望月衣塑子氏と内田樹氏の対談本、朝日新聞出版が回収へ 日本中学生新聞・川中だいじさんに関する誤記の中身と著者の謝罪

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朝日新聞出版は11月1日、思想家の内田樹氏と東京新聞記者の望月衣塑子氏の対談本、朝日新書『常識なき世界を生き延びるために』の出荷と販売をやめ、回収を進めると発表した。「日本中学生新聞」を創刊した川中だいじさんについての記述に、複数の誤りがあったためだ。電子版も販売中止の対象になる。望月氏と内田氏はそれぞれ謝罪し、出版社は原因を調べている。
朝日新聞出版が11月1日に回収方針を発表
対象の本は、2026年9月11日に刊行された朝日新書『常識なき世界を生き延びるために』(新書1073、定価990円、248ページ)。内田氏と望月氏の2人が語り合った対談本だ。
朝日新聞出版は11月1日、公式サイトに「回収方針のお知らせとお詫び」を出した。本文のうち川中さんに関する内容に複数の誤りがあったとして、この日までに電子版を含めた出荷と販売の中止を決めた。書店にある分は関係各所と回収の手続きを進め、早急な返品対応を書店へ頼む。電子書籍も、各ストアに順番に販売中止を求めている。
誤りに気づけなかった理由について、出版社は編集作業の過程での点検が不十分だったと説明した。原因を調べるとともに、本全体の内容を点検し直すとしている。訂正の申し入れから回収方針を決めるまでに時間がかかり、川中さんと家族に迷惑と心労をかけたことも謝罪し、今後は誠意をもって対応すると約束した。
すでに本を買った人への扱いはどうなるのか。
11月1日時点で、個人の購入者向けの返金や返品の手続きは、出版社の発表に示されていない。発表にあるのは書店に並ぶ分の回収と、電子書籍ストアへの販売中止の要請までだ。
報道によると、この本は2万部が発行され、このうち書店の在庫など約8000部を、2日以降に順次回収する。すでに買われた分への対応は、今後検討するという。
何が間違っていたのか、訂正の中身
回収の前に、朝日新聞出版は10月27日、公式サイトに「お詫びと訂正」を載せていた。誤りがあったのは、望月氏が川中さんを紹介した215ページ、217ページ、239ページの部分だ。書籍ページで示された訂正を整理すると、次のようになる。
| 箇所 | 訂正前 | 訂正後 |
|---|---|---|
| 215ページ5行目 | 川中くんは周りの子から「老害」と言われたり | この記述を削除 |
| 215ページ6〜7行目 | 私の中学生の息子が/ | 川中くんが/ |
| 217ページ7〜8行目 | ぶら下がりで当てましたが | 当てましたが |
| 239ページ8〜13行目 | 選挙の時に「親に投票に行くように呼びかけてください」という新聞を学校に張り出したら先生に剝がされた。外務省に取材しようとしてたらい回しにされ、 | 小学生の頃から学校の新聞委員会で壁新聞を作り、 |
訂正前の本では、川中さんの話が、望月氏の息子の話として語られていた部分がある。周囲から「老害」と呼ばれたという話や、先生に壁新聞を剝がされたという話も、訂正で消えた。
新聞を始めた理由も変わった。訂正後の説明では、川中さんは小学生の頃から学校の新聞委員会で壁新聞を作り、国政選挙の時には各政党のキャッチフレーズと政策の一覧とともに「投票に行こう!」と書いていた。「日本中学生新聞」は、2023年5月のG7広島サミットの取材を申し込むために創刊したという。
川中だいじさんの指摘と2人の著者の謝罪
川中さんは2023年に「日本中学生新聞」を創刊し、取材と発信を続けてきた。2026年3月には、活動をまとめた著書『こちら日本中学生新聞』を柏書房から出している。
お詫びと訂正が出た翌日の10月28日、川中さんは自身のXで、望月氏が自分について話している内容の「ほとんどが事実ではありません」と書いた。学校の先生や同級生について事実でない記述があったことに衝撃を受けたとし、「訂正を出してもらうために時間と労力を取られていることに憤りを感じています」とも明かした。
同じ28日、2人の著者もXで謝罪している。内田氏は夕方、「ゲラを読んだ時点で気付かずに申し訳ありませんでした」と投稿した。ゲラは、本になる前に内容を確かめるための試し刷りのことだ。望月氏は夜に「事実と異なる記述を公表してしまい、深くお詫び申し上げます」と書き込み、公表前に十分確認すべきだったと述べた。
一方、朝日新聞出版は30日の時点で、誤りの経緯について報道機関の取材に「現在、詳細を調査中です」と答えていた。31日には公式サイトのお知らせ欄にも「お詫びと訂正」を出し、編集作業の過程で誤りに気づけなかったとして謝罪した。電子版は修正の手続きを取り、紙の本についても対応するとしたが、この時点で回収への言及はなかった。
流れが変わったのは31日夜だった。
内田氏は11月1日午前、前夜に出版社から本の回収とAmazonでの販売中止を伝えられたとXで報告した。川中さんから早く回収してほしいと求められ、出版社に働きかけていたことも説明し、対応が遅れたことを川中さんに謝っている。
望月氏がYouTubeで語った「最大の責任は私に」
望月氏は11月1日、自身のYouTube番組の生配信で、改めて謝罪した。この日の出演者は政治学者の白井聡氏だった。
望月氏は「本当に申し訳ございませんでした」と謝罪し、著者としての確認は「非常に不十分だった」と認めた。そのうえで「最大の責任は私にある」と語っている。最終章で川中さんを取り上げたのは、若い世代が日本の政治や社会、メディアを変えていくという思いからだったと説明し、結果として川中さんを大きく傷つけたと述べた。
なぜ事実と違う話が本に載ったのか。
その点について、望月氏は配信で具体的な説明をしなかった。弁護士とともに対談の記録などを照らし合わせて調べている最中で、結果は公表する考えを示した。11月1日時点で、誤りが生まれた原因は確認されていない。
川中さんに対しては、代理人を通じて直接謝る機会を求めたいとも述べた。
回収のこれからと残る課題
刊行から約1か月半、訂正の掲載から5日での回収方針となった。出版社は原因の調査と全体の再点検を進めており、望月氏も調査結果を公表するとしている。
残る焦点は3つある。誤りがどの段階で入ったのかという経緯の説明、すでに本を手にした読者への対応、そして川中さんへの直接の謝罪が実現するかどうかだ。
本の中で、川中さんは政治や社会を変えていく若い世代の一人として紹介されていた。その本人が、自分について話された内容の「ほとんどが事実ではありません」と指摘した。出版社と望月氏による調査結果の説明は、これからになる。
[文/構成 by ライター 飯田タツヤ]








































































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