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Claude Mythos、耐量子署名HAWKの未知の攻撃法を発見 約60時間で鍵の実効強度を半減

Claude Mythos、耐量子署名HAWKの未知の攻撃法を発見 約60時間で鍵の実効強度を半減

時間がない人向けの30秒で理解ゾーン

米AI企業Anthropicの研究用モデル「Claude Mythos Preview」が、次世代暗号の候補「HAWK」に潜む未知の弱点を見つけた。かかった時間は約60時間。鍵の実効的な強度はほぼ半分に落ちたが、実際に稼働しているシステムへの影響はないという。

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Claude Mythosが暗号方式に弱点発見

Anthropicが開発中の最先端AIモデル「Claude Mythos Preview」が、量子コンピューター時代に備えた次世代暗号の候補方式「HAWK」に、これまで誰も気づかなかった弱点を見つけ出した。作業時間はわずか約60時間。人間の専門家が2年がかりで審査してきた方式の安全性を、AIがほぼ独力で切り崩した。Anthropicは7月28日(現地時間)、自社の研究ブログでこの成果を公表した。

Claude Mythos Previewは、Anthropicが一般提供の予定はないと明言している研究プレビュー版のAIモデルで、「Project Glasswing」と呼ばれる招待制プログラムを通じ、審査を経たAWS・グーグル・マイクロソフトなど提携企業のみが利用できる。提携組織は当初の約50から、2026年6月に150組織が新たに加わったことで計200超に拡大している。ソフトウェアの脆弱性をほぼ自律的に見つけ出す能力で知られてきた。今回はその対象を暗号アルゴリズムそのものに広げ、数学的な欠陥を発見する力を新たに見せている。

見つけたのは、HAWKと呼ばれる署名方式に潜む弱点。HAWKは、アメリカ国立標準技術研究所(NIST)が量子コンピューターに耐えられる暗号の標準規格を選ぶために2022年から進めている審査の候補の一つで、2026年5月14日に9つの候補が最終審査に近い「第3ラウンド」へ進んだうちの1本である。Claude Mythosは、HAWKが安全性の根拠とする「格子」と呼ばれる数学的な構造――多数の点が規則正しく並んだ空間で、その中から特定の点を見つけ出す難しさを利用する仕組みだ――に、これまで利用されていなかった隠れた対称性があることを突き止めた。この対称性を悪用すると、本来なら天文学的な回数の試行が必要な秘密鍵の探索を、大幅に効率化できるという。

2年の専門家審査をすり抜けていた弱点

格子の対称性を突けば安全性が下がるという理論自体は、数学者らの先行研究がすでに示していた。ただし、HAWKが実際に使う格子でその対称性が本当に見つかるかどうかは、誰も確かめられていなかった。HAWKはこの理論上の懸念を抱えたまま、2年間にわたる2度の専門家査読を通過している。

Claude Mythosは、この未解決だった部分にAI自身の力で踏み込み、実際に対称性を見つけ出した上で、それを使った鍵の探索手法まで組み立てた。攻撃に必要な計算量は依然として天文学的な数字で、多項式時間で解ける状態――現実的な時間で誰でも解読できる状態――になったわけではない。それでも、審査候補として掲げてきた安全性の余裕を大きく食いつぶす結果となった。

60時間で鍵の強度はどこまで落ちたのか

Anthropicによると、検証用に小さく設定された「HAWK-256」というパラメータでは、鍵を割り出すのに必要な計算量が2の64乗回から2の38乗回まで下がった。指数部の差は26で、攻撃に必要な手間が数千万分の1程度にまで減ったことを意味する。実際に運用される想定のより大きな鍵でも同様に安全性の余裕は目減りしたが、それでも現在のコンピューターで現実的に解読できる水準ではないとAnthropicは付け加えている。

この安全性の余裕を元通りにするには、HAWKの鍵の長さを2倍にする必要があるという。Anthropicは、鍵を2倍にすれば、HAWKが売りにしてきたコンパクトな鍵という利点の多くが失われると指摘している。NISTの第3ラウンド審査はこれから約2年続く見通しで、この間にHAWKの提出チームが今回の弱点にどう対応するかが焦点になりそうだ。

Claude Mythosは同じ研究の中で、広く使われる暗号「AES-128」を7ラウンドに削減した検証用バージョンへの攻撃も改良した。「メビウス橋」と名付けた新しい指紋照合の手法を編み出し、従来より200倍から800倍速く攻撃できることを示した。ただし、この攻撃には2の105乗通りという気の遠くなるほど大量の暗号化サンプルが要る。実用化からはほど遠く、私たちが日常使うAES-128そのものが破られたわけではない。

実害はないが見過ごせない理由

Anthropicは、今回の2つの成果について「現在稼働しているシステムに実際的な影響はなく、変更が必要なソフトウェアもない」と説明している。HAWKはまだ標準として採用されておらず実際には使われていない候補段階の方式であり、AESの攻撃対象も日常利用される完全版ではなく実験用に手を加えた縮小版だからだ。

注目すべきは、AIがこの結論にたどり着くまでの過程だ。AES攻撃の開発では、Claudeは当初「解決は難しすぎる」として取り組みを渋ったという。人間の研究者が「対象を変えるつもりはない、公表する価値のある成果を見つけてほしい」「一流の研究者にふさわしい水準を目指してほしい」「安易に見つかる成果ではなく本格的な研究成果を求めている」という趣旨の、方向づけを促す短い声掛けを3回した程度で、Claudeは3日間で数億個のトークンを生成し、そこからさらに数日をかけて合計10億個のトークンを出力し、新しい攻撃法を仕上げたという。いずれの成果も、API利用コストはおよそ10万ドルに上ったという。一方で、AES攻撃の正しさを人間の手で検証するには、Anthropicの研究者2人が数百時間をかけ、確信を得るまでに1カ月近くかかったという(HAWKは発見から検証まで含めて約60時間で完了している)。AIが仮説にたどり着く速さと、それを人間が裏取りする手間との差は、これからの暗号研究の新たなボトルネックになりうる。

Anthropicはこの成果を公表する前に、NISTを含む米政府関係者や学術機関へ事前に伝えたとしている。あわせて、AIの暗号解析能力を測るベンチマーク「CryptanalysisBench」も公開し、他の研究機関が同種の検証を追試できる環境を整えた。ポスト量子暗号の標準化はまだ道半ばだが、AIが審査プロセスそのものに組み込まれる時代が、すでに始まっている。

[文/構成 by MEDIA DOGS編集部]

寄稿者

MEDIA DOGS 編集部
メディアドッグス株式会社のMEDIA DOGS 編集部チーム。インターネットマーケティングに約10年携わるメンバーで編成し、企画・取材・執筆から公開後の改善まで一貫して担当。「出会いを、設計する。」のもと、人と企業が正しく出会える場をつくるために、一次情報の確認とファクトチェックを徹底。情報をわかりやすく誠実に届け、読者の疑問を解決します。

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