竜王戦第2局、三嶋大社で初の将棋対局 藤井聡太竜王が62手目を封じ2日目へ

時間がない人向けの30秒で理解ゾーン
将棋の第39期竜王戦七番勝負第2局を前に、藤井聡太竜王(24)と挑戦者の服部慎一郎七段(27)が10月21日、静岡県三島市の三嶋大社で対局室の検分に臨んだ。舞台は社務所内の和室「正庁」。三嶋大社で将棋の対局が行われるのは、長い歴史の中で初めてになる。対局は10月22日午前9時に始まり、先手の服部が角換わりを選ぶと、藤井は右玉で応じた。1日目は藤井が62手目を封じて終えた。
正庁で駒・照明・空調を確かめた前日検分
両対局者は10月21日午後3時半ごろに三嶋大社へ到着した。正式参拝でおはらいを受け、玉串をささげたあと、境内で飼われているシカに鹿せんべいを与える場面もあった。突然姿を見せた2人に、居合わせた参拝客が驚いてカメラを向けたという。
検分は午後4時半から。対局室となる社務所の正庁で、藤井と服部は使う駒の具合を確かめ、照明の明るさや空調まで一つずつ点検した。2日制で持ち時間は各8時間。2日間にわたって座り続ける部屋だけに、わずかな違和感も前日のうちに解消しておく。タイトル戦では毎回欠かさない手順だ。
正庁は社務所の2階にある和室で、社務所の中で最も格式が高い部屋とされる。ふだんは一般公開されていない。重要な儀式や特別な行事に使われてきた部屋だ。8月9日に同じ社務所で開かれた「竜王戦開催記念 三嶋大社奉納 三島市長杯将棋大会」では、参加者向けに、対局室となる正庁を外から見学する時間が設けられた。
検分のあと、2人は三島市内のホテルで開かれた前夜祭に出席した。
参拝を終えた藤井は、翌日の対局に向けて「身の引き締まる思い」がしたと話し、素晴らしい場所で対局できることへの感謝も口にした。服部は「歓迎を力に変えて良い将棋が指せるように頑張りたい」と応じている。
頼朝ゆかりの古社、三島で初の竜王戦
三嶋大社は大山祇命(おおやまつみのみこと)と積羽八重事代主神(つみはやえことしろぬしのかみ)をまつり、2柱を合わせて三嶋大明神と呼ぶ。創建の時期は分かっていない。平安時代中期の延喜の制で名神大社に列せられ、伊豆に流された源頼朝が源氏再興を祈ったことでも知られる。本殿・幣殿・拝殿は2000年(平成12年)に国の重要文化財に指定された。
本殿はいま「令和の大修理」の最中で、足場に覆われている。その本殿に将棋盤をあしらった竜王戦開催記念の特別御朱印が10月21日から授与され、境内には列ができた。授与は10月23日までの3日間限定で、1人1枚まで。「三嶋大社も歴史がありますので、そこで竜王戦が開かれるのは市民にとっては光栄というか、うれしい」。訪れた人はそう喜んだ。
第2局は三島市の市制施行85周年の記念事業で、主催は読売新聞社と日本将棋連盟。三島市で竜王戦が開かれるのは初めてになる。三嶋大社は記念の特別絵馬も2000体限定で用意し、2027年1月31日まで頒布する。
1日目は服部の角換わり、藤井は右玉で迎え撃つ
10月22日午前9時、立会人の青野照市九段の合図で対局が始まった。先手は服部。初手に▲2六歩と突き、角を早々に交換する角換わりへ進む。後手の藤井は玉を右側に移す「右玉」を選び、攻めを受け止める構えを取った。
新聞解説の八代弥八段は、服部が藤井の得意戦型で勝ってシリーズの流れをつかみたい意志を感じたと分析している。穏やかに指す藤井に対し、服部がどこで攻めの糸口を見つけるかが焦点になる。
午前中は藤井が飛車を上下させて様子をうかがった。昼食休憩の前に藤井が仕掛け、戦いが始まる。難所で43分考えたところで、12時30分に昼食休憩に入った。この時点の消費時間は服部が1時間44分、藤井が1時間16分。ABEMAで解説した三枚堂達也七段は「これからの将棋」と話し、ここから流れがゆっくりになるとの見通しを示した。
午後は両者が時間を使うゆっくりとした展開になった。午後6時、立会人の青野九段が定刻を告げると、手番の藤井が約8分考えてから封じる意思を示し、62手目を封じた。次の一手を紙に書いて封筒に入れる「封じ手」で、1日目を終えた時点の消費時間は服部が3時間37分、藤井が3時間59分。10月23日午前9時に封じ手を開封して再開し、決着は同日中になる見込み。
勝負めしは市民投票で選んだ三島の味
三島市は竜王戦に合わせて6月から準備を進め、市内の飲食店などからメニューを募った。8月に市民投票を行い、総投票数2万2202票で勝負めし18品、勝負おやつ18品、勝負ドリンク9品の計45品を選んだ。対局者はこの中から注文する。
藤井が午前10時のおやつに選んだのは、福太郎本舗の「福太郎餅」とパスタ屋一丁目のアイスミルクティー。福太郎餅は、毎年1月7日の田祭のあとに舞殿で演じられる「御田打神事」の婿役・福太郎の顔をかたどった草餅で、邪気を払うとされるヨモギの餅でこしあんを包む。三嶋大社の名物を、その境内での対局中に口にした。服部は若木の「ぽてと園」と、お茶処山田園の「三島産紅ほっぺのフラペッチャ」を頼んだ。
昼食は、藤井が寿司・うなぎ処京丸の「鰻のカツ勝つカレー三島野菜添え」と、JAふじ伊豆ファーマーズマーケットの「箱根西麓三島野菜ぎゅっとまるごとにんじんジュース」。服部は田中亭の「ジューシーハンバーグと北海道産サーロインステーキ膳」に、kudo菓子工房のクラフトコーラを合わせた。
午後3時のおやつは”ケーキ対決”になった。藤井は地元カフェのマスターが手作りするバスクチーズケーキと、函南町の丹那牛乳を合わせた三島の和紅茶のロイヤルミルクティ。服部は2度焼きの自家製アップルパイと、沼津市西浦産のミカン「寿太郎」を使った寿太郎レモンスカッシュを選んだ。
選ばれた店は朝から沸いた。福太郎本舗の高嶋英樹さんは当日の朝に知らされて驚いたといい、ヨモギには邪気を払う縁起があると話した。京丸の大沼正敏店長も社員全員が驚いたと明かし、三島の飲食店の名前を広めたいと意気込む。三島市民文化会館の大盤解説会(解説・山崎隆之九段、聞き手・宮宗紫野女流二段、ゲスト・つるの剛士)では、勝負めしや勝負おやつの持ち帰り販売もあった。
第1局は藤井が113手で先勝、6連覇へ
七番勝負は先に4勝した側がタイトルを手にする。第1局は10月9日と10日に東京都渋谷区のセルリアンタワー能楽堂で指され、先手の藤井が113手で勝った。後手の服部は力戦に持ち込んだが、終盤に見落としていた手を指され、「最後にポッキリという感じだった」と悔やんだ。
藤井は2021年の第34期で竜王を初めて手にし、前期の第38期まで5連覇。連続5期の獲得で永世竜王の資格を得ている。今期は名人・王位・棋聖・棋王・王将と合わせた六冠で、竜王6連覇がかかる。
富山市出身の服部にとっては、今夏の棋聖戦五番勝負に続く2度目のタイトル挑戦になる。棋聖戦は藤井が防衛して7連覇を果たし、竜王戦の第1局も落とした。タイトル戦では、まだ藤井から白星を挙げていない。第2局は服部が先手番を持つ一局で、ここで勝てば1勝1敗のタイに戻す。
| 局 | 日程 | 会場 | 結果 |
|---|---|---|---|
| 第1局 | 10月9日・10日 | セルリアンタワー能楽堂(東京都渋谷区) | 藤井竜王の勝ち(113手) |
| 第2局 | 10月22日・23日 | 三嶋大社(静岡県三島市) | 対局中 |
| 第3局 | 11月3日・4日 | 仁和寺(京都市) | ― |
| 第4局 | 11月20日・21日 | 霧島創業記念館 吉助(宮崎県都城市) | ― |
| 第5局 | 12月2日・3日 | 増上寺(東京都港区) | ― |
| 第6局 | 12月9日・10日 | 指宿白水館(鹿児島県指宿市) | ― |
| 第7局 | 12月16日・17日 | 常磐ホテル(山梨県甲府市) | ― |
第5局以降は必要な場合に行う。
頼朝が源氏再興を祈った古社の、ふだんは公開されない格式ある部屋。そこで竜王位をかけた2日目の戦いが、10月23日朝に再開する。
[文/構成 by スポーツライター 疾風(HAYATE)]











































































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