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夏の甲子園、新たに導入されたビデオ検証は17件 判定が覆った6件と選手の熱中症疑い16件を整理

夏の甲子園、新たに導入されたビデオ検証は17件 判定が覆った6件と選手の熱中症疑い16件を整理

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第108回全国高校野球選手権大会が8月22日、智弁和歌山の優勝で閉幕した。今大会から導入されたビデオ検証は全48試合で17件、このうち判定が覆ったのは6件を数える。選手の熱中症疑いは16件で、前年の24件から8件減った。大会本部が22日、大会全体の集計として明らかにした数字だ。

全48試合でビデオ検証17件、6件が覆る

大会本部の発表によると、決勝を含む48試合でビデオ検証の要求は17件あった。このうち判定が覆ったのは6件、覆らなかったのは11件で、このうち2件は映像でも確証が得られず、判定は当初のまま。残る9件は、映像を確認した結果、当初の判定が支持された。

日本高野連の井本亘事務局長はスポーツ報知の取材に「より納得をしてもらって、次に進んでもらうっていう意味では、一定の成果があったというのは感じてはいます」と話した。誤審を防ぐ狙いで持ち込まれた新制度は、初年度から確かな役割を果たす。

デジタル化受け今大会から初めて採用

ビデオ検証の正式名称は「大学及び高校野球におけるビデオ検証に関する特別規則」。2024年9月に発足したワーキンググループでの検討を経て、2026年4月の理事会で承認された。デジタル技術や映像機器の進歩を踏まえ、より正確な判定を選手に返す狙いがある。6月28日には甲子園球場でオペレーションの練習会も開かれ、8月5日の開幕を迎えた。

対象は本塁打やエンタイトル二塁打の可否、封殺やタッグプレー、捕球の成否、一塁・三塁塁審より後方に落ちた打球のフェア・ファウル、死球、接触プレーなど。ストライクとボールの判定やハーフスイングは対象外だ。各校が求められるのは9イニングで1回まで。延長に入れば、それまでの回数に関わらずさらに1回の権利が生まれる。判定が覆った場合はその要求を回数に数えない仕組みで、2026年の今大会に限っては覆った後にもう1回求められる特例も設けられた。

要求を審判に伝えるのは監督ではなく、ベンチから送り出された伝令の選手だ。高校野球の規定で監督がグラウンドに立ち入れないためで、プロ野球のように監督が両手で四角を作る「リクエスト」のポーズは見られない。球審からネット裏の検証担当審判に伝わり、中継映像を基に2分以内に結論を出す。結論が出なければ、当初の判定のまま試合が続く。

初戦で決勝点、準決勝では判定変わらず

判定の覆りがそのまま勝敗を左右した最初の例が、8月8日の1回戦、東日大昌平(福島)対白樺学園(北北海道)だった。1―1の9回2死一、二塁、二塁走者へのけん制のタッグプレーは「アウト」と判定されたが、要求を受けて「セーフ」に覆る。直後に3年の入ケ町隼仁が左前打を放ち、2―1で東日大昌平が甲子園初勝利をつかんだ。江井康胤監督はデイリースポーツの取材に「ジャッジが変わったのは大きかった」と語っている。

翌9日の鳴門渦潮(徳島)対八王子実践(西東京)でも判定が動いた。鳴門渦潮の先頭打者、3年の林蒼太が頭から滑り込んだ一塁のセーフ判定が、八王子実践の要求でアウトに覆る。試合は今大会初のタイブレークにもつれ込み、鳴門渦潮が延長10回にサヨナラ勝ちを収めた。

だが、判定が動かなかった例も少なくない。8月20日の準決勝、横浜対智弁和歌山では、2回1死二塁で智弁和歌山の山下晃平のセカンド(二塁手)方向への内野安打が一塁セーフと判定され、横浜が検証を求めたが結論は変わらず、この時点で9回までの要求権を使い切っている。8月15日の天理対高川学園では、高川学園の要求そのものが受け付けられなかった。投球練習が既に始まっており、規則が定める「速やかに」の要求という条件を満たさないと判断されたためだ。大会の審判副委員長は、明確な秒数などの基準はなく、審判の判断に委ねられていると説明している。

大会中盤の25試合を終えた段階で、要求を使ったチームは6校にとどまり、使用率は12%だった。仙台育英の須江航監督は毎日新聞の取材に「やたらめたら、リクエストする必要はないですし、(審判を)リスペクトしていますから」と明かす。東海大甲府の岡田優心捕手も「審判さんたちが試合を進めてくれているので、そこをリスペクトした上で使っていきたいです」と語った。序盤の際どい判定では要求を控え、終盤の勝負どころに権利を残しておく。そんなチームの構えがうかがえる。

熱中症疑いは16件、前年から8件減

大会本部はこの日、選手の熱中症疑いについても発表した。決勝を含む48試合で疑いのあった件数は16件。前年の24件から8件の減少だ。試合中に症状が出たのは8件で、このうち途中交代につながったのは3件、前年の12件から大きく減っている。期間別では2部制の日程だった第1~10日が9件、第11日以降は7件だった。

暑さ対策では、2部制の日程を10日間に広げ、朝の部の後に観客を入れ替え、午後の部は午後1時半から3試合を組んだ。球場敷地内の救護室には内科医2人と看護師2人を配置し、バックネット裏の本部にも整形外科医1人と看護師1人が常駐する。5回終了後には8分間のクーリングタイムを設け、選手はベンチ裏の冷房が効いたスペースで体を休めた。大会本部は「午前と午後の2部制の効果もある一方、選手の意識も上がっている」と説明している。

来春の選抜や神宮大会にも新制度

ビデオ検証は今大会限りの試みで終わらない。来春の選抜大会、秋の明治神宮大会でも導入される予定だ。要求の「速やかに」の基準があいまいなままだった点など、運用面の課題も残った。

観客動員は累計80万2100人で、全席指定となった第104回大会以降で最多を記録した。前年より7万7400人多く、2部制の日程が増えたことが主な要因だという。誤審を防ぐ新しい仕組みと、選手の体を守る新しい対策。二つの取り組みが並んだ夏の甲子園は、次の大会へ課題を残しつつ幕を閉じた。

[文/構成 by スポーツライター 高瀬翔吾]

寄稿者

高瀬翔吾
Webメディアでスポーツ、エンタメ、時事ニュースなど、累計数千本の記事制作に携わってきたスポーツ系ライター。野球分野では、プロ野球の試合結果や選手の記録をはじめ、MLB、高校野球、ドラフト、移籍、契約更改などの記事を継続的に担当。数字や公式記録を基に情報を整理する記事を得意としており、結果を伝えるだけでなく、その記録が持つ意味や、選手・球団を取り巻く背景までわかりやすく解説することを心がけている。主な執筆分野は、プロ野球、MLB、高校野球、侍ジャパン、ドラフト、移籍情報。

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