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笹かまぼこ老舗3社が相次ぎ倒産、塩竈・亘理のどこ? 世界的なカニカマ人気ですり身を”買い負け”、価格転嫁も難しく

笹かまぼこ老舗3社が相次ぎ倒産、塩竈・亘理のどこ? 世界的なカニカマ人気ですり身を”買い負け”、価格転嫁も難しく

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宮城県の名物・笹かまぼこをつくる老舗の倒産が続いている。塩竈(塩釜)市の「武田の笹かまぼこ」と「カネコ橋沼商店」、亘理町の「馬上かまぼこ店」の3社で、いずれも創業90年を超える。背景には原料のすり身を海外勢に”買い負け”する状況と円安があり、地元の日常食だけに値上げもしにくい。

倒産した老舗3社は塩竈市と亘理町の90年超の店

最初に動きがあったのは2025年11月だった。塩竈市の武田の笹かまぼこが11月20日付で事業を停止し、翌21日に仙台地方裁判所へ自己破産を申請、同日に破産手続きの開始決定を受けた。

2026年9月には2社が続く。亘理郡亘理町の馬上かまぼこ店が9月8日に仙台地裁へ自己破産を申請して同日に開始決定を受け、塩竈市のカネコ橋沼商店も9月25日付で事業を停止して自己破産申請の準備に入り、その後、仙台地裁から破産手続きの開始決定を受けた。1年足らずの間に、宮城の老舗3社が相次いで店を閉じたことになる。

社名(所在地)創業手続き負債額主な商品・販路
武田の笹かまぼこ(塩竈市)1935年2025年11月20日付で事業停止、11月21日に自己破産を申請し同日に破産手続き開始決定約5億円笹かまぼこなどの練り製品。JR仙台駅構内、仙台空港、百貨店、道の駅などで販売
馬上かまぼこ店(亘理町)1912年2026年9月8日に自己破産を申請し同日に破産手続き開始決定約6億円笹かまぼこ、「吉次入りかまぼこ」、くんせい笹かまぼこ、細工かまぼこなど。仙南地域の直営店ほか
カネコ橋沼商店(塩竈市)1927年2026年9月25日付で事業停止、その後、破産手続き開始決定約4億5400万円「松島笹」、牛タン笹かまなど

負債額は、民間信用調査会社の調べをもとにした報道の数字だ。基準とした決算期によって報道ごとに数千万円の幅があるため、表では概数で示している。

武田の笹かまぼこ(塩竈市)

1935年の創業で、1962年に法人化した。自社工場で笹かまぼこなどの練り製品をつくり、JR仙台駅構内や仙台空港、百貨店、道の駅に商品を並べていた。本店では団体客向けのレストランも営んでいた。

2011年の東日本大震災では工場の機械設備が被災し、休業に追い込まれた。その後は復興需要で観光客が増え、2013年3月期には約6億1900万円の売上高を計上する。だが競合との競争にコロナ禍の観光客減少が重なり、2021年3月期の売上高は約7900万円まで落ち込んだ。自動販売機の導入やコラボ商品の開発で持ち直しを図ったものの、支払い利息などの負担が重く、赤字が続いていた。

馬上かまぼこ店(亘理町)

1912(大正元)年に水産加工業として始まり、1980年に法人化した。細工かまぼこを主力商品としてきたが、法人化以降は笹かまぼこへ軸足を移している。仙南地域の直営店6店舗のほか、インターネット通販や県内外のスーパーへの卸売りも手がけていた。

1992年6月期には約9億円の売上高があった。2026年には第77回全国蒲鉾品評会の細工蒲鉾の部で水産庁長官賞を受けたが、業績の立て直しにはつながらなかった。2026年6月期の売上高は約3億7000万円まで減り、5000万円を超える赤字が3期続いて債務超過に陥っていた。不採算店の閉鎖や経費削減でしのいできたものの、原材料費の高騰や店舗運営費の負担が重く、事業の継続を断念した。

カネコ橋沼商店(塩竈市)

1927年の創業。看板商品の「松島笹」のほか、鯛入りや牛タン、牡蠣、フカヒレを使った笹かまぼこを「カネコの笹かま」として販売していた。1994年3月期の売上高は約7億9000万円だった。

2011年の津波で本店工場と事務所が全壊し、約1年の休業を経て2012年4月に再開している。再建に伴う借入金の返済が重く、赤字の期間が長く続いた。売上は回復基調にあり、2026年3月期は4億8000万円台まで戻ったものの、生産コストの上昇で営業段階の赤字に転じ、資金繰りが限界に達した。

なぜ倒産が続くのか すり身の”買い負け”と円安

3社の事情はそれぞれ違う。武田の笹かまぼこはコロナ禍の観光客減少と利払いの負担が重く、馬上かまぼこ店とカネコ橋沼商店では原材料費の高騰が最後の一押しになった。その原材料の中心にあるのが、輸入の冷凍すり身だ。笹かまぼこはかつて宮城で獲れたヒラメなどの白身魚でつくられていたが、今はスケトウダラのすり身が主な原料になっている。

北米のすり身に頼る構造

日本かまぼこ協会の会長で、阿部蒲鉾店(仙台市)社長の阿部賀寿男氏は、FNNプライムオンラインの取材に、多くのかまぼこメーカーが原料の白身魚の9割以上を輸入に頼っていると説明した。安く大量に手に入った1970年代半ばから、各社は少しずつ海外原料へ切り替えてきたという。阿部氏は「環境の変化で揚がる魚も変わってきている」とも語っている。

その頼みの綱が揺らぐ。欧米では日本食の人気が高まり、カニカマの需要が世界中で伸びた。一方で北米では、すり身より魚の切り身(フィレー)の生産を優先する動きが出ている。すり身の奪い合いが起き、日本のメーカーは海外の買い手に競り負ける。これが”買い負け”と呼ばれる状況だ。

業界団体の日本かまぼこ協会と全国蒲鉾水産加工業協同組合連合会も、2026年6月1日付の緊急声明で、米国のスケトウダラすり身の生産減少と、ロシアでのすり身からフィレー加工への生産転換を挙げ、日本向けの供給の見通しが急速に不透明になっていると訴えた。

1年半で3割上がった輸入単価

値上がりの幅は数字にも表れる。貿易統計をもとにした報道では、米国産の冷凍スケトウダラすり身の輸入価格は2025年1月の1キロ376円から、2026年7月には483円に上がった。1年半ほどで約3割の上昇となる。別の報道によると、スケトウダラすり身全体の2026年8月の輸入単価は1キロ490円で、10年前の200円台後半を大きく上回る。

原料高に追い打ちをかけるのが歴史的な円安だ。同じ量のすり身を買うにも、より多くの円が要る。協会によると、中東情勢の影響で原油の供給が不安定になったほか、包装に使う石油由来のフィルムも、原料不足や物流の滞りで品薄と値上がりが同時に進んだ。人件費や物流費の上昇も重なる。馬上かまぼこ店の破産でも、原料の水産物の仕入れ費用に加え、ナフサ(石油化学製品の原料)不足によるコスト高が経営を圧迫したと伝えられた。

地元の日常食ゆえに値上げしにくい

コストが上がれば、商品の値段に上乗せするのが本来の流れだ。ところが笹かまぼこは、それが難しい。

七十七リサーチ&コンサルティングの田口庸友首席エコノミストは、FNNプライムオンラインの取材に、同じ仙台名物でも牛タンは観光客が多少高くても買うため値上がり分をある程度吸収できる一方、笹かまぼこは主に地元の人が買う品で、値上げすると買い控えが起きやすいと指摘した。田口氏はこうも話している。

「大変皮肉なことに、仙台名物と言いながら、海外情勢や為替の影響を大きく受けるようになっている。」

身近な食べ物であることが、かえって価格転嫁の壁になる。しかも塩竈市の2社は、ともに震災で被災した経験を持つ。武田の笹かまぼこは利払いの負担に苦しみ、カネコ橋沼商店は再建費用の借入金の返済を抱えたまま、原料高の波を受けた。

業界団体「日本の食卓から、かまぼこをなくさない」

日本かまぼこ協会は全国のかまぼこメーカーなどでつくる業界団体で、阿部氏が会長を務める。2026年6月の緊急声明では、調達先の多様化やコスト吸収に最大限取り組んでいるとしたうえで、状況は「企業努力のみで吸収できる範囲を大きく超えて」いると訴えた。

声明は政府や関係各方面に5項目を要請している。冷凍すり身の輸入不足や供給断絶を防ぐための国際的な調整と原料確保策、包装資材の安定供給、エネルギー供給の安定化、行政による総合的な支援、そして適正な価格改定への社会的理解と、円滑に価格転嫁できる取引環境の整備だ。消費者や取引先に対しては、一部商品の供給制限や出荷停止、販売規格の見直しが必要になる可能性にも触れた。

10月15日には、阿部会長名で「日本の食卓から、かまぼこをなくさない。」と題した宣言を出した。すり身が過去に例のない水準まで値上がりし、供給量も減っていると説明し、すでに業界では事業継続に関わる厳しい事例も生じているとした。取引先には製造コストの変化への理解と持続できる取引を、行政には原料の安定確保や新たな調達先の開拓に向けた支援を求めている。協会としては、需給情報の共有や、スケトウダラ以外のすり身原料の検討を進める方針だ。

笹かまぼことは 名前の由来と宮城名物になった経緯

そもそも笹かまぼこは、どうして宮城の名物になったのか。

農林水産省の「にっぽん伝統食図鑑」によると、始まりは明治の中ごろにさかのぼる。宮城の漁港でヒラメやスズキなどが大量に獲れるようになったが、当時は魚を遠くへ運ぶ手段が乏しかった。そこで保存のため、白身魚をすり身にして手のひらで形を整え、竹串に刺して焼くようになったのが焼きかまぼこの始まりだ。

最初は家庭でつくられていたものが、やがて加工品として店に並ぶ。当時は「手のひらかまぼこ」「ベロかまぼこ」とも呼ばれていた。その形が、初代仙台藩主・伊達政宗の家紋「竹に雀」の笹に似ていることから「笹かまぼこ」と呼ばれるようになり、昭和に入って名前が統一された。

原料は、かつての主役だったヒラメの漁獲量が大きく減ったため、今はスケトウダラなどの白身魚が使われている。地元の魚を保存するために生まれた食べ物が、今は海を越えて届くすり身で支えられている。今回の倒産の連鎖は、その構図の上で起きた。

宮城に残る約40社と地元のこれから

宮城県内では今も約40社が笹かまぼこをつくっている。各社は原料高に向き合いながら、生き残りの道を探る。海外の商談会で宮城の笹かまぼこを売り込む企業も増えているほか、阿部蒲鉾店は健康志向の高まりを追い風に、たんぱく質を手軽にとれる新商品の開発・販売に取り組んでいる。

生産拠点を海外へ移せばいいのではないか。阿部氏はこの考えを否定し、使う白身魚の配合などにさまざまなこだわりがあり、宮城でつくる意味は非常に大きいと強調した。厳しい状況のなかでも、伝統の食文化を守りたいと話している。

すり身の値上がりは、ここ数年続いてきた。協会は2025年12月の発表で、同年Bシーズンの米国アラスカ産スケトウダラすり身がAシーズンに比べて15%値上がりし、2026年Aシーズンについても値上げの情報がすでに伝わっていると報告していた。10月の宣言でも、すり身の値上がりを一時的な問題ではないと位置づけている。

武田の笹かまぼこは仙台駅や空港の売り場で、馬上かまぼこ店は仙南の直営店で、カネコ橋沼商店は「松島笹」で、それぞれ長く地元の人や旅行客に親しまれてきた。協会が掲げたのは「日本の食卓から、かまぼこをなくさない」という言葉だ。原料の確保と価格のあり方をどう立て直すか、業界と行政の対応が問われる。

[文/構成 by ミヅキ]

寄稿者

ミヅキ
Xで今どんな話題が盛り上がっているかを追いかけるのが日課のWebライター、ミヅキです。SNS発のニュースやネットの反応、思わぬ形でバズった出来事を中心に担当しています。紹介する投稿は本人や公式のものかを確かめてから扱い、反応を大げさに盛らないのが自分ルール。トレンド欄を眺めながら飲むカフェラテが一日の始まりです。

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