MEDIA DOGS

Slack Codeが提供開始 AIコーディングエージェントと協働する新機能とは何かを整理

Slack Codeが提供開始 AIコーディングエージェントと協働する新機能とは何かを整理

時間がない人向けの30秒で理解ゾーン

Salesforce傘下のSlackが8月20日(米国時間)、AIコーディングエージェントとチームで一緒にソフトウェアを作る新機能「Slack Code」を公開した。作業ごとに専用の「コードチャンネル」が立ち上がり、エージェントの手元を全員で見ながら進められる。使えるのはすべてのSlackプラン、Slack側の追加料金はゼロだ。

作業ごとに専用チャンネルが自動で立つ

会話の途中でコーディングエージェントをメンションすると、その作業だけを扱うコードチャンネルが自動で生まれる。必要な資料へのリンクを添え、関わるメンバーを呼び込むところまでがエージェントの仕事だ。あとは普通のチャンネルと変わらない。メッセージもファイルも、いつもどおり行き来する。

違うのは、作業の中身がそのままチャンネルへ並ぶ点だ。エージェントとのやり取り、これから何をするかの計画、コードの差分、動くHTMLのプレビュー。差分は書き換える前と後を突き合わせた比較で、どこがどう変わったのかを一目で追える。

指示は話し言葉のままでいい。おかしな方向へ進み始めたら途中で止め、条件を足し、やり直させる。エージェントによっては進み具合の要約が元のスレッドへも流れ、コードチャンネルに入っていない人が置いていかれずに済む。

想定しているのは単発の作業やプロジェクトだ。新機能の追加、Webページの更新、バグ潰し。片づいたチャンネルは自動でアーカイブされ、あとから検索できる記録として残る。

使えるのは4種類 ChatGPTは近日対応

呼び出せるエージェントは、公開時点で4つ。AnthropicのClaude、CognitionのDevin、GitHub Copilot、そしてVercelのエージェントが並ぶ。OpenAIのChatGPTは近日対応とされ、初日の提供には含まれなかった。

中身は各社でそれぞれだ。ClaudeではSlack向けの窓口にあたるClaude Tagがコードチャンネルを呼び出し、作業が着地すると部屋まで畳む。Devinが目指したのは同僚に近い距離感だった。必要なときだけ返事をして、あとは黙っている。Vercelのエージェントは、変更が入った瞬間に動くプレビューを立ち上げ、共有できるリンクをその場へ投げるのが持ち味だ。

GitHubの狙いは、書き手そのものを増やすことだった。技術に明るくないメンバーが普通の言葉で困りごとを説明し、エージェントに直し方を書かせ、そこでエンジニアを呼んでレビューしてもらう。同社の最高製品責任者マリオ・ロドリゲスは「人が方向を決め、エージェントが仕上げる」という言い方で、この座組みを説明した。

料金はSlack側では発生しない。無料プランを含むすべてのプランで使える一方、各社のエージェントを動かす権利は別に要る。コードチャンネル向けのAPIも用意され、アカウントの発行やユーザー認証を自社の運用に合わせて組み込める。ただし外部の開発者へ広く開くのはこれからで、いまはローンチパートナーに限られている。

エージェントの権限は呼び出した人と同じ

企業が導入を考えるとき、最初に引っかかるのは権限の話だ。経理のリポジトリが法務から見えてしまうのではないか、という心配がまず浮かぶ。

ロブ・シーマンの答えははっきりしていた。エージェントは呼び出した人の権限をそっくり引き継ぎ、それ以上は持たない、というのがSlackの説明だ。Slackの既存の権限設定と管理者向けの制御をそのまま受け継ぐ作りだ。情報システム部門が新しく設定したり監査したりするものはない。製品担当バイスプレジデントのケイティ・スタイグマンによれば、エージェントがコードチャンネルを立てたとき、そのエージェントが受け取るのは、きっかけになった会話の文脈だけだという。

本番環境への反映のような重い操作では、エージェントが作業内容をまとめたうえで、人の承認を挟む段取りになった。管理者が独自の歯止めを設けることも可能だ。技術に明るくないメンバーがエンジニアのレビューを飛ばしてコードを出してしまう事態は、設定で防げる。Devinは隔離された作業場で動き、アクセスを必要最小限に絞った。インターネットにつながらないモードも選べる。

これで全部片づくわけでもない。Forresterのシニアアナリスト、ウィル・マキーオン=ホワイトは、権限は多人数で扱うものすべてに共通する、なかなか消えない課題だと指摘する。誰の権限を引き継ぐかにはいくつもの流儀があり、どれにも穴が残ったままだ。

「コードはもうボトルネックではない」

公開前の記者向け説明会で、Slack部門を率いるエグゼクティブバイスプレジデント兼ゼネラルマネージャーのロブ・シーマンはこう切り出した。

「私がこれを気に入っている点のひとつは、コードがもうボトルネックではなくなったことだ」

詰まるのはアイデア、センス、判断、作り込みの側であり、Slackにいる誰もがそこへ加われるようになった、と続けた。書くこと自体が高くついた時代は終わり、制約は人の判断へ移ったという見立てだ。

シーマンがSlackを率いるに至ったのには事情がある。2025年12月、OpenAIがSlackの最高経営責任者だったデニス・ドレッサーを最高収益責任者として引き抜き、当時の製品責任者だったシーマンが後を預かった。2026年2月、Salesforceは彼を正式にSlack部門のエグゼクティブバイスプレジデント兼ゼネラルマネージャーに据えている。

後ろ盾になるのは、実際の数字だ。Cognitionのジェフ・ワンは、社内でマージ済みのプルリクエストがここ数か月で10倍になった一方、人員は40%ほどしか増えていないと明かす。同社のバグの多くを見つけているのは、実は営業チームだという。Slackで報告が上がり、技術が分かる誰かが手を動かす。

品質が落ちるのではないか、という疑いには、スタイグマンが逆から答えた。全員に見えていること自体が歯止めになる、という理屈だ。プロダクトマネージャーである彼女自身、プルリクエストを出すときはほぼ必ずチームのエンジニアを呼び、承認だけを求めることはしないと語った。

7割超が1日で完結 コード以外にも広げる

Slackが挙げた社内の実績はひとつ。コードチャンネルの70%超が、アイデアからプルリクエストのマージまで1日以内に立ち上がって閉じている。

この仕組みは自社の困りごとから生まれた。エージェントとの何往復もするやり取りを普通のスレッドへ押し込むと、窮屈で騒がしくなる。かといって、開発者が個別のブラウザタブへ引きこもるのも困りものだ。全員が見えるところで働くというSlackの持ち味が消えてしまう。

次に狙うのはコード以外だ。マーケティングのキャンペーン、法務の契約レビュー、ITのオンボーディング。文書を細かく見て変更を追い、送る前に仕上がりを確かめる作業は、コードのそれと重なる。エージェントとのやり取りをスレッド・DM・コードチャンネルを横断して扱うAgents & Toolsタブも用意された。

追い風ばかりでもない。Gartnerは2027年末までにエージェント型AIの案件の40%超が中止されると予測し、費用の膨らみと成果の見えにくさを理由に挙げる。McKinseyの調査では、AIエージェントを試している組織が62%ある一方、AIそのものを広げ始めた組織は3分の1ほどだった。利益への効き目を実感しているのは39%にとどまる。

ターミナルが消えるとも、シーマンは言っていない。大半の作業はこうした多人数の場へ移る。ただし、腰を据えて一人で考え抜く時間は、これからもターミナルに残るという読みだ。

関連記事:Gemini 3.7 Flash、コーディング性能を強化して公開 3.6 Flashとの違いと使える提供先を整理

一人と1台が個室で仕上げていた作業が、チャンネルの真ん中へ引き出された。見られながら書くことが当たり前になるのかどうかは、これから決まる。

[文/構成 by MEDIA DOGS編集部]

寄稿者

MEDIA DOGS 編集部
メディアドッグス株式会社のMEDIA DOGS 編集部チーム。インターネットマーケティングに約10年携わるメンバーで編成し、企画・取材・執筆から公開後の改善まで一貫して担当。「出会いを、設計する。」のもと、人と企業が正しく出会える場をつくるために、一次情報の確認とファクトチェックを徹底。情報をわかりやすく誠実に届け、読者の疑問を解決します。

コメントはこちら

*
*
* (公開されません)

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)

ライフハック/実用

More

グルメ

More

エンタメ

More

社会/ニュース

More

旅行/スポット

More

ファッション/ビューティー

More
Return Top