安青錦、藤ノ川に敗れ3連敗で3勝3敗 秋場所6日目、初日から3連勝の大関が急失速

時間がない人向けの30秒で理解ゾーン
大相撲秋場所6日目の9月18日、東京・両国国技館で大関安青錦が新関脇藤ノ川に寄り切られ、3連敗で3勝3敗となった。初日から3連勝した後、4日目から白星が止まる。5勝1敗で並ぶ優勝争いの先頭とは、6日目を終えて2差が開いた。
25秒1に及んだ攻防、最後はもろ差しから寄り切られた
日本相撲協会の公式記録によると、結びの一番の一つ前に組まれたこの取組の決まり手は寄り切り。勝ったのは西関脇の藤ノ川で、敗れたのが東大関の安青錦だった。これで藤ノ川は4勝2敗、安青錦は3勝3敗。
内容は際どかった。182センチ142キロの安青錦は、177センチ125キロと幕内では小柄な藤ノ川に対し、頭をつけて低く構える。右を差されながらも左の上手を引き、そこから左に2度、切り返しを仕掛けた。いずれも足を外されて決まらない。
さらに右手を伸ばして渡し込みを狙う。その瞬間を右からすくわれ、体勢が崩れた。最後はもろ差しを許し、そのまま土俵の外へ運ばれる。25秒1に及んだ攻防に、館内は大歓声に包まれた。
皮肉な結末でもあった。安青錦は3日目の琴勝峰戦を渡し込みで制している。その渡し込みを狙った一手が、今度は自分の体勢を崩す引き金になった。決まり手の寄り切りにしても、過去6場所の取組で最も多く使ってきた自分の型だ。公式サイトの決まり手の傾向では、この6場所の白星48のうち19が寄り切りで、全体の4割を占める。
初日から3連勝、そこから3連敗 6日間の星取り
公式の星取表で6日間を並べると、勝ち方と負け方の変化がはっきり出る。
| 日付 | 相手 | 勝敗 | 決まり手 |
|---|---|---|---|
| 初日(9月13日) | 琴栄峰 | ○ | 寄り切り |
| 2日目(9月14日) | 高安 | ○ | 寄り切り |
| 3日目(9月15日) | 琴勝峰 | ○ | 渡し込み |
| 4日目(9月16日) | 伯乃富士 | ● | 押し出し |
| 5日目(9月17日) | 豪ノ山 | ● | 押し倒し |
| 6日目(9月18日) | 藤ノ川 | ● | 寄り切り |
前半3日は前頭筆頭と前頭二枚目を相手に、いずれも組み止めてから前に出た。ところが4日目の小結伯乃富士戦は押し出し、5日目の前頭三枚目豪ノ山戦は押し倒しで、突き押しに後退させられている。組む前の段階で圧力に負ける形が続き、6日目は組んでからも決め手を欠いた。
日本相撲協会の八角理事長(元横綱北勝海)は、6日目の一番について「あのまま行けると思ったけど、捕まえる力がない」と指摘。「安青錦がああいう形で負けるのって、ないんじゃないの。ショックだろうね、あの体勢でこの負け方は」と続けた。
左足3カ所の骨折を抱えて迎えた大関復帰場所
安青錦の左足には、名古屋場所で負った故障の影響が残る。師匠の安治川親方(元関脇安美錦)によると、名古屋場所8日目の隆の勝戦で左足親指の2カ所を骨折し、場所後の診察で左足首内側の骨折も判明した。合わせて3カ所。「靱帯などは別で、骨折は動かさなければ治るまで1カ月」と診断されていたという。
それでも夏巡業には超音波治療器を持ち込んで参加した。関取衆との稽古ができないまま初日を迎えている。八角理事長も、場所前に関取衆と相撲を取れていなかった点を挙げて「稽古不足という話でしょう」と述べた。
安青錦は1年前の2025年9月場所で新三役に上がり、2026年1月場所で大関へ昇進した。ところが3月場所は7勝8敗、5月場所は全休に終わり、大関の座を明け渡す。関脇で臨んだ7月の名古屋場所で12勝3敗を挙げ、大関特例復帰と3度目の幕内優勝を同時に決めた。今場所はその翌場所、東大関としての復帰場所にあたる。
関連記事:安青錦、名古屋場所の巴戦を制し3場所ぶり3度目の優勝 大関特例復帰と同時のVは史上初
ウクライナ・ヴィンニツャ出身の22歳は、2023年9月場所の初土俵から所要19場所で通算150勝48敗15休。幕内では10場所で90勝36敗15休、勝率は7割を超える。それだけに、3日続けて土俵を割る展開は経験の少ないものだった。取組後、本人は「もう少し早く自分から攻められれば良かったですね」と振り返っている。
京都の21歳が安青錦から初白星 「組んでも引かない」
勝った藤ノ川は、伊勢ノ海部屋所属の21歳。本名は齋藤成剛で、京都市西京区の出身だ。2023年1月場所の初土俵から、若碇のしこ名で番付を上げ、2024年11月場所で新十両に昇進した。同じ場所で十両へ上がったのが、当時20歳の安青錦だった。
新入幕の2025年7月場所は前頭十四枚目で10勝5敗、敢闘賞を受けた。続く9月場所は前頭九枚目で6勝9敗と負け越したが、そこからの歩みは着実だった。2025年11月場所に前頭十二枚目で9勝、2026年1月場所は前頭七枚目で10勝、3月場所は前頭二枚目で8勝を挙げて技能賞。5月場所こそ前頭筆頭で7勝8敗と足踏みしたが、7月場所は同じ番付で8勝7敗とし、殊勲賞を受けて今場所の新関脇をつかんだ。
安青錦とは幕内で2度当たり、いずれも敗れていた。3度目で初めて白星を挙げたことになる。得意は押し。組んでからの相撲は本来の型ではないが、この日は違った。「絶対に組んでも引かないと心に決めていた。最後まで諦めなかった」。取組後、そう明かした。
流れを変えた右からのすくい投げも、偶然の一手ではなかった。公式サイトの決まり手の傾向を見ると、藤ノ川が過去6場所の46勝で最も多く使ってきたのは押し出しとすくい投げで、いずれも8本ずつ並ぶ。押し相撲の力士という印象が強いが、崩れた体勢から投げで勝負を戻す形も持っている。初土俵からの通算は147勝91敗3休、幕内は8場所で62勝49敗。
八角理事長は藤ノ川の相撲を「良い相撲」と評価し、「しっかり稽古をやっている」と付け加えた。次に向けては「まだまだ序盤戦。中盤戦も思い切ってやっていきたい」と本人が話す。7日目は返り小結の大栄翔と顔を合わせる。
1敗に7人がひしめく混戦、7日目は熱海富士戦
6日目を終えた時点で、5勝1敗の1敗勢は7人。横綱大の里、大関琴櫻、関脇熱海富士、前頭三枚目美ノ海、前頭六枚目朝乃山、前頭九枚目宇良、そして新入幕の前頭十六枚目寿之富士が並ぶ。もう一人の横綱豊昇龍は初日から休場している。
大の里は6日目に豪ノ山をはたき込んで5勝目。1敗は4日目に高安から金星を配給した一番だけだ。琴櫻は隆の勝を突き出し、熱海富士は琴勝峰を押し出して、それぞれ星を伸ばした。一方で横綱昇進を目指す大関霧島は義ノ富士に上手投げで敗れ、2敗目を喫している。
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2差を追う安青錦にとって、残り9日は長い。名古屋場所に続く2場所連続優勝は遠のいた。ただし、今場所から大関に戻ったばかりなので角番ではなく、仮に負け越しても即座に大関から落ちることはない。その場合は次の九州場所が角番になる。
7日目の対戦相手は、1敗で優勝争いに加わる関脇熱海富士。大関昇進を目指す相手との一番になる。八角理事長は安青錦に「頑張るしかない。これも経験だと思って」と言葉を送った。本人も前だけを見る。「終わったことを考えても仕方がない。結果を変えることはできないので、また明日から」。支度部屋での表情は硬かったが、言葉は次の土俵へ向いていた。
[文/構成 by スポーツライター 久遠(KUON)]






































































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