岩貞祐太、甲子園で試合前に引退セレモニー「現役最後のマウンドに立ちます」 阪神一筋13年の思いと現在

時間がない人向けの30秒で理解ゾーン
今季限りで現役を引退する阪神の岩貞祐太投手(35)が10月6日、甲子園での広島戦の試合前に引退セレモニーに臨んだ。スピーチで「現役最後のマウンドに立ちます」とファンに呼びかけ、試合では2-1の7回に2番手で登板。末包昇大を141キロの直球で空振り三振に仕留め、打者1人、4球で13年間の現役生活を締めくくった。
試合前のセレモニー、2人の娘の球を受けた
セレモニーは試合開始前の午後5時半ごろから「ファイナルピッチセレモニー」として行われた。岩貞は2人の娘とともにグラウンドに立ち、この日は捕手役でボールを受ける側に回る。
花束を手渡したのは、2013年ドラフトの同期入団である岩崎優と梅野隆太郎、相手の広島からは同級生の大瀬良大地だった。続いて藤川球児監督、家族からも花束が贈られ、最後はOBで憧れの存在だった能見篤史氏が花束を渡している。スタンドには元チームメートの青柳晃洋、藤浪晋太郎、板山祐太郎らも駆けつけた。
マイクの前に立った岩貞は、まず首脳陣や選手、スタッフへの感謝を伝え、こう続けた。
「引退することへの寂しさや、まだ野球をやりたいという思いがないわけではありません。それでも13年間、悔いのないようにやってきました」
プロ野球選手になれたこと、阪神のユニホームを着られたこと、甲子園のマウンドに立てたこと、仲間と同じ時間を過ごせたこと。そのすべてを「一生の宝物」と表現し、最後に「現役最後のマウンドに立ちます。その時にもう一度、皆さんの歓声を聞かせてください」と呼びかけた。スタンドからは岩貞コールが起きた。
当初、この日はセレモニーだけが予定されていた。球団は10月2日に試合前のファイナルピッチセレモニーを発表したが、チームが3日にリーグ連覇を決めると、試合での引退登板も決まる。功労者を実戦のマウンドから送り出す段取りが整った。
7回に登板、梅野とのバッテリーで空振り三振
NPB公式の試合記録によると、試合は阪神が2-1で広島を下した。阪神は1回に佐藤輝明の適時打で先制し、2回に近本光司の適時内野安打で1点を加える。広島は6回に坂倉将吾の適時打で1点差に迫った。
先発の大竹耕太郎は6回79球、2安打7奪三振1失点で今季7勝目(9敗)。熊本出身の後輩左腕がリードを保ったまま、7回の頭からマウンドを岩貞に引き継いだ。
この回から捕手は梅野に代わり、同期入団のバッテリーが組まれると甲子園の歓声は一段と大きくなる。打席には先頭の末包。2球で追い込み、カウント1ボール2ストライクからの4球目、141キロの直球で空振り三振を奪った。
ここで藤川監督がマウンドへ向かい、同じく同期の岩崎にスイッチ。岩貞は内野陣に囲まれながらマウンドを降り、三塁側の広島ベンチに深く一礼した。成績は打者1人、4球、1奪三振で、記録上はホールドが付いた。
その後は岩崎が7回の残り2人を抑え、8回は石井大智、9回は工藤泰成が3者連続三振で締めて1点差を守り切った。入場者は4万2565人。試合後、岩貞は梅野からウイニングボールを受け取り、優勝セレモニーにも加わった。
藤川監督とのやり取りに言葉を詰まらせる
降板の直前、岩貞はマウンドで藤川監督と握手と抱擁を交わし、岩崎が到着するまでしばらく言葉を交わした。かけられた言葉は「お疲れさま、これからだよ」だったという。
2人は現役時代、阪神で5年間チームメートとして過ごした。試合後にこの場面を問われた岩貞は言葉に詰まり、「最後は(監督としてではなく)球児さんとして接していただいた気がして嬉しかったです」とうなずいた。
藤川監督も試合後、「関係性も現役の時から非常に深くて、ご家族とも家族同士で親交がありますから」と明かしている。2023年の優勝時には力のある球を投げていたが、その後は肘の疲労がたまっていたと説明し、本人と家族の表情を見て「見送る方もホッとしています」と語った。
最後の1球が141キロだったことについて、岩貞自身はこう受け止めた。救援で生きるには球速が必要だと考えてウエートトレーニングを始め、球速が上がって成績が出るようになったが、ここ1、2年は思い描くボールが投げられなかった。「きょうも一生懸命腕振ってもあの球速だったので。納得しました」。
2016年に10勝、救援で支えた2023年の日本一
岩貞は熊本・必由館高から横浜商科大を経て、2013年のドラフト1位で阪神に入団した。1軍デビューは1年目の2014年8月10日、相手は広島だった。最初と最後の登板が、同じ球団との対戦になる。
転機は3年目の2016年だった。先発ローテーションに定着し、25試合で10勝9敗、防御率2.90。プロで唯一の2桁勝利を挙げた。2017年は5勝、2018年は7勝と先発で投げ続け、2020年の途中から救援に回る。
役割が変わると登板数は一気に増えた。2022年に自己最多の53試合に投げ、2023年は50試合で24ホールドを記録して18年ぶりのリーグ優勝と38年ぶりの日本一に加わる。9月30日の引退会見では「23年に優勝したあの瞬間にチームの一員としてあの歓喜を味わえたことは今後の人生の中でも財産になる」と話していた。
会見では、2023年に脳腫瘍で亡くなった同期入団の横田慎太郎さんの存在にも触れている。「横田が野球をできなくなった時に、『ヨコの分までやんなきゃ』と思いながら、そこからやってこられた」。終始笑顔だった会見で、横田さんへの思いを語る時だけは言葉を詰まらせた。
関連記事:岩貞祐太、今季限りで現役引退 阪神一筋13年で304試合登板、2016年に初の2桁勝利
通算305試合、43勝44敗60ホールド
NPB公式サイトに載る通算成績は、10月6日の試合を終えた時点で305試合登板、43勝44敗60ホールド、防御率3.56。引退発表時点の304試合、59ホールドから、最後の登板で1試合と1ホールドが加わった。先発と救援の両方で13年間、阪神のユニホームだけを着て投げた数字だ。
今季の1軍登板は、4月の1試合とこの日の引退登板の2試合だった。チームがリーグ連覇を決めた10月3日、岩貞は自宅にいたという。翌4日、ファーム本拠地のSGL尼崎で調整した後に「優勝した瞬間にみんなで喜べなくて。僕は家にいたんで」と明かし、「そういう意味では引き際にちょうどいい」と率直に話していた。
その連覇を祝う優勝セレモニーが、引退試合の後に甲子園で行われた。胴上げの後、岩貞はゆっくりと場内を一周する。「大好きなタイガースファンの歓声を聞けて本当に幸せでした」。今後の役職について、竹内孝行球団副本部長は9月30日の時点で「まだこれから」と話している。
阪神では、1学年上の西勇輝も今季限りでの現役引退を表明している。西の引退試合は、岩貞の翌日となる10月7日の広島戦(甲子園)で予定されている。
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[文/構成 by スポーツライター 高瀬翔吾]








































































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