工藤慎作、全日本大学駅伝8区で日本人最高 大会記録で優勝した早稲田のアンカーの経歴

時間がない人向けの30秒で理解ゾーン
11月1日の第58回全日本大学駅伝で、早稲田大学4年の工藤慎作が最終8区(19.7キロ)を56分20秒で走り、区間賞を取った。前回大会で自らが出した8区の日本人最高記録56分54秒を34秒縮めている。早大は5時間3分31秒の大会新記録で16年ぶり6度目の優勝を果たし、出雲駅伝に続く2冠となった。
8区56分20秒、自身の日本人最高を34秒更新
8区は全8区間で最も長く、大会の総距離106.8キロの2割近くを占める。各校のエースが集まるこの区間で、工藤がタスキを受けたのは第7中継所(松阪)だった。2位の國學院大學とは2分34秒の差があった。そこから伊勢神宮内宮宇治橋前までの19.7キロを56分20秒で駆け抜け、ゴールでの差は3分34秒まで開いていた。
8区の区間2位は山梨学院大学のブライアン・キピエゴで56分29秒、3位は國學院大の髙石樹と創価大学の山口翔輝が57分20秒で並んだ。留学生ランナーを9秒上回っての区間賞だ。8区の区間記録は2007年に山梨学院大のメクボ・ジョブ・モグスが出した55分32秒で、こちらには届かなかったものの、日本人選手では過去最速のタイムとなった。
レース後、工藤は「最後、自分が締めるというところで」と切り出し、前回大会の自分の記録を30秒あまり縮められたことを喜んだ。10キロ付近で走りが崩れかけたことも明かしている。それでも終盤の上り坂でペースを戻し、立て直せた点を前回との違いに挙げた。後半はマラソンを想定した走りを意識していたという。
テレビ中継で1号車の解説を務めたのは、かつてこの区間の日本人最高記録を持っていた早大OBの渡辺康幸氏だった。工藤が後半のアップダウンでペースを上げると、渡辺氏は中継の中で、初めての経験だと驚いていた。
3分34秒差の独走、従来の大会記録を3分16秒更新
早大の優勝タイム5時間3分31秒は、2022年に駒澤大学が出した5時間6分47秒を3分16秒上回る大会新記録だった。2位の國學院大は5時間7分5秒、3位の創価大は5時間9分28秒だった。
流れを作ったのは1年生だった。1区の本田桜二郎が区間2位で好発進すると、2区の増子陽太が30分51秒の区間新で首位に立つ。3区の新妻遼己も区間新で続き、5区では2年生の鈴木琉胤が34分31秒の区間新で差を広げた。早大だけで3区間の区間新記録が生まれ、8区の工藤を含めて8区間中4区間で区間賞を取った。
| 区間(距離) | 早大の選手 | 区間記録・順位 |
|---|---|---|
| 1区(9.5キロ) | 本田桜二郎 | 27分47秒・ |
| 2区(11.1キロ) | 増子陽太 | 30分51秒・ |
| 3区(11.9キロ) | 新妻遼己 | 32分45秒・ |
| 4区(11.8キロ) | 小平敦之 | 33分24秒・ |
| 5区(12.4キロ) | 鈴木琉胤 | 34分31秒・ |
| 6区(12.8キロ) | 堀野正太 | 36分55秒・ |
| 7区(17.6キロ) | 山口竣平 | 50分58秒・ |
| 8区(19.7キロ) | 工藤慎作 | 56分20秒・ |
区間記録は大会の速報・報道による11月1日時点の数字だ。2位の國學院大も4区の飯國新太、6区の吉田蔵之介(区間新)が区間賞を取って食い下がったが、早大の背中は遠かった。4区を走った主将の小平敦之は首位を守り、7区の山口竣平も区間3位で2位との差を保ったままアンカーへつないだ。
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前回大会で破った渡辺康幸の30年前の記録
工藤が8区の日本人最高記録を初めて塗り替えたのは、2025年11月の第57回大会だった。3年生で8区を任され、56分54秒で走って区間賞。それまでの日本人最高は、1995年の第27回大会で早大の渡辺康幸氏が出した56分59秒で、30年ぶりに5秒更新したことになる。
その時、工藤は「あわよくば日本人最高を狙っていた」という趣旨の話をしている。10キロ通過の時点で余裕があり、後半に力を残していたことで記録を狙えると感じたという。ただ、チームは総合5位に終わった。個人の記録とチームの結果がかみ合わなかった1年前とは、今大会は様相が違った。
自身の記録を、1年後に自ら34秒縮める。前回は区間賞でもチームは5位、今回は区間賞と優勝の両方を手にした。
八千代松陰高等学校から早稲田へ、「山の名探偵」の歩み
工藤は千葉県の八千代松陰高等学校の出身で、現在は早稲田大学スポーツ科学部の4年生だ。高校時代は全国高校駅伝で2年、3年と続けて3区を走った。
大学では1年目から箱根駅伝の山登り5区を任され、区間6位。2年時の2025年1月の第101回大会では5区で3人を抜いて区間2位となり、チームを往路3位に押し上げた。名探偵コナンの主人公・工藤新一と名前が似ていることや眼鏡姿から付いた愛称が「山の名探偵」だ。3年時の2026年1月の第102回大会でも5区を走り、一時は首位に立ったが、青山学院大学の黒田朝日に逆転され、早大は往路2位だった。
ロードでの実績は駅伝にとどまらない。2025年2月の第28回日本学生ハーフマラソン選手権(香川丸亀国際ハーフマラソンと同時開催)では、従来の日本学生歴代最高を上回る1時間0分06秒で優勝した。同年7月にドイツのライン・ルール地方で開かれたFISUワールドユニバーシティゲームズでは、男子ハーフマラソンを1時間2分29秒の大会新記録で制し、日本の団体優勝にも貢献している。1997年大会の記録を28年ぶりに塗り替えたタイムだった。
2026年3月1日の東京マラソンでは初めてのフルマラソンに挑み、2時間7分34秒の20位。日本代表選考会となるマラソングランドチャンピオンシップ(MGC)の出場権を手にした。
| 時期 | 大会 | 結果 |
|---|---|---|
| 2025年1月 | 箱根駅伝5区 | 区間2位 |
| 2025年2月 | 日本学生ハーフマラソン選手権 | 優勝・ |
| 2025年7月 | FISUワールドユニバーシティゲームズ・ | 優勝・ |
| 2025年11月 | 全日本大学駅伝8区 | 区間賞・ |
| 2026年3月 | 東京マラソン | 20位・ |
| 2026年10月 | 出雲駅伝6区 | 区間賞・ |
| 2026年11月 | 全日本大学駅伝8区 | 区間賞・ |
4年生となった今季は、10月12日の出雲駅伝で最終6区を29分00秒の区間賞で走り、ゴールテープを切った。早大はこの大会でも2時間5分56秒の大会新記録で16年ぶり3度目の優勝を果たしている。6区間のうち4区間で区間賞、3区間で区間記録を塗り替える内容で、全日本はその勢いをそのまま持ち込んだ大会になった。
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箱根で狙う3冠、「なんとしても」
出雲、全日本と続けて大会新記録で勝った早大が次に向かうのは、2027年1月2日・3日の箱根駅伝だ。勝てば早大にとっては2010年度以来となる学生駅伝3冠になる。
工藤はレース後、「なんとしても3冠」と言い切った。次の箱根は出雲や全日本のようにはいかないと考えているとも話し、勢いを保ったまま残り2カ月の練習に取り組むつもりだ。花田勝彦監督は、選手たちが「想定した以上の走り」をしてくれたと全日本の戦いぶりを評価している。同じ4年生で主将の小平敦之も、3冠に挑める立場にあることに触れたうえで「最後笑って締めくくれるように」と話した。
4年生の工藤にとって、次の箱根は大学最後の駅伝になる。1年目から3年続けて5区を走ってきた「山の名探偵」が、どの区間に入るのかも注目点だ。
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[文/構成 by スポーツ担当ライター 南條楓]









































































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