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會田祥、グランドフィナーレ福岡2026で優勝 全盲のパラクライマー、シリーズ5戦4勝の経歴

會田祥、グランドフィナーレ福岡2026で優勝 全盲のパラクライマー、シリーズ5戦4勝の経歴

時間がない人向けの30秒で理解ゾーン

全盲のパラクライマー、會田祥(30)=三井住友海上あいおい生命=が11月6日、福岡県飯塚市の筑豊緑地公園で行われたワールドクライミング パラシリーズ福岡大会の男子B1クラスで優勝した。スペインの選手と同じ高さに並び、登った時間の差18秒で上回った。今季のシリーズは5戦4勝で締めくくった。

福岡で今季4勝目、同じ高さを18秒差で制す

福岡大会は、11月5日から8日まで開かれる「ワールドクライミング グランドフィナーレ福岡2026」の中で、国別対抗戦と同時に行われた。主催は国際競技団体のワールドクライミングと大会組織委員会、日本パラクライミング協会。パラクライミングは11月5日に予選、6日に決勝があり、2026年のパラシリーズ全5戦の最終戦にあたる。パラシリーズの大会が日本で開かれたのは、これが初めてだった。前年の2025年10月にも、同じ筑豊緑地公園でパラクライミングの国際大会が開かれている。

種目はリード。12メートル以上の壁を6分以内にどこまで登れるかを競い、最後に保持したホールドの番号が記録になる。予選は會田とスペインのフランシスコ・ハビエル・アギラル・アモエドが首位で並んだ。

決勝でも2人の争いは続く。會田は39番目のホールドを保持して次の動きに移ったところまで進み、記録は「39+」。40手目となる最後のホールドに触れたものの保持できず、完登はならなかった。アギラル・アモエドも同じ39+で並び、勝負は所要時間の比較にもつれ込んだ。會田は5分08秒、アギラル・アモエドは5分26秒。18秒の差で會田が金メダルとなった。3位は27+のスペインのギジェルモ・ペレグリン・ゴメスで、上位2人とはホールド10個以上の差がついた。

視覚障害の最も重いB1クラスの選手は、下にいる「サイトガイド」から無線でホールドの位置や形を聞きながら登る。この決勝では、登り始めて2、3個目のホールド付近でその無線機が通信できなくなった。サイトガイドの田中星司は下から大声で指示を出す方法に切り替え、會田はその声を頼りに登り続けた。

パラクライミングは、通常のスポーツクライミングと同じ壁とルートで行われる。障害の種類と程度でクラスが分かれ、視覚障害は3クラス、身体機能の障害は7クラス。會田が出場するB1は、視覚障害の中で最も程度が重いクラスにあたる。福岡大会では男子B2クラスで日本勢が表彰台を独占するなど、會田以外の日本代表も最終戦でメダルを重ねた。

決勝の途中で無線が途切れる場面も

競技後、會田は無線が切れた場面について「まだ下の方だったんで、地声も半分聞こえますから」と話した。田中も、無線が不通になって大きな声を出すことになったが、そういうトラブルがあっても頑張れたのが良かったという趣旨を語っている。

完登を逃した最後の一手については「奥行きが足りてなかった」と分析した。時間差での決着には、点数やカウントバック(前のラウンドの成績で順位を決める方法)で差をつけた方がすっきりしたという考えも口にしている。

それでも今季5戦4勝の成績には「十分な結果」と答えた。日本の観客の前で登れたことにも大きな意味があったと話し、パラリンピックの正式種目になるタイミングで競技に関われていることを「ラッキーだったかな」と表現した。

2026年パラシリーズの成績

5戦4勝の内訳は次のとおり。ワールドクライミングと所属先の三井住友海上あいおい生命の発表をもとにまとめた(日付は現地)。

大会日程會田の成績
第1戦 ソルトレイクシティ(米国)5月15〜16日優勝(決勝で最高高度)
第2戦 インスブルック(オーストリア)6月15〜16日優勝(決勝で唯一の完登)
第3戦 ラヴァル(フランス)8月28〜29日準優勝(決勝33+)
第4戦 群山(韓国)10月29〜30日優勝(決勝48)
第5戦 福岡(日本)11月5〜6日優勝(決勝39+、5分08秒)

唯一敗れたのが8月のラヴァル大会だった。アギラル・アモエドが38番目のホールドまで達し、33+に終わった會田は準優勝。ワールドクライミングは、アギラル・アモエドが2022年以降のすべての大会で會田に次ぐ2位だったと伝えており、2022年以降で初めて立場が入れ替わった。

予選では5戦とも1位通過(福岡はアギラル・アモエドと首位タイ)だった。5月のソルトレイクシティ大会は予選の2ルートをどちらも完登し、6月のインスブルック大会では決勝で唯一の完登者になっている。

ラヴァルでの敗戦から2か月後、會田は結果で答えを出す。10月の群山大会は決勝で48の高度を記録して優勝し、そのまま日本開催の最終戦でも再びアギラル・アモエドを退けた。年間を通じて、同じスペインのライバルとの一騎打ちが続いたシーズンとなった。

2歳で診断、17歳で全盲に

會田は1996年8月14日、山梨県生まれ。2歳で先天性のレーベル黒内障と診断され、17歳で視力を失った。

クライミングとの出会いは9歳のころ。パラクライミングの新聞記事を見た母親に勧められ、母親と一緒に始めたと語っている。小学生時代は地元のサッカーチームにも所属していた。その後は山梨から都内の盲学校へ進み、グランドソフトボールやゴールボールも経験しながら、クライミングは続けた。

世界選手権では2012年、当時の王者だった小林幸一郎を抑えてB2クラスで初優勝した。それ以降に出場した世界選手権はすべて制し、優勝は6度を数える。2019年まではB2クラス、2021年からはB1クラスでの優勝だ。直近の2025年ソウル大会でも男子B1クラスで優勝し、この成績で文部科学大臣のスポーツ功労者顕彰を受けたことが2026年8月に発表された。

サイトガイドの田中星司は1978年、千葉県生まれ。28歳でクライミングを始め、専門ジムでの勤務を経てクライミングスクールを運営している。別の日本人選手のサイトガイドをしていた縁で會田と知り合い、2022年ごろから會田のガイドを務める。會田は、自分の理想は自己完結するクライミングだと語ってきた。福岡大会の後も、田中の普段の指示について「短く簡潔なんで、聞きやすかったですね」と話している。

2028年ロサンゼルスで正式競技に

パラクライミングは2028年のロサンゼルス・パラリンピックで初めて正式競技になる。行われるのは8つのクラスで、男子B1クラスもその1つに入った。

會田は福岡大会の後、2年後に向けて、せっかくなら完登したいという目標を挙げ、トレーニングを積んで準備していく考えを示した。けがなく健康に過ごしていきたいとも話している。2027年はパラシリーズに加え、チェコのブルノで世界選手権が予定されている。

世界選手権で勝ち続けてきた全盲のクライマーが、初めてのパラリンピックへ向かう。ロサンゼルスまで、あと2年。

[文/構成 by スポーツ担当ライター 疾風(HAYATE)]

寄稿者

疾風(HAYATE)
スポーツニュースサイトでの執筆を経て、ゴルフ、競馬、大相撲、フィギュアスケート、陸上など、競技の枠を越えてスポーツ記事を書いてきたWEBライター。経験は6年。大会結果や記録、番付、レース展開など、数字と公式記録を土台に「何がすごかったのか」を整理する記事を得意としている。ルールや採点方式が分かりにくい競技でも、初めて観る人がその一戦を楽しめるよう、背景や見どころまでかみくだいて伝えることを心がけている。主な執筆分野は、ゴルフ、競馬、大相撲、フィギュアスケート、陸上、バスケットボール。

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