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GPT-6 Astraが『Portal』を人の操作なしでクリア 23時間43分・API換算571ドルでエンディングに到達

GPT-6 Astraが『Portal』を人の操作なしでクリア 23時間43分・API換算571ドルでエンディングに到達

時間がない人向けの30秒で理解ゾーン

OpenAIが9月に出した最新モデル「GPT-6 Astra」が、2007年のパズルゲーム『Portal』を人の操作なしで最後まで解いた。かかった時間は23時間43分、API料金に換算して571.18ドル。誰がどんな仕組みで走らせ、この結果をどう読めばいいのかを整理する。

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人が出したのは「エンドクレジットまで進め」という目標だけ

cozyblaze(@cozyblazex)と名乗る個人の実験者が、日本時間9月6日の朝、Xで完走を報告した。動かしたのはOpenAIが米国時間9月3日に発表したばかりの最新モデル、GPT-6 Astra。舞台はValveが2007年に出したパズルゲーム『Portal』だ。

人があらかじめ与えた目標は1つしかない。ゲームを進めてエンドクレジットに到達すること。添えられた条件も「チートをしない」「攻略情報をネットで調べない」の2点だけだ。あとはモデルが自分で画面を見て、どこにポータルを撃つか、どう助走をつけるか、次にどの部屋へ向かうかを判断していった。試験室を抜けた先の逃走パートも、終盤の管理AI「GLaDOS」との対決も、人の手が触れないまま切り抜けてクレジットまで到達した。

『Portal』は、壁や床の離れた2か所に穴を開けて行き来する「ポータルガン」を使い、研究施設の試験室を1つずつ抜けていく一人称視点のゲーム。GLaDOSが皮肉まじりに案内してくる作りで、発売から18年たった今も名作として名前が挙がる。求められるのは反射神経より、空間を頭の中で組み立てる力だ。

cozyblazeはXで「GPT-6 Astraが自律的にPortalをクリアした。こんなに早く実現するとは思っていなかった」と書き、2016年にOpenAIが掲げていた技術目標「単一のエージェントで多様なゲームを解く」を引き合いに出した。10年前の宿題に、ようやく答えが返ってきた格好になる。

ゲームを止めて考え、決まったら動かす

仕組みは意外なほど素朴だ。cozyblazeはローカルにMCP(Model Context Protocol)サーバーを立て、そこに『Portal』の内部時間を止められる改造版「SourcePauseTool」をつないだ。モデルが考えている間、ゲームは一時停止したまま待つ。

モデルが1手ごとに受け取るのは、その瞬間の画面のスクリーンショット、プレイヤーの位置座標、カメラの向きの3つ。これを見て次の入力を決め、ゲームを指定したティック数だけ進め、また止めて結果を確かめる。ゲームは毎秒およそ67ティックで動き、1回の計画で進められるのは最大6,600ティック、時間にして約99秒までと決めてあった。この往復をひたすら繰り返した。

ゲームのコードに抜け道を作り、パズルを飛ばして部屋を突破したわけではない。モデルが選ぶのは視点を回す角度とボタンを押す長さで、人がキーボードとマウスで出すのと同じ種類の操作にあたる。ただし人のプレイと同じ条件ではない。自分の座標を数値で受け取れるし、考えている間はいくらでも時間を使える。試験室では、試しては失敗し、別の手順を組み直す往復が続いた。

環境も細かく公開されている。WindowsのPCで、スピードランの現場でよく使われる旧ビルドのPortal(Source Unpack 2.6・build 5135)を使用。モデルは「gpt-6-astra」で、推論の深さは最大の「max」に設定していた。途中で容量エラーが出てFastモードに切り替えて再開した場面もあったと、GitHubの記録に残る。

関連記事:OpenAI、次期主力モデル「Astra」の存在を公表 数学の未解決問題10件を解決、議会でもデモ披露

24時間・4億トークン、それでも571ドルで済んだ理由

公開されている実行記録によると、走らせたのは日本時間の9月5日午前9時ごろから9月6日の朝まで。実時間で23時間43分かかった。いっぽうゲーム内の時計では2時間足らずで、差の大半はモデルが考え込んでいた時間だ。

ツールの呼び出し回数は3,336回と報じられている。公開されている実行ログで数えられるぶんは3,306回で、うち3,210回が、ゲームを進める操作や、その場の位置と視点を読み取るための呼び出しだった。残りは目標の確認やスクリーンショットの取得などにあてられている。ログは一部のやり取りを伏せた版なので、実際の総数はもう少し多い。

数字でいちばん目を引くのはトークンの量だ。入力は累計で約4億3,321万トークン、出力は約160万トークン。出力のうち118万トークンあまりは、読者に見える答えではなくモデルが内部で考えるために使われた分だった。

ここで、なぜ4億トークンも読ませて571.18ドルで収まったのかという疑問が出てくる。答えはキャッシュにある。GPT-6 Astraの標準のAPI料金は入力100万トークンあたり10ドル、出力は50ドル。ただし一度読ませた内容を再利用する「キャッシュ入力」なら1ドルで済む。今回は入力4億3,321万トークンのうち4億2,641万トークン、率にして98%がキャッシュ扱いだった。同じ試験室の状況を何度も読み直す進め方が、そのまま割引に効いた。

なお、この571.18ドルはAPI料金に置き換えた金額で、1ドル154円で計算すると約8万8,000円になる。cozyblaze自身が実際に払ったのは月額200ドルのCodex Proの利用料だけだと説明している。

「これが今後いちばん性能の低いモデル」

反応は速かった。AI関連の発信で知られるLisan al Gaib(@scaling01)は「信じられない。GPT-6 AstraがPortalを自分だけでプレイし通した」と投稿している。

関連記事:ChatGPT Pro(20倍)の新規受付が一時停止 GPT-6 Astraの需要で、既存契約と他プランは影響なし

当のcozyblazeは浮かれてはいない。完走の報告に続けて「解くべき課題はまだ多く、これ自体は正式なベンチマークとは呼べない」と前置きしたうえで、汎用のエージェントが自力でゲームを最後まで進めた光景に、2016年の構想が形になり始めた手応えを見ている、と書いた。そのうえでさらに、これが自分たちの手にする中でいちばん性能の低いモデルになるだろう、と続けている。今のモデルは到達点ではなく出発点だ、という言い回しだ。

YouTubeで公開された映像も、思考中の空白を切り落とした編集版で約2時間。配信のアーカイブをすべて足すと約24時間になる。「2時間でクリアした」と受け取ると、実像から離れる。

次の焦点は「賢さ」より値段と時間

GPT-6 Astraは米国時間9月3日の発表時点から、パソコン操作の代行を看板に据えたモデルとして打ち出されている。デスクトップ操作を測るベンチマークOSWorld 2.0のオフライン版では72.6%を記録し、前世代のGPT-5.6 Solの65.7%を上回った。1つの作業にかかる時間も約75分から約40分へ縮んでいる。

今回のPortal攻略は、その能力を数値表ではなく目に見える形に置き換えた実演になった。ゲーム専用に訓練されたAIではなく、仕事にも使う汎用のモデルが、3次元空間で自分の居場所を把握し、道具の使い方を推し量り、失敗しては別の手を試す。積み上がった23時間43分の中身は、その繰り返しだった。

ただし『Portal』は2007年の作品で、攻略の解説はインターネット上に山ほど出回っている。モデルの学習時にそれを読んでいた可能性は高い。実行中にネットで調べることを禁じても、学習の段階で入った知識までは取り除けない。まったく未知の題材を初見で解いた実験ではない、という留保は外せない。

残るのはコストと時間だ。人間なら数時間で終わる遊びに丸一日と数万円分の計算資源を使う状態では、仕事に置き換えて元が取れる場面は限られる。ここが縮んだとき、AIエージェントに任せられる範囲は一段広がる。

AIが企業の仕事をどれだけの速さで変えるのか。OpenAIのサム・アルトマンCEO自身も、この見立てを最近になって修正している。

関連記事:サム・アルトマン、AIが企業を変える速度の予測を修正 「経済の慣性」とは何か

この使われ方が世界中で同時に起きた結果、OpenAI側の供給が追いつかなくなっている。需要の逼迫については、以下の関連記事にまとめた。

関連記事:GPT-6 Astraの需要は「前例のない」水準 OpenAIのプロダクト責任者が新規Proプラン受付の一時停止に言及

セットアップ一式はGitHubで公開され、誰でも中身を確かめられる。18年前のパズルゲームを解いた記録は、AIエージェントが今どこまで来ていて、何が足りないのかを同時に見せる材料になっている。

[文/構成 by MEDIA DOGS編集部]

寄稿者

MEDIA DOGS 編集部
メディアドッグス株式会社のMEDIA DOGS 編集部チーム。インターネットマーケティングに約10年携わるメンバーで編成し、企画・取材・執筆から公開後の改善まで一貫して担当。「出会いを、設計する。」のもと、人と企業が正しく出会える場をつくるために、一次情報の確認とファクトチェックを徹底。情報をわかりやすく誠実に届け、読者の疑問を解決します。

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