安青錦、相撲を取る稽古を再開 九州場所へ「余計な不安はなく、場所に臨めるのはいいこと」

時間がない人向けの30秒で理解ゾーン
大相撲の大関・安青錦(22)=安治川部屋=が10月29日、福岡県久留米市の安治川部屋の宿舎で、相撲を取る稽古を再開した。三段目力士を相手に21番取り、全勝。左足首と左足親指のけがの回復を優先して、9月の秋場所千秋楽を最後に相撲を取っていなかった。九州場所は11月8日、福岡国際センターで初日を迎える。
秋場所千秋楽以来、約1カ月ぶりに相撲を取った
再開の相手は三段目力士だった。安青錦は持ち味の低い姿勢からの攻めで、21番すべてに勝った。
番数は自分で決めていた。「慣らしていくために20番以上やろうと思っていた。体も動いていたし、悪くなかった」。稽古を終えた安青錦はそう話し、手応えを口にした。
けがの多かった1年を思えば、この日の意味は小さくない。故障が重なる悪循環が続いてきただけに、本人は「余計な不安はなく、場所に臨めるのはいいこと」と前向きに受け止めた。
師匠の安治川親方(元関脇・安美錦)は、残る心配として「あとは指の付け根の部分が大丈夫かどうか」と足の状態を気にかけた。
前日の10月28日は、部屋の若い衆を相手に胸を出して汗を流し、師匠の指導で鉄アレイを両手に持ったすり足にも取り組んだ。足の指に刺激を与え、重心の位置を確かめる狙いがあるという。本人は、本当はこの日に相撲を取るつもりだったが、疲れが下半身に来て取れなかったと明かしている。九州場所に向けては、夏場所前以来となる約半年ぶりの出稽古も計画しており、本人も久しぶりの出稽古に前向きな考えを示している。
関連記事:安青錦、鉄アレイを両手にすり足で下半身強化 九州場所へ約半年ぶり出稽古解禁へ
春場所の負け越しから続いた左足の故障
なぜここまで慎重だったのか。
始まりは3月の春場所だった。1月の初場所を新大関で制し、綱とりがかかった場所で左足を痛め、7勝8敗と初めて負け越した。場所後には左足小指の骨折が判明している。
かど番で迎えた5月の夏場所は、さらに状況が悪くなる。場所直前の5月6日、出稽古先の東京都中央区の荒汐部屋で左足首を痛め、稽古を切り上げた。夏場所は全休となり、7月の名古屋場所は関脇へ転落して迎えることになった。
ところが、ここから立て直す。名古屋場所の前、7月1日に愛知県日進市の安治川部屋で稽古した安青錦は、大関復帰に必要な10勝ではなく優勝を目指すと話していた。実戦から離れていた不安を口にしながらも、基礎運動を積んだ体の動きには自信を見せていた。
言葉どおりの結果を残す。西関脇で臨んだ名古屋場所は、左足首と左足親指のけがを抱えながら11日目に10勝目を挙げ、1場所での大関復帰を決めた。千秋楽は本割で関脇・熱海富士に敗れたものの、大関・霧島を加えた三つどもえの優勝決定戦を制し、3度目の優勝を飾った。
8月30日まで続いた夏巡業では患部の様子を見ながら相撲を取る稽古を控え、基礎運動を中心に調整した。8月31日の秋場所番付発表の記者会見では、大関復帰について「特別な思いはない。上を目指す気持ちは変わっていない」と語り、足の状態は「少しずつ良くなっている。やれることをやってきたから、それに対する不安はない」と説明した。
9月の秋場所は東大関の2番目の位置で出場した。左足首の影響で関取との稽古を避ける異例の調整で臨み、4日目から伯乃富士、豪ノ山、藤ノ川に3連敗。休場も心配されるなか、そこから8連勝で横綱・大の里に追いついた。9月27日の千秋楽は11勝3敗同士の相星決戦となったが、突き出しで敗れて11勝4敗。2場所連続4度目の優勝はならなかった。
千秋楽の後、安青錦は、横綱の流れになって自分の相撲が取れなかったと敗戦を振り返った。それでも、最後まで優勝を争い、やれることはできたと前を向いた。
秋場所後も慎重な姿勢は続いた。10月7日、神奈川県海老名市で行われた秋巡業では、左足の不安から関取との申し合いを行わず、四股などで汗を流すにとどめていた。その日の言葉は「巡業後半で体が作れているなら取ってもいいと思う」。相撲を取る稽古の再開まで、千秋楽から1カ月あまりを要した。
2026年の本場所の成績は次のとおり(日本相撲協会の公式記録より)。
| 場所 | 地位 | 成績 |
|---|---|---|
| 初場所(1月) | 西大関 | 12勝3敗・優勝 |
| 春場所(3月) | 東大関 | 7勝8敗 |
| 夏場所(5月) | 西大関 | 全休 |
| 名古屋場所(7月) | 西関脇 | 12勝3敗・優勝 |
| 秋場所(9月) | 東大関 | 11勝4敗 |
東の大関筆頭で臨む九州場所
10月26日に発表された九州場所の新番付で、安青錦は東大関に座った。秋場所の2番目から序列を一つ上げ、大関の筆頭となる。横綱は東が大の里、西が豊昇龍。大関は安青錦のほか、西に琴櫻、東の2番目に霧島が並ぶ。
九州場所は11月8日に初日を迎え、11月22日に千秋楽を迎える。会場は福岡国際センター。秋場所で6度目の優勝を果たした大の里には2場所連続の優勝がかかり、安青錦は名古屋場所以来となる4度目の優勝を目指す。
10月27日には、大の里、豊昇龍とともに福岡市役所と福岡県庁を表敬訪問した。安治川部屋の九州場所の宿舎は久留米市にあり、稽古もそこで重ねている。
関連記事:大の里・豊昇龍・安青錦が福岡市役所を表敬、九州場所へ 大の里はラーメンを楽しみに
初優勝の地・福岡へ ウクライナ出身の大関
九州場所は、安青錦にとって初優勝の場所でもある。2025年の九州場所は新関脇として迎えた。初土俵から所要13場所での新関脇は、年6場所制が定着した1958年以降で最も速い昇進(幕下付け出しを除く)で、初土俵から負け越しなしでの新関脇は1991年五月場所の曙以来だった。その場所、東関脇として12勝3敗で並び、優勝決定戦で横綱・豊昇龍を破って初めて賜杯を抱いた。ウクライナ出身力士として初の幕内優勝で、場所後に大関昇進を決めている。
日本相撲協会の公式プロフィールでは、出身地はウクライナ・ヴィンニツャ。本名はヤブグシシン・ダニーロで、身長182センチ、体重142キロ。得意は右四つ、寄り。2023年九月場所で初土俵を踏み、序ノ口と序二段で続けて7戦全勝優勝を飾った。
番付を駆け上がる速さも目を引く。2024年十一月場所で新十両、2025年三月場所で新入幕、2025年九月場所で新三役となり、2026年一月場所で大関に昇進した。序ノ口から大関まで2年あまり。新入幕からは三賞の受賞が続き、幕内優勝は3回を数える。
1年前、福岡で手にした初めての賜杯から、この1年でけがと大関陥落、そして復帰を経験した。相撲を取る稽古を再開した22歳の大関は、計画する出稽古で関取衆とも胸を合わせ、11月8日の初日に向けて仕上げを進める。
[文/構成 by スポーツ担当ライター 疾風(HAYATE)]















































































コメントはこちら