急に具合が悪くなる、米アカデミー賞 国際長編映画賞の日本代表に 濱口竜介監督作は5年ぶり2度目

時間がない人向けの30秒で理解ゾーン
濱口竜介監督の『急に具合が悪くなる』が8月26日、第99回米アカデミー賞国際長編映画賞部門の日本代表作品に決定した。濱口監督作品の日本代表選出は『ドライブ・マイ・カー』以来5年ぶり2度目。主演のヴィルジニー・エフィラと岡本多緒は今年5月のカンヌ国際映画祭で女優賞を共同受賞していた。
濱口監督作、5年ぶり2度目の代表に
日本映画製作者連盟は8月26日、濱口竜介監督の『急に具合が悪くなる』を第99回米アカデミー賞国際長編映画賞部門の日本代表作品に選んだと発表した。濱口監督の作品が日本代表に選ばれるのは、2021年の『ドライブ・マイ・カー』以来5年ぶり2度目になる。
『ドライブ・マイ・カー』は第94回アカデミー賞で作品賞、監督賞、脚色賞、国際長編映画賞の4部門にノミネートされ、国際長編映画賞を受賞した。日本映画の同賞受賞は『おくりびと』以来13年ぶり。今回の代表決定は、その実績を踏まえた再挑戦にあたる。
『急に具合が悪くなる』は濱口監督にとって初めての海外ロケ作品だ。舞台をパリに移し、日本、フランス、ドイツ、ベルギーの共同製作で撮影された。上映時間は196分、日本公開は6月19日だった。8月26日の代表決定時点で、公開から2カ月以上を経てもロングラン上映が続く。
原作は同名書籍、20通の往復書簡
映画の原作は、哲学者の宮野真生子と人類学者の磯野真穂が交わした同名の書籍『急に具合が悪くなる』(晶文社)。2019年9月に刊行されたこの本には、乳がんが進行するなかで生きた宮野と、医療現場の調査を重ねてきた磯野が、死や別れ、出会いについて交わした20通の書簡が収められた。
宮野が執筆分を書き上げたのは、刊行の2カ月前にあたる同年7月。その直後、42歳で世を去った。往復書簡は、著者本人が世を去った後に読者の手に届いた一冊となった。
濱口監督はこの往復書簡を、フランス人と日本人という設定に翻案した。パリ郊外の介護施設「自由の庭」の施設長マリー=ルー・フォンテーヌと、がんを患う日本人の舞台演出家・森崎真理。名前の響きが重なる2人が偶然に出会い、病の進行とともに心を通わせていく物語に仕立てた。
世界3大映画祭を制覇した監督の軌跡
濱口監督は『ドライブ・マイ・カー』の後も、賞レースで結果を残してきた。2021年公開の『偶然と想像』はベルリン国際映画祭で審査員グランプリ(銀熊賞)を受賞。2024年に日本公開された『悪は存在しない』は、前年のヴェネチア国際映画祭で審査員大賞(銀獅子賞)に選ばれ、国際批評家連盟賞など3つの独立賞も手にした。
『ドライブ・マイ・カー』のカンヌでの脚本賞受賞と合わせ、濱口監督はカンヌ、ベルリン、ヴェネチアの世界3大映画祭すべてで主要賞を受けたことになる。日本人監督では黒澤明以来の記録だ。
『急に具合が悪くなる』は、第79回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門に出品され、主演の2人が女優賞を共同受賞した。8月のロカルノ国際映画祭でも、ヴィルジニー・エフィラがレオパルド・クラブ賞を受けた。
名前が重なる2人、エフィラと岡本多緒
介護施設長マリー=ルーを演じたヴィルジニー・エフィラは、ベルギー出身でフランスを拠点に活動する。『エル ELLE』『ヴィクトリアとベッドで』などに出演し、2022年に本国フランスで公開された『パリの記憶』ではセザール賞主演女優賞を受賞した実力派だ。
がんを患う舞台演出家・森崎真理を演じた岡本多緒は、日本人として初めてカンヌ国際映画祭の女優賞を受けた。5月26日、日本記者クラブでの凱旋会見で、岡本は「私自身はまだ全く現実感が湧いておりません」と受賞の実感を語った。エフィラは「多緒と一緒に受賞できて、とても幸せに感じます」と笑顔を見せる。
関連記事:岡本多緒は何者か?身長176cm元スーパーモデル”TAO”の経歴がすごすぎた「ウルヴァリンのあの人!?」カンヌ女優賞で日本人初の快挙
会見では濱口監督も登壇し、「映画の中心にあるのは常に俳優です」と演出方針を語った。台本の読み合わせを重ねながら感情を排して読み込み、俳優自身の理解を深めていく手法は、日本語とフランス語の両方で繰り返された。フランスでの1カ月間のリハーサルを経て確立させた、濱口監督ならではのアプローチだ。
物語には長塚京三と黒崎煌代も加わる。長塚は、真理が演出する舞台に立つ俳優・清宮吾朗役。黒崎は清宮の孫、窪寺智樹役を演じた。
代表決定から受賞まで、この先の道のり
日本代表に選ばれたからといって、ノミネートが確定するわけではない。国際長編映画賞は各国・地域の代表作品をアカデミー協会の委員会が審査し、12月ごろに15作品程度の最終候補(ショートリスト)を発表する。そこからアカデミー会員の投票を経て、5作品が正式にノミネートされる仕組みだ。
前回の第98回では、李相日監督の『国宝』が日本代表に選ばれ、15作品のショートリストに残った。だが最終候補の5作品には届かず、ノミネートを逃した。日本代表に選ばれても、その先には狭き門が待つ。『ドライブ・マイ・カー』が歩んだ道のりを、5年ぶりに再びたどれるか。
第99回アカデミー賞は2027年3月14日(現地時間)に授賞式を迎える。北米では、『パラサイト』や『アノーラ』など毎年のように賞レースへ作品を送り込んできた配給会社ネオンが『急に具合が悪くなる』の配給を担う。フランスでも8月に公開され、濱口監督とエフィラが舞台挨拶に立った。ショートリストの発表は12月ごろ、最終候補5作品の発表は来年1月の見込みだ。
[文/構成 by MEDIA DOGS編集部]


































































コメントはこちら