MEDIA DOGS

角川春樹の現在、84歳で『星の教室』完成披露に杖をついて登壇 2025年8月の脳梗塞から復帰後初の公の場

角川春樹の現在、84歳で『星の教室』完成披露に杖をついて登壇 2025年8月の脳梗塞から復帰後初の公の場

時間がない人向けの30秒で理解ゾーン

映画プロデューサーで角川春樹事務所社長の角川春樹(84)が10月6日、東京・TOHOシネマズ六本木ヒルズで開かれた映画『星の教室』の完成披露舞台あいさつに登壇した。2025年8月に脳梗塞で倒れてから、初めての公の場となった。杖をつきながら自分の足で壇上へ上がり、本作のテーマを「AIとの戦い」と語っている。

↓ 詳細が気になる方は、このまま下へ ↓

杖をついてゆっくり登壇、84歳の総監督が語った「4つ目の出会い」

『星の教室』は角川が総監督を務め、自身の”最後の総監督作品”とうたう青春群像劇だ。舞台あいさつには主演の桜田ひよりをはじめ、仙道敦子、小林虎之介、真木よう子、小泉孝太郎、中尾ミエ、山本學、監督の中川龍太郎が並び、司会はタレントの赤ペン瀧川が務めた。

角川が姿を見せたのはイベントの終盤だった。杖をつき、ゆっくりとした足取りで壇上へ。前列にはキャストと並んで角川の姿があり、倒れてから1年2カ月近くを経ての公の場となる。

スピーチは『犬神家の一族』から50年目に本作が生まれたという話で始まり、本や人との出会いへと移った。親しかった紀伊國屋書店の2代目社長から「人生には3つの出会いがある」と聞かされていたといい、本、人、自然の3つを挙げたうえで、角川はこう続けた。「私はこの映画を通じて、4つの出会いがあるなと。それは”映画との出会いである”とこう感じたんですね」。

話は角川映画の50年にも及んだ。「映画を作る50年の中でアニメーションを含めて76本作りました」と振り返り、これまでの完成披露試写については「記憶にないんです」と語って会場の笑いを誘った。

2025年8月16日に脳梗塞、要介護3から杖で歩けるまで

角川が倒れたのは2025年8月16日だった。脳梗塞で東京・港区の東京慈恵会医科大学附属病院に運ばれ、2025年10月の時点では都内の病院でリハビリ中と伝えられた。

同年10月1日には、角川春樹事務所の創立29周年記念祝賀会で病状が伝えられている。9月26日の取締役会で取締役副社長に就いた妻の角川友美氏が、この席で初めて公の場に立ち、夫の様子を業界関係者に説明した。会場には「ネバー・ギブアップ」と話す角川の音声が流れ、同じ席で『星の教室』の映画化も発表している。

2026年に入ると、本人も自らの言葉で病状に触れている。5月に映画の公開決定が発表された際のコメントでは「私は昨年倒れ、現在もリハビリを続けています」と自ら明かし、劇中に出てくる「明日を諦めない。人生を手放さない。」という言葉が、結果的に今の自分自身を支える言葉にもなったと記している。

6月には84歳でX、YouTube、Instagramを相次いで開設し、YouTubeチャンネルには「角川春樹のネバーギブアップ」と名付けた。6月4日のXの投稿では「脳梗塞で要介護3と認定され左半身麻痺だった私は、懸命なリハビリによって杖で歩けるようになり」とつづり、まったく動かなかった左手を動かせるようになったこと、左足の装具を自分の手で着けられるようになったことも報告している。

10月6日の舞台あいさつで見せた杖をつく姿は、この投稿の内容と重なる。病状について本人や会社がこれ以上の説明を出していないため、現在の詳しい健康状態はわからない。それでも自分の足で壇上に立ち、長いスピーチを最後まで自分の言葉で語り切った。

「AIには命も魂もない」 5本の代表作と並べた『星の教室』

スピーチの中心は、作品への自信だった。角川は自他ともに認める代表作として、市川崑監督の『犬神家の一族』、大林宣彦監督の『時をかける少女』、澤井信一郎監督の『Wの悲劇』、深作欣二監督の『蒲田行進曲』、佐藤純彌監督の『男たちの大和/YAMATO』の5本を挙げた。そのうえで「その過去の5作品、過去の5人の監督はすべて亡くなってしまいました」と述べ、中川監督の『星の教室』はその5本と比べても「少しも遜色がない」と言い切った。

なぜ今、AIを持ち出したのか。

角川によれば、映像もコミックもAIで作れてしまう時代になり、この映画を作るにあたってスタッフを集め、「今回の作品はAIとの勝負である」と伝えたという。「AIには命も魂もない。だから魂を込めて命のある作品を作ろうというのがテーマでした」と明かし、出来上がった作品については「AIには当然打ち勝ったと思っています」と胸を張った。

撮影の舞台裏も明かされた。撮影期間はわずか3週間で、睡眠時間を削られた助監督から不満が出たものの、完成した作品を見たその助監督は「5回泣いた」と話したという。試写会では「感動して立ち上がれないという光景も目にしました。こうした反応は初めてです」と語り、観客に向けて、感動したら個人のSNSで発信してほしいと呼びかけた。

中川監督は、高校時代に『犬神家の一族』を観たことが映画の世界に入るきっかけだったと明かしている。角川映画の第1作に導かれた監督が、角川の”最後の総監督作品”でメガホンを取る巡り合わせだ。

夜間中学が舞台、原作は『みをつくし料理帖』の髙田郁

『星の教室』の原作は、時代小説『みをつくし料理帖』シリーズで知られる作家・髙田郁の同名小説で、角川春樹事務所から刊行されている。髙田が漫画原作者だった時代に取材した夜間学級でのエピソードをもとに書いた作品だ。

物語は2001年1月の大阪から始まる。下町のレンタルビデオ店で働く潤間さやか(桜田ひより)は、中学時代のいじめで不登校となり、卒業を拒んで”中学中退”のまま大人になった。店長の緒方誠(原田泰造)から履歴書の提出を求められたことをきっかけに、近所の中学校の夜間学級に足を踏み入れ、年齢も国籍も異なる生徒たちと出会っていく。

さやかの両親を仙道敦子と萩原聖人、夜間中学の教師を真木よう子、甲本雅裕、三戸なつめが演じる。生徒役には浅野温子、中尾ミエ、山本學、小林虎之介が並び、夜間中学を取材する漫画家役で小泉孝太郎、常連客役でおいでやす小田も出演する。

脚本は松井香奈と角川の共同で、角川は製作にも名を連ねる。主題歌は新しい学校のリーダーズがカバーした「見上げてごらん夜の星を」で、1963年に坂本九が歌った原曲も挿入歌として使われる。上映時間は108分。配給はFly Free EntertainmentとNAKACHIKA PICTURESが担う。

角川と髙田の縁は今回が初めてではない。角川は2020年10月公開の映画『みをつくし料理帖』で約10年ぶりに監督を務め、これを自身の最後の監督作と位置づけていた。同作は角川にとって8本目の監督作で、1982年の『汚れた英雄』から続いた監督としての仕事を、髙田作品で締めくくった。6年後、同じ作家の小説で今度は総監督として現場に戻ったことになる。

出版と映画を半世紀、11月6日公開の「最後の総監督作品」

角川は1942年1月8日生まれ。父・角川源義が創業した角川書店に入り、1975年に社長に就いた。翌1976年に『犬神家の一族』で映画製作に乗り出し、映画と原作本を同時に売り出す手法で”角川映画”の時代を築いていく。『人間の証明』『セーラー服と機関銃』『時をかける少女』『蒲田行進曲』などのヒットを重ね、監督としても『汚れた英雄』や『天と地と』のメガホンを取った。

角川書店を離れた後は角川春樹事務所を率いて出版を続け、同社は2026年に創立30周年を迎える。祝賀会で映画化が発表された『星の教室』は、その節目の年に公開される作品だ。

5月のコメントで角川は、本作を「自分にとって”最後の作品”になるという思いで向き合っています」と記していた。『犬神家の一族』から50年目の秋、84歳の総監督は杖をつきながら、その作品を観客の前に送り出した。

『星の教室』は11月6日に全国公開される。

[文/構成 by エンタメライター 和泉ユウスケ]

寄稿者

和泉ユウスケ
映画とアニメのことばかり書いているライターの和泉です。Webメディアで映画レビューを書き始めて9年になりました。深夜アニメは毎クール20本前後を追いかけ、映画館には月に数回、公開初日にもよく出没します。公開日・配信日・キャスト情報は正確に、ネタバレには慎重にお届けします。

コメントはこちら

*
*
* (公開されません)

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)

ライフハック/実用

More

グルメ

More

エンタメ

More

社会/ニュース

朝の駅前広場の静かな街角

佐野章二さん死去、84歳 『ビッグイシュー日本版』創業者、死因は膵臓癌とビッグイ...

『ビッグイシュー日本版』を創刊した佐野章二さんが9月19日、膵臓癌のため84歳で亡くなったとNPO法人ビッグイシュー日本が10月5日に公表した。ホームレスの人の仕事をつくる雑誌を大阪で始めた歩みと、最後のあいさつで示した実績をまとめた。
More

旅行/スポット

More

ファッション/ビューティー

ファンケル「マイルドクレンジングオイル ブラック&スムース」は実際どう?真っ黒なオイルの使い心地や洗い上がり、口コミをレビュー

ファンケル「マイルドクレンジングオイル ブラック&スムース」は実際どう?真っ黒な...

ファンケルの毛穴ケア向けクレンジング「マイルドクレンジング オイル<ブラック&スムース>」をレビュー。炭と吸着泥配合の真っ黒なオイルの色やテクスチャー、流したあとの肌の感じ、120mL・約60回分の量とコスパまで写真付きで紹介。
More
Return Top