Twitch、配信をAmazonの生成AIに学習させる設定を追加 デフォルトはオンで配信者が変更できる

時間がない人向けの30秒で理解ゾーン
Twitchが8月12日(米国時間)、配信内容をAmazonの生成AIの学習に使うかどうかを選べる設定を追加した。この設定は初期状態でオンになっており、拒否したい配信者は自分で切り替える必要がある。最高製品責任者は「オプトイン方式では誰も許可しない」と明かした。
↓ 詳細が気になる方は、このまま下へ ↓
配信も過去動画もチャットも対象、切らないと学習される
Twitchは8月12日(米国時間)、配信者のチャンネルのコンテンツをAmazonの生成AIの学習データに使わせないための設定を追加した。設定画面の「セキュリティとプライバシー」タブの下方にある「生成AIのトレーニング」という項目で、ここをオフにすれば学習を拒否できる。
問題は、この設定が初期状態でオンになっている点だ。何もしなければ、配信者のコンテンツはAmazonの生成AIの学習に使われる。使いたくない人が自分で探して切り替える、いわゆるオプトアウト方式が採られた。
対象は広い。ライブ配信やビデオオンデマンド(VOD)、クリップ、配信チャット、チャンネル上の画像やテキストまで含まれる。Twitchのサポートページによると、オフにすれば、これらが「テキスト・音声・画像・映像を生成または合成する目的でAmazonが開発したモデル」の今後の学習には使われなくなる。
ただし注意点がある。ほかの配信者の配信でチャットを打った場合は、その配信者の設定が適用される。自分がオフにしていても、相手がオンのままなら、そのチャットは学習に使われうる。
「拒否できる」ようになった裏で、2年以上前から使われていた
今回の変更で新しくなったのは「拒否できるようになった」点だ。裏を返せば、それ以前は拒否する手段すらなかった。
Ars Technicaによると、Twitchのコンテンツが2年以上前からAmazonのAI学習に使われてきたことを、同社幹部が過去に認めている。米メディアThe Informationが2024年に開いたイベントで、当時Twitchで収益化部門を統括していたマイク・ミントン氏は、AmazonがTwitchをAIモデルの学習に使っているかと問われ「ええ、間違いなく」と答えた。「ユーザーの信頼やプライバシー規制の範囲内で、という前提はあるが、我々もそこで果たすべき役割がある」とも語っていた。
つまり利用そのものは以前から始まっていた。今回はそれを公式に示し、拒否の選択肢を用意したことになる。
学習を許可した場合、コンテンツは今後の生成AIモデルの改善に使われる場合がある。公式サイトは一例として、音声データを文字に変換するモデルの精度向上を挙げる。この技術はTwitchの字幕品質を高めるだけでなく、Amazon全体の字幕改善にも役立てられるという。
関連記事:OpenAI、次期主力モデル「Astra」の存在を公表 数学の未解決問題10件を解決、議会でもデモ披露
なお、この設定をオフにしても、TwitchのすべてのAI利用を止められるわけではない。不適切な可能性のあるチャットを保留する「AutoMod」や、クリップの字幕を自動生成する機能など、AIを使った機能のためにデータが使われる場合はある。Twitchは、これらの機能は新しいコンテンツを生成するモデルの学習用に配信内容を保持・利用するものではない、と説明している。
「オプトインなら誰も許可しない」 責任者が率直に
なぜ初期状態でオンなのか。
答えは本人の口から出た。設定追加後、Twitchはこの件を説明する配信を行い、最高製品責任者のミントン氏がチャットからの質問に答えた。なぜオプトインではなくオプトアウトなのか、と問われた同氏はこう述べた。「正直に答えよう。たぶん多くの人が納得すると思う。もしオプトイン方式なら、誰も許可しないからだ。それが正直なところだ。だから初期状態でオンにする」
同氏はさらに、Twitchが機能する上で欠かせないAIもあると説明した。「サイト全体でほぼすべての音声がテキストに変換されている。それが配信の要約を可能にし、AutoModなどにも役立っている」。こうした基盤的な機能は利用者が完全に拒否することはできないという。
一方で、学習を拒否しても不利益はないとした。「この設定は発見されやすさにはまったく影響しない」。Twitch上で見つけてもらう力に影響はない、と繰り返した。
Kotakuによると、配信で対応にあたったコミュニティ担当のメアリー・キッシュ氏は、自身は学習を拒否したと明かしつつ、AIは今や「全面的に」使われていると説明した。なぜ利用者にメールで知らせなかったのかと問われると、キッシュ氏は「良い質問だ」と応じたうえで「みんながメールを読むわけではない」と述べ、「配信者は必ずしもメールを読まない。良い答えではないけれど」と付け加えた。
批判が殺到、フォーラムには1万3000票超
利用者の反発は速かった。
Engadgetによると、告知から数時間のうちに、Twitchのサポートフォーラムで「設定をオプトアウトではなくオプトインにすべきだ」と求めるコメントに約1万4000の賛同が集まった。「クリエイターとして、自分のチャンネルでAIを使うかどうかは自分で選べるべきだ」という内容だった。
IGNによると、Twitchの要望フォーラム「User Voice」では「すべてのAI機能を任意にし、初期状態でオフにする」ことを求める投稿が最多票を集めた。賛成は1万3000票を超え、コメントは4000件に達した。2位以下の要望が約250票にとどまるなか、突出した数字だ。
きっかけを作ったのは、配信業界を追う記者のザック・バッシー氏だった。8月12日、同氏がXで「Twitchが初期状態であなたのチャンネルを生成AIの学習に使うようになった」と設定画面の画像を添えて投稿すると、拡散した。別の投稿では「Twitchが学習をオプトイン方式にしないのは、誰も自発的に許可しないからだ。だから彼らはオプトアウトを用意した」と皮肉った。
他社も同じ、だが「拒否できる」点は違う
ミントン氏は、Twitchを去っても状況が良くなるとは限らないとも指摘した。
「ほぼすべてのサービスが初期状態でオンだ。我々がここで違うのは、学習を拒否したいという希望を尊重している点だ」。Engadgetによると、同氏はGoogleがYouTubeのコンテンツをGeminiなどの学習に使っていることや、MetaがFacebookやInstagramの投稿を拒否手段なしに学習に使っていることに触れた。「公開されているコンテンツのほとんどは、許可の有無にかかわらず、何らかの形でモデルの学習に使われていると考えるのが妥当だ。我々の直接の管理を超えた部分も多い」とも述べた。
生成AIをめぐっては、学習データの権利関係への懸念が根強い。各国で法制度やルールの整備が進む。SNSなどでも、投稿が学習に使われうることを規約に明記する例が増えてきた。
関連記事:X、収益化の現行プログラムは9月7日で終了 新制度は9月8日から申請受付で再審査が必要
今回のTwitchで焦点になったのは、その方式だ。拒否の選択肢を用意した点を評価する見方がある一方、初期状態でオンにした判断に反感が集まった。設定はオンかオフかのどちらかであり、迷う配信者は、まず自分の設定画面を確認するところから始めることになる。
[文/構成 by 橘すろべ]



























































コメントはこちら