の証言として伝えており、期間は「当面」とされるだけで、具体的には示されていない。11月6日時点で、東京新聞が社外活動の扱いについて公式に発表したものは確認できていない。

デイリー新潮によると、社外活動に制限を加えたのは事実かと尋ねられた東京新聞は、2日の東京新聞デジタルと3日の朝刊に載せた編集局コメントのほかにコメントはないと答えたという。編集局はそのコメントで「再発防止を徹底します」としている。望月記者は、誤記の経緯を調べた結果を公表する考えを示している。

[文/構成 by ライター 飯田タツヤ]

寄稿者

飯田タツヤ
時事ニュースを中心に、社会の動きから芸能・スポーツの話題まで幅広く書いているWebライターの飯田です。ライター歴は6年。心がけているのは、発表や報道で確認できたことと、まだ分かっていないことを分けて書くこと。「何が起きて、暮らしにどう関わるのか」を最初に整理しています。休日はラジオを流しながらの散歩とサウナ。

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