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那須川天心、9・27井上拓真戦でパフォーマンス封印 人生初のリベンジへやられるリスク承知でKO狙い

那須川天心、9・27井上拓真戦でパフォーマンス封印 人生初のリベンジへやられるリスク承知でKO狙い

時間がない人向けの30秒で理解ゾーン

WBC世界バンタム級1位の那須川天心(28)=帝拳=が9月14日、東京・新宿区の帝拳ジムで公開練習を行った。9月27日に前回と同じ会場のリングで再び向き合う王者・井上拓真(30)=大橋=への挑戦へ、リング上の余計な仕掛けを封印すると明言。やられるリスクを承知で前に出て、KOを取りにいく構えだ。

手の内を隠した公開練習 スパーリングは見せず

この日の公開メニューは、シャドーボクシング、那須川がキックボクシング時代に師事し、初黒星後の今年1月に再びタッグを組んだ葛西裕一トレーナーを相手にしたミット打ち、そしてサンドバッグ打ち。恒例だったスパーリングは、今回は報道陣の前で行わなかった。

理由を問われた那須川は「もうだいぶ見せたんで、もういいかなって思います」と短く説明した。ジムには井上陣営から3人が視察に訪れており、手の内をこれ以上開くつもりはなかった。

公開された動きからは、視察側も変化を読み取っている。大橋ジムの北野良トレーナーは、前回と違うイメージで重心も下げており打ち合いを想定しているのではないかと見た。井上拓真のいとこで元日本・WBOアジアパシフィック・スーパーライト級王者の井上浩樹氏は、地に足がついた、捨てるものがないという覚悟の力で踏み込めるようになったと評した。派手さより、当たる形をつくる作業に時間を割いてきたことがうかがえる練習だった。

相当な疲労があったのでそこを披露するわけにはいかない、と那須川は語った。そのうえで、疲れて見えたのでは、という質問には、周りの見方と自分の体感は全然違う、と返している。疲労がたまった体をそのまま晒すことも、この日は避けたということになる。

「もう二度と手は回せない」 あのぐるぐるジャンプを封じる

前回の井上戦、那須川は1回終了のゴングでコーナーに戻る際、両手をぐるぐると回しながら跳び、自分の優勢をアピールした。ファンの記憶に残る場面だ。その仕掛けを、今回は使わない。

「もう二度と手は回せないでしょうね」

那須川はそう言い切った。理由は単純で、一瞬でも集中が切れる隙をつくりたくないから。試合のどこにも切れ目を置かない、という宣言だった。

葛西トレーナーの方針も同じ方向を向く。ボクシングに無駄な動きはいらない、パフォーマンスはさせない、と明言したうえで、那須川のサービス精神そのものは認めている。そうした見せ方は王者になってからやればいい、今回は勝つことだけに集中した方がいい――。陣営としての線引きが、公開練習の場ではっきり示された。

前回、那須川が手を回したのはまだ試合が序盤の時点だった。当時は陣営の粟生隆寛トレーナーから「調子に乗るな」と怒られたという。だが、そこから流れを引き寄せたのは井上の方だった。

前回は0-3判定 数字で見る2人の距離

2025年11月24日、東京都江東区のトヨタアリーナ東京で行われたWBC世界バンタム級王座決定戦。序盤は那須川のスピードに井上が手を焼いたものの、3回以降は井上が前に出続け、右ストレートと接近戦の右アッパーで主導権を握った。判定は0-3。那須川はプロボクシング8戦目で初黒星を喫した。

項目那須川天心井上拓真
年齢・所属28歳・帝拳30歳・大橋
プロ戦績9戦8勝(3KO)1敗24戦22勝(5KO)2敗
2025年11月24日の採点112-116、112-116、111-117116-112、116-112、117-111
9月27日の立場挑戦者(WBC同級1位)王者(2度目の防衛戦)

那須川は2026年4月11日、元2階級制覇王者のファン・フランシスコ・エストラーダを9回終了TKOで退け、指名挑戦権を手に入れた。エストラーダ陣営がコーナーで棄権を申し入れての決着だった。一方の井上は5月2日、5階級制覇を狙った井岡一翔から2度のダウンを奪って大差の判定勝ち。初防衛を済ませている。

テーマは「キレキレ」ではなく「ヌルヌル」

再戦に向けて那須川が掲げるテーマは、ひとことで言えば「ヌルヌル」。キレキレではなく、ヌルヌルだ。

本人の説明によれば、動きに節目をつくらず、ずっと集中している状態を指す。3ラウンドだけ強くても、そこで集中が途切れればもう一度入り直すのは難しい。だから抜けない。その感覚を日々の練習で積み上げてきたという。

前回の敗因を、那須川は技術より集中の持続に置いている。スピードで上回った時間帯があっても、3回以降に押し込まれ続けた12ラウンドの総量で負けた。ならば変えるべきは、瞬間の速さではなく、切れ目の消し方になる。

ぐるぐるジャンプの封印は、この「ヌルヌル」と地続きだ。パフォーマンスとは、つまり試合から一度降りる時間のこと。その数秒をなくすと決めたから、手は回せない。

やられるリスクを承知で刺しにいく

それでも那須川が口にするのは、判定での勝ちではなくKOだ。

「KOしたい」

前に出て刺しにいく、と那須川は表現した。相手の射程に踏み込めば、自分も打たれる。やられるリスクが高いことも念頭に置いている、と認めたうえで、それでも取りにいくと言い切った。やられる覚悟は、やる覚悟のある者にしか持てない――。本人の言葉は、そうした趣旨だった。

那須川は囲み取材で、自信を持って100%勝てるかと言われたらそう思えない自分もいた、と明かしている。そのうえで「ひっくり返す心意気でずっと練習してきた」。前回と同じ相手、同じ場所、同じ舞台。逃げ場のない条件を、本人はむしろ面白がっている。

一番崖っぷちでピンチな状況だからこそ、ひっくり返すとおもしろい。そんな趣旨の言葉も残した。キックボクシング時代から負けを知らなかった選手が、28歳で初めてリベンジという課題に向き合う。

関連記事:井上拓真、9・27那須川天心戦は「これで最後」 「自分に負けて他の団体に」と再々戦を言わせない完封宣言

9月27日、トヨタアリーナ東京 答え合わせの日

一戦は9月27日、東京都江東区のトヨタアリーナ東京で行われる。午後4時30分開始の興行『Prime Video Boxing 16』のメインイベントで、WBC世界バンタム級タイトルマッチ12回戦。Amazonのプライム・ビデオが独占ライブ配信する予定だ。

同じ興行では、坪井智也とリカルド・マラジカのWBC世界スーパーフライ級王座決定戦、西田凌佑とサム・グッドマンのIBF世界スーパーバンタム級暫定王座決定戦、松本流星とラッセル・アコスタのWBO世界ミニマム級暫定王座決定戦も組まれている。世界戦が並ぶ一日の最後に、10カ月前と同じ2人がリングで向き合う。

那須川は公開練習で、前の試合からこの日に向けて一生懸命生きてきた、やるべきことはやってきた、と話している。本人が「あと2週間。答え合わせをする日が迫っている」と語った日から1週間が過ぎた。その日は、もう目前だ。

手は回さない。仕掛けもしない。残したのは、踏み込んで打ち合う覚悟だけだ。

関連記事:那須川天心、井上拓真との再戦が9月27日に決定 プロ初黒星からの雪辱懸けるバンタム級世界戦

[文/構成 by スポーツライター 久遠(KUON)]

寄稿者

久遠(KUON)
WEBライター(主にスポーツ記事)経験7年。スポーツ、格闘技が好きで、ボクシング世界チャンピオンが主宰するジムに4年間在籍。自分でも練習を重ね、”3分”の過酷さと濃さを体で知る。観戦もライフワークで、会場には年4回ほど足を運ぶ。選手目線の実感とファン目線の熱量、その両方を武器に、試合の見どころやリングのリアルをライター経験を活かしてわかりやすく伝えます。

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