鎌倉『鏑木清方記念美術館』で日本画に触れる 最後に暮らした家の跡に建つ、再現された画室と挿絵の世界を体験レポ

📷写真・📝レビュー提供:やままる
取材・編集:MEDIA DOGS 編集部/ © 2026 MEDIA DOGS
今回は、神奈川県鎌倉市の「鎌倉市鏑木清方記念美術館」へ行ってきたのでレポートしていきます。
ここは日本画家の鏑木清方が最後に暮らした家の跡に建つ、鎌倉市立の美術館なのですが、館内には清方の画室を再現した展示があって、絵具や筆といった画材まで間近で見られます。
その鏑木清方は、1878年(明治11年)の生まれ。17歳ごろから挿絵画家として活動を始め、《築地明石町》や《三遊亭円朝像》といった代表作を残した人です。
訪れたのは9月上旬の平日、午前11時ごろ。企画展「鏑木清方の文学愛 ―”推し”に捧げる挿絵の世界―」の会期中でした。
程よく人が入っているくらいの館内を、45分ほどかけて回ってきました。展示の様子と撮影できる場所を、写真多めでお伝えしていきます。
これから訪れるか悩まれている方は、ぜひ参考にしていただけると嬉しいです。
小町通りから一歩入るだけで、もう住宅街 鏑木清方記念美術館へ
美術館があるのは、鎌倉駅から小町通りを北へ歩いた先です。にぎやかな通りから一本入ると、人の流れがふっと途切れて、あたりは静かな住宅街になります。
歩きながら「一歩入るだけで全然人がいないね」と話したくらい、通り一本で雰囲気ががらりと変わりました。
目印になるのは、瓦屋根の門と、その横の竹垣に掛かった木の館名板。門のわきの掲示板には、企画展のポスターも貼り出されています。
門の手前には丸い飛石、その先にはまっすぐな敷石のアプローチが奥へ続いていました。


掲示板には、開館時間と観覧料も出ています。企画展は一般300円。美術館としては手ごろな金額です。

鎌倉市内にお住まいの方は、観覧料が無料。市内の学校に通う児童・生徒・学生も無料で、同伴の方は団体料金で入れます。
建物の入口には、1,200円の年間パスポートの案内も出ていました。1年間、何度来ても入館料がかからないので、近くにお住まいの方には嬉しい仕組み。

この美術館が開いたのは平成10年(1998年)のこと。
清方が亡くなったあと、遺族から土地と建物、作品や資料が鎌倉市へ寄贈されて、記念美術館として生まれ変わりました。だから住所も、清方が最後まで暮らしていた場所そのものです。
鏑木清方記念美術館の館内レポ 再現された画室から挿絵の世界まで
ここからは館内の様子です。大きな美術館ではありませんが、画材の展示、再現された画室、企画展の挿絵作品と、見どころがきゅっと詰まっていました。
空間そのものもきれいで、回りながら「ここ、いいね!」と話していたくらいです。
いざ館内へ まずは受付をします

受付は、自動ドアを入ってすぐの右側。観覧料を払うと、まず案内されたのが写真のルールです。館内は基本的に撮影禁止で、そのうえで撮影できる場所を、係の方が一つずつ具体的に教えてくれました。
作品が並ぶ展示室は撮影禁止です。指定された場所以外ではカメラをしまって、目で見ることに集中する時間になります。
うちわを持って撮れる、企画展の「推し活コーナー」
企画展に合わせて用意されていたのが「推し活コーナー」。展示室に入る前、入口を入ってすぐの斜め前あたりにありました。畳の展示台に企画展のポスターが立てられていて、その前に推しうちわが並んでいます。
うちわの文字は、片方が「推し」、もう片方が「美登利」。解説札によると、樋口一葉『たけくらべ』の主人公・美登利に対する清方の気持ちを表したうちわなのだそう。


解説札には「”推し活”という言葉がなかった明治時代でも、『好き』を応援する気持ちは変わらなかったはず」という一文も添えられていました。なるほど、と妙に納得してしまいます。
このときは、係の方から「その前で写真を撮っていただいて結構です」と声をかけていただいて、うちわを持ったところを撮ってもらいました。ここは記念撮影のスポットにもなりそうです。
この企画展の会期は、2026年9月2日から10月18日まで。挿絵と物語をセットで楽しみたい方は、会期中がねらい目です。
岩絵具の原石と絵具瓶 日本画の色は、石から作られている
続いて足を止めたのが、日本画の画材が並ぶガラスケースでした。中に入っているのは、色とりどりの石のかけら。これが日本画の絵具のもとになる鉱物です。
解説によると、緑の絵具はマラカイトを砕いて作られていて、粒子の大きさが番号で表されているそう。番号が大きいほど粒子は細かくなり、色は淡くなります。
絵具の小瓶のほうは、青、緑、赤、黄と色ごとに分けられて、引き出しいっぱいに並んでいました。


絵具というと、もう色になった状態しか思い浮かびませんでした。それが石から始まっていると分かると、日本画の見え方が少し変わります。
再現された画室 道具がそのまま置かれている
もうひとつの見どころが、清方の画室を再現した展示です。
畳敷きの部屋に白い布を掛けた台が置かれ、その上に画材がずらり。奥には障子、右手には文机と箪笥、手前には座布団も置かれていました。

台の上を近くで見ると、絵皿、乳鉢、筆、硯、眼鏡、扇、刷毛。積み上げられた和装本の背には「鏡花」の文字も見えました。

画室を正面にして右側には、日本画がどんな順序で描かれていくのかという解説もありました。描く順番は描き手によっても、描くものによっても変わるのだそう。
制作の流れを知ってから画室を眺めると、清方が机に向かっていた時間が、ぐっと想像しやすくなります。
挿絵にはストーリーがある 樋口一葉と泉鏡花という”推し”
ここから先が、企画展の中心になる展示室。写真はここでいったんお休みです。
企画展のテーマは、清方が愛した文学でした。少年のころから樋口一葉を愛読していて、企画展のポスターにも《一葉女史の墓》という明治35年(1902年)の作品が使われています。
もう一人が泉鏡花。1901年に出会って以来、鏡花の小説の挿絵や口絵を数多く手がけました。展示の解説にも、この二人の名前が何度も出てきます。
面白かったのが、挿絵には物語があるということ。一枚で完結する絵ではなくて、小説のどの場面かが決まっているので、絵を見ながらその場面の話も一緒に追いかけることになります。
大きな絵看板から、小説の挿絵、絵葉書まで、いろいろな仕事が並んでいました。看板が手描きだった時代の絵を見ていると、今は印刷が当たり前なのが不思議な気持ちになります。
描かれているのは女性が多く、目元の描き方と、漆黒の髪の質感がとにかくきれい。髪の生え際までていねいに描かれていて、思わず顔を近づけてしまいました。小説の絵葉書に残る繊細なタッチも好きです。
並んでいたのは、1902年の作品から、清方が91歳だった1969年の作品まで。近代化があって、関東大震災があって、戦争があった時代を、ずっと絵を描いて過ごした人なのだと実感しました。
初めて知った「向かい干支」 泉鏡花とうさぎ
向かい干支とは、自分の干支から数えて7番目にあたる干支のこと。それにちなんだものを身につけると縁起がいいとされています。この日、初めて知りました。
清方が挿絵を手がけた泉鏡花は、酉年の生まれ。向かい干支にあたるうさぎのものを、生涯にわたって集めていたのだそう。
泉鏡花とのエピソードの一文で出てきて、思わず自分の向かい干支を数えていました。笑
中庭に面した一角で、ひと息
館内には、中庭に面した明るい一角もあります。壁沿いには書棚、中央には長机と椅子、窓辺には庭を向いたカウンター席が並んでいました。
大きな窓の外は、竹垣と飛石、そして植栽の緑。座ったまま庭を眺められる場所です。


あまりに気持ちのいい眺めで、思わず「ここでコーヒーが飲みたいね」と話してしまったほど。展示を見たあとに、こういう場所があるのは嬉しいところです。
ゆっくり見て回っても、所要時間としては30分ほどで回れそうな広さ。鎌倉を歩く途中にも、無理なく組み込めました。
このあとは、歩いて数分のところにある一軒家のレストランでお昼にしました。よろしければ、こちらもどうぞ。
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紹介している記事のリンクは、記事末にも一覧でまとめています。本編を読み終えた後、気になる記事は最後にゆっくりご覧ください。
鏑木清方記念美術館を訪れてみて|良かった点・気になった点
実際に訪れてみて、行く前に知っておくと安心だと感じたこともいくつかありました。良かった点とあわせてまとめておきます。
【良かった点】
- 清方が暮らした場所に建っている:晩年を過ごした家の跡地がそのまま美術館になっていて、中庭を眺められる一角もあります
- 画室と画材が間近で見られる:絵具の原石や色ごとに並んだ絵具瓶はガラスケース越しに、筆や絵皿は再現された画室で、すぐ近くから見られます
- 挿絵は物語ごと楽しめる:樋口一葉や泉鏡花の物語の場面が描かれているので、絵と話をセットで追いかけられます
- 撮影できる場所の案内が丁寧:入口で係の方が、撮影できる場所を一つずつ教えてくれます
- 1時間かからずに回れる規模:鎌倉を歩く途中でも、無理なく予定に組み込めます
【気になった点】
- 館内は基本的に撮影禁止:作品や写真パネルは撮影できません。撮れるのは決められた場所だけなので、現地の表示と係の方の案内に従いましょう
- 展示は入れ替わります:企画展ごとにテーマが変わるので、お目当ての作品があるなら会期を確認してから行くと安心です。月曜のほかに臨時休館日が入ることもあるので、あわせて確認しておくと確実です
- 駐車場・駐輪場がありません:公共交通機関での来館が案内されているので、車で向かうなら周辺の駐車場を先に調べておくとスムーズです
鎌倉市鏑木清方記念美術館の口コミ・評判
フォートラベルとYahoo!マップに投稿された、実際に訪れた人たちの口コミから、判断材料になりそうな一節をそのまま引用して紹介します。
良い口コミ
小さな美術館ですが鏑木の画室が再現されていたり映像コーナーがあったりと作品はもちろんじゅうぶん見応えのある内容でした。落ち着いた空間で鑑賞ができます。
フォートラベル:tenkuusogoさん(2023年2月18日・原文より引用)
私も画室の再現には長く足を止めました。大きな美術館ではないぶん、ひとつずつをゆっくり見られるのがこの館のいいところだと思います。
鏑木清方の旧居跡地にある小さめな美術館で路地にひっそりとあり、静かな雰囲気が素敵です。小さな展示スペースだからこそ間近に見ることができ、清方の世界を堪能できます
Yahoo!マップ:ふくたろうさん(2023年5月16日・原文より引用)
間近に見られるというのは、私も同じ感想でした。画材のガラスケースは手が届きそうな距離で、再現された画室も、手前に立つと道具の一つひとつまで見えます。
企画展示は『うつりゆく時代を見つめて』というもの。江戸、明治の風景などの描かれた作品で、着物の素敵な女性が印象的でした。
フォートラベル:ももちゃんさん(2023年3月11日・原文より引用)
企画展は時期によって入れ替わります。私が訪れたときのテーマは挿絵でしたが、着物姿の女性を描いた作品はこの回にもたくさん並んでいました。
気になる口コミ
電柱に「鏑木清方記念館」の目印があり、鎌倉駅に向かって右に入る。事前に地図で調べたつもりだが、なかなかわかりにくかった。
フォートラベル:sio爺さん(2017年4月16日・原文より引用)
住宅街のなかにあるので、初めてだと通り過ぎてしまうかもしれません。
公式サイトの道順は、聖ミカエル教会のある四つ角を直進して、鶴岡八幡宮方面へ約100m進んだ先を左折。門のわきの館名板と企画展のポスターが目印です。
口コミまとめ
「小さな美術館」「静か」「落ち着いた空間」という声が多く、画室の再現展示や着物姿の女性を描いた作品への評価も目立ちました。
一方で、路地に入る場所がわかりにくいという声も。初めて行くなら、道順を確認してから向かうと安心です。
鎌倉で静かな時間がほしくなったら、この門をくぐってみてほしい
絵具のもとになる石から、再現された画室、そして挿絵の一枚一枚まで。清方が絵を描いて過ごした時間を、そのままたどれる場所でした。
印象に残ったのは、うちわを持ったところを撮らせてもらえたことです。作品の前ではカメラをしまって、撮れる場所ではしっかり撮る。そのメリハリのおかげで、展示そのものにも集中できました。
日本画や挿絵に興味がある方はもちろん、鎌倉を歩いていて少し静かなところで休みたくなった方にも、ぜひ立ち寄ってみてほしい美術館です。
鎌倉市鏑木清方記念美術館の基本情報
| 名称 | 鎌倉市鏑木清方記念美術館(かまくらしかぶらぎきよかたきねんびじゅつかん) |
| 所在地 | 〒248-0005 神奈川県鎌倉市雪ノ下一丁目5番25号 |
| アクセス | JR横須賀線・江ノ島電鉄「鎌倉駅」から小町通りを北へ徒歩約7分。小町通りから一本入った住宅街の中 |
| 開館時間 | 9:00〜17:00(入館は16:30まで) |
| 休館日 | 月曜日(祝日の場合は開館し翌平日を休館)/年末年始(12月29日〜1月3日)/展示替え期間 |
| 観覧料 | 企画展 一般300円・小・中学生150円/特別展 一般450円・小・中学生220円 ※鎌倉市内在住・在学の方、障害者手帳をお持ちの方とその介助の方は無料 |
| 駐車場 | なし(駐輪場もなし) |
| 公式サイト | https://www.kamakura-arts.or.jp/kaburaki/ |
[文/構成 by MEDIA DOGS編集部]
※本記事は訪問時の情報をもとに作成しています。サービス内容や営業時間、料金等は変更される場合がありますので、最新情報は公式サイトや店舗にご確認ください。
この日は、朝に若宮大路沿いのチョコレート専門店へ寄って、美術館のあとは一軒家のレストランでお昼にしました。鎌倉では別の日に、路地裏のうどん屋さんにも行っています。よければそちらもどうぞ!
やままるさんの他のレビュー一覧
このレビューの情報を提供していただいているやままるさんは、こんな人です。
- 神奈川県在住。鎌倉・箱根エリアによく出没
- 神社やお寺などの歴史スポット、美術館が大好き
- 焼肉屋のレビューをよくしています
- シンプルな味が好きで、塩味に目がない
- 甘いものは、いちご味とチョコ味が好き
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