レアル・ソシエダ、「存在しないPK」と批判したビルバオ戦の判定 審判技術委員会がボールのセンサーと映像のずれを公表

時間がない人向けの30秒で理解ゾーン
久保建英が所属するレアル・ソシエダが、ラ・リーガ第11節のアスレティック・ビルバオ戦(現地時間11月1日、1-2で敗戦)で決勝点となったPKの判定を、クラブ公式サイトで強く批判した。試合レポートの見出しは「存在しないPKがレアルを敗北に追い込む」。一方、主審のアレハンドロ・エルナンデス・エルナンデスは試合後のインタビューで「明らかなPK」だったと説明し、VARも判定を支持した。その後、スペインサッカー連盟の審判技術委員会(CTA)は現地時間11月2日夜、ボールのチップの信号とVARの映像の同期にずれがあったとする報告を公表し、PKの判定は正しくなかった可能性があるとの見解を示した。
公式サイトに「存在しないPK」、試合レポートで審判団を批判
バスク地方のライバル同士が戦う「バスク・ダービー」は、現地時間11月1日の21時(日本時間11月2日5時)、ビルバオの本拠地サン・マメスでキックオフした。結果は2-1でビルバオの勝利。レアル・ソシエダはリーグ戦の連勝が4で止まった。
試合後、レアル・ソシエダは公式サイトにスペイン語・バスク語・英語・フランス語の4言語で試合レポートを載せた。スペイン語版の見出しは「Un penalti inexistente derrota a la Real」で、存在しないPKに敗れたという意味になる。
レポートは冒頭から判定への不満を隠さなかった。レアルはサン・マメスで負けるに値しなかった、負けたのはPKではなかったPKのためだ、と書き出し、主審は起きていないことを見たと続ける。VARについても、ほかの試合ではばかげた些細な場面で主審を呼ぶのに、この日は関わろうともしなかったと批判した。
問題の場面の説明はさらに踏み込んでいる。レポートによると、ボールに内蔵されたチップの記録でも、アランブルがボールに触れていたことが分かるという。そのうえで「信じられない」と書いた。
締めくくりの段落では、誰の目にも不当な判定に罰せられたとして、クラブ内に大きな怒りがあることを書き、「時にはこういうこともある」という一文で終えている。日本では、この部分を「明らかに不当な判定によって敗れた」と訳した報道もあった。
45+2分のPK、アランブルとニコ・ウィリアムスの接触
試合は序盤からビルバオが押し込んだ。14分、イニャキ・ウィリアムスが抜け出し、GKアレックス・レミーロの上を越すシュートで先制する。レアル・ソシエダは徐々に盛り返し、30分にルカ・スチッチの左足のシュートがゴール右隅に決まって1-1とした。
その後もレアル・ソシエダが押し気味に進め、アンデル・バレネチェアの決定機はGKウナイ・シモンに防がれた。同点で前半を折り返すかと思われた終了間際、判定が試合を動かす。
縦へのパスで抜け出したニコ・ウィリアムスがペナルティーエリアへドリブルで入ったところに、DFホン・アランブルが足を出した。主審はすぐに笛を吹き、PKを宣告。VARからの介入はなく、45+2分にアレックス・ベレンゲルが決めて2-1となった。
レアル・ソシエダ側の主張は一貫している。アランブルは足をボールに当てていた、というものだ。アランブル本人は試合後、スペインの中継局DAZNの取材に、チップの記録でボールに触れていたことを見せられたと話した。ニコ・ウィリアムス本人もPKではないと言っていた、とも明かしている。主将のミケル・オヤルサバルも、映像を見ればアランブルがボールに触れていると話した。
ペッレグリーノ・マタラッツォ監督は会見で、自分には明らかにPKではないと話した。マタラッツォによると、先にボールに触れたのはニコで、チップは2番目にアランブルが触れたことを記録しているという。ボールの方向がはっきり変わっていたとも述べた。いちばん納得できないのは確認すらされなかったように見えることだとして、「なぜVARが介入しなかったのか理解できない」と不満を口にした。
主審は「明らかなPK」と説明、CTAはチップの同期のずれを公表
審判の側も黙っていなかった。ラ・リーガはこの第11節から、試合後に主審が中継のインタビューに応じる取り組みを始めている。審判の判断を見る人に分かりやすく伝えるためで、1試合目はレバンテ対アトレティコ・マドリードを担当したデ・ブルゴス・ベンゴエチェア主審。続いてこのダービーのエルナンデス・エルナンデス主審が、サン・マメスの取材エリアでDAZNの質問に答えた。
エルナンデス・エルナンデスは、プレーを約4メートルの距離で見ていたと説明した。ニコ・ウィリアムスがドリブルで仕掛け、アランブルが反則にあたる形でぶつかったと判断し、その場でPKを取ったという。そのうえで、ピッチ上のその瞬間の判断として「明らかなPK」だったと話している。
VARについての説明はこうだ。VARが主審に映像の確認を求めるのは、「はっきりした明白な誤り」がある場合に限られる。ビデオ判定室はこの場面をそうした誤りとは見ず、PKの判定を支持した。レアル・ソシエダ側の受け止めについては、選手それぞれの意見は尊重すると述べ、1週間かけて場面を見直し、今後に生かすとした。
試合の翌日、スペインサッカー連盟の審判技術委員会(CTA)が動いた。現地時間11月2日夜(日本時間11月3日早朝)、連盟の公式サイトに公式声明を出し、ボールのチップを開発したKinexon社に報告書を求めたことを明らかにした。CTAによると、試合中のビデオ判定室は、その時点で見られたチップの信号から、ボールに触れたのはビルバオの選手だけだと受け止めていたという。
Kinexon社の報告書は、ボールの信号とVARの映像のあいだに、1〜2フレーム(20〜40ミリ秒)ほどの同期のずれがあった可能性が最も高いとした。ずれを除いて合わせ直すと、信号の最も大きな反応はレアル・ソシエダの選手がボールに届いた瞬間と重なるという。これを受けてCTAは、最後にボールに触れたのはレアル・ソシエダの選手だったことになり、PKの判定は正しくなかった可能性があるとの見解を示した。
ただしCTAは、VARがその時点で持っていた情報と同期の状態をもとにすれば、ビデオ判定室の判断はその時点では正しかったとも説明している。ボール自体は試合中に正常に動いており、問題は信号と映像の同期のずれに限られるとした。そのうえで、技術を担う企業と協力して使い方と同期の手順を改善し、同じようなことが起きる可能性を小さくしていくとしている。
ビルバオのテルジッチ監督「有利な判定を受けた」
勝ったビルバオの側からも、判定に疑問を残す発言が出た。エディン・テルジッチ監督は試合後、この日は自分たちが判定で有利になったと感じていると認めた。シーズン全体で見れば、自分たちにも判定で損をした日はあったとも付け加えている。
テルジッチはニコ・ウィリアムスのプレーそのものは評価した。PKをもらうにはペナルティーエリアの中へ入っていかなければならない、という趣旨の話をしている。ダービーの勝者の監督が、試合直後に判定の恩恵を受けたと自ら口にした形だ。
前半の判定ひとつで決まった一戦。ただ、レアル・ソシエダが試合を支配したのは後半だった。
久保建英は75分から出場、連勝ストップで5位のまま
後半はレアル・ソシエダがほとんどの時間を相手陣内で過ごした。カルロス・ソレールのミドルシュートはウナイ・シモンに好守で防がれ、62分にはFWオリ・オスカルソンを投入して攻めの枚数を増やす。
久保建英(25)は75分、ゴールを決めていたスチッチに代わってピッチに入った。報道によると、終盤は右サイドや中央からドリブルで仕掛けてFKを得たほか、こぼれ球を右足で狙ったシュートは相手DFに当たり、ゴールにはならなかった。後半のアディショナルタイムにもクロスを送ったが、同点ゴールは最後まで生まれなかった。
敗れたレアル・ソシエダは第11節を終えた時点で6勝1分け4敗の勝ち点19で5位。勝ったビルバオは10試合を消化して勝ち点15とし、7位につける。上位との差を詰めかけていたレアル・ソシエダにとって、勝ち点を持ち帰れなかったダービーは重い1敗になった。
次の節はビルバオが現地時間11月7日にアウェーでオサスナと、レアル・ソシエダが11月8日にホームでラージョ・バジェカーノと戦う。その前の11月5日には、レアル・ソシエダはホームでヨーロッパリーグのオリンピック・リヨン戦を控えている。
[文/構成 by スポーツ担当ライター Mika]









































































コメントはこちら