GMO熊谷社長の会見、涙の場面にXで「野々村議員みたい」の投稿 「被害者が一番泣きたい」も、語った中身と質疑のやり取り

時間がない人向けの30秒で理解ゾーン
GMOインターネットグループの熊谷正寿会長兼社長が11月2日の会見で涙を見せ、Xには「野々村議員みたい」とする投稿や、泣きたいのは被害者だとする批判が出た。涙が報じられたのは、理念とセキュリティ事業を語る場面。この記事は涙の場面とXの受け止めに絞って伝える。
熊谷氏が涙を見せたのは、理念とセキュリティを語る場面
謝罪の内容、役員報酬の減額、流出した情報、補償の中身は別の記事にまとめている。
不正アクセス問題の発覚後、初めての記者会見だった。熊谷氏は2日午後3時半ごろ、東京都内の会見場に幹部とともに姿を見せ、100人以上の報道陣の前で「お客さまをお守りすることができず、誠に申し訳ありませんでした」と陳謝した。報道によると、一言一言をかみしめるように話し、時折、目をきつく閉じて涙を浮かべたという。
では、どの話で涙を見せたのか。
場面を細かく伝えた報道では、2か所が挙がる。1つ目は社是・社訓「GMOイズム」に触れたところで、「すべての目標はお客様の笑顔である」と述べて涙ぐみ、時折声を詰まらせた。2つ目は、2003年に参入した暗号化事業(認証局)を含むセキュリティ事業への思いを語った場面だ。「お客様のために情報を守れと言い続けてまいりました」と話すと、頬を涙が伝ったという。
熊谷氏は1995年からインターネット産業に携わり、31年になると説明した。その31年間で「儲かる」「儲ける」という言葉を一度も使ったことがないと述べ、社員に確認してほしいと呼びかける。利益については「目的ではなく結果としての利益で株主様も笑顔になる」と語り、「全グループ8300人、真摯に向き合い、解決せよ」と指示を出していることも明かした。
約1時間の説明の締めくくりで、熊谷氏は「犯罪者のツールになってるインターネットのまま、この業界から撤退し、あとは任せたよなんて言えません」と語った。続けて「僕は命かけて、この産業を多くの方の笑顔のツールにしてから死ぬつもりです」と述べ、話を終えている。
Xで広がった「野々村議員みたい」の投稿
Xでは、会見が続いていた午後4時台から涙の場面に触れた投稿が見られた。
午後4時13分のあるユーザーの投稿は「熊谷社長が野々村議員みたいになってきて」と書き、「我々は何を見せられているんだ」と続けた。いいねは2日午後7時すぎの時点で3万件を超え、表示回数は約300万に上る。
野々村議員とは、野々村竜太郎元兵庫県議のことだ。2014年、政務活動費をめぐる記者会見で泣きながら釈明し、その映像が広く知られた。
午後5時すぎには「野々村竜太郎の号泣会見を彷彿させる」とする別の投稿も出て、こちらのいいねは同じ時点で約1000件だった。
いずれも投稿者の受け止めで、2つの会見の中身を同列に比べられるものではない。
「被害者が一番泣きたい」と「魂こもってて好き」
涙そのものを問題視する投稿もあった。「会見で説明責任をする立場の人は泣いてはいけないよね。被害者が一番泣きたいわけだから」。あるユーザーはそう書き、別のユーザーも、泣きたいのは被害者だという趣旨の投稿をしている。
この問題では、顧客情報の流出に加えて顧客資産の被害も起きた。熊谷氏自身も会見で「お客さまの資産が毀損する事故が発生した」と説明している。批判の投稿が問うのは、被害を受けた人がいる場での涙だ。
一方で、別の見方もある。熊谷氏の最近のX投稿にも触れたうえで「私は魂こもってて好きだけどね、こういう会見」と書いたユーザーがいた。
2日午後7時すぎの時点のいいねは、上の批判の投稿が42件と18件、「魂こもってて好き」が135件で、「野々村議員みたい」の3万件超とは開きがある。ただ、これは個々の投稿の数字で、どの受け止めが多いかを示すものではない。
Xで指摘された点を会見の映像と照らすと
Xでは涙のほかにも、会見の進め方や答えの中身を指摘する投稿が出た。会見の映像の字幕と照らすと、次のようになる。
| Xで指摘された点 | 映像で確認できた範囲 |
|---|---|
| 謝罪の会見でAIのプレゼンをした | あった |
| スライドをめぐる指示 | あった |
| 知見が出てこなかった | 第2部の題が「知見」 |
| 私の所に情報が来なかった | 趣旨どおりの発言あり |
| 会見資料に家族写真 | 本人の発言あり |
| AIが使われた証拠の問答 | 問答あり |
会見は3部に分かれ、不正アクセスの説明の後、第2部、質疑応答の順に進んだ。質疑に入るまでが約1時間だ。第2部は熊谷氏がパソコンを操作しながら座って約30分話し、理念に続けてAIの発展とサイバー犯罪の脅威を語っている。涙が報じられた2つの場面も、この第2部にあたる。
スライドの場面は質疑で起きた。女性記者がグループ全社の脆弱性検査について、以前から検討していたのかなどを尋ねると、熊谷氏は説明に使った資料の表示を求めたが、画面がなかなか出ない。「時間かかるなら時間かかるって言って」「ちゃんと映して」とスタッフに指示し、「お待たせして申し訳ありません」と記者に謝った。結局、準備の間に次の質問へ移り、後から戻って答えている。
「知見」については、Xに「出てこなかったもの」として「今回の件で得られた知見」を挙げる投稿があった。第2部は進行役が「本件を踏まえ、今回得た知見」の説明と紹介した時間で、そこで語られたのが理念とAIの話だった。一方で反省も口にしており、侵入を防げない前提で早く食い止めて回復する「レジリエンス」に変わるのが「遅れていたということが最大の問題点」と述べている。
「私の所に情報が来なかったから」は、投稿者の要約だが趣旨は近い。テレビ東京の記者が、指摘を対策に生かせなかった背景を問うと、熊谷氏は「結論、私のところにはエスカレーションされていなかったというのが事実でございます」と答えた。「責任逃れのために申し上げてるわけではありません」とも続けている。
では誰が報告を受けたのか。日本経済新聞の記者の問いに、当時からグループ副社長を務める伊藤正氏は、幹部では事業側の自身らとシステム側の担当が聞いていたと説明した。4回の緊急パッチで対応がついたと判断し、さらに深い対応は開発の優先順位の中で進めることにしたという。個人端末が影響を受ける可能性については「その当時にはそこはなかった」と答えた。
家族写真は、熊谷氏自身の言葉に出てくる。質疑の途中で「さっきのちょっとパワーポイント出して」と求め、「僕の最後の家族の写真」の1つか2つ前の資料を映すよう指示した。字幕から分かるのはここまでで、写真の中身は字幕だけでは分からない。
AIの問答もあった。テレビ朝日の記者が、今回の攻撃にAIが使われた証拠はあるのかと尋ねると、熊谷氏は「AIが使われた証拠はございません」と回答。攻撃者が使っていないということも「多分ないだろう」としたうえで、「AIのせいにはしていません」「うちの事件と先ほど私の第2部は全く違う話」と述べた。Xの投稿にある「使われなかった証拠もありません」という言い方そのものはない。後の質問には、使ったかどうかは分からず、この時代に使わないはずがないというのは「想像です」と補足している。
「命の砂時計」とAIに時間を割いた理由
なぜ、AIや理念の説明にそこまで時間をかけたのか。質疑では記者からこの点を問われた。
熊谷氏の答えは「会社は理念によって成り立ってるからです」。続けて「命の砂時計を何に捧げてるのかというのが人生であり、私はインターネットとこのグループに捧げてます」と語った。AIの登場で、安心安全なインターネットとは言えない状況になった。そのAIがもたらす世界に気付いてほしかった、というのが本人の説明となる。
熊谷氏はこれまでSNSなどで「認知戦」が起きていると発信してきた。会見では、騒ぎの発端になった最初の反応アカウントを分析して「心理戦の状況を感じた」と述べたが、これは個人の見解で、会社の見解ではないと強調している。
犯罪組織によるAIを使った無差別攻撃は、一個人や一企業では対応が難しいとも語った。機会があれば高市政権に「サイバーイージス構想」を話したいとし、これはGMOとしての意見ではなく私見だと断った。海外からの悪いIPアドレスを検知してキャリアに停止を依頼する制度で、「総務省がキャリアに言って」止めればよいという。通信の秘密との関係で批判を受けるのは分かっているとも話している。
笑顔の投稿から会見まで、残る検証
Xでの受け止めには、会見までの流れも関わっている。
10月27日、熊谷氏は国際刑事警察機構(INTERPOL)に相談したと投稿し、ロゴを背景にした笑顔の自撮り写真を添えた。翌28日には東京大学での講義について問われ、「お約束通りきちんと講義してきましたよ」と答える投稿にも笑顔の写真を付け、不謹慎だとの批判を受ける。29日に被害者への配慮不足を謝罪したものの、写真は「脅迫に屈しない姿勢を示す」として当面掲載すると説明した。
会見ではこの写真を含むSNSの投稿3点について、被害に遭った人への配慮が欠けていたと謝罪している。そのうちの1点は、グループの陸上部をめぐる投稿者へのコメントだった。
関連記事:GMO熊谷代表、不正アクセス問題で陸上部は「何の影響も無し」 ニューイヤー駅伝王者の存続を心配する声に、主なメンバーと今後の大会日程
問題の解明はこれからだ。報道によると、警視庁は不正アクセス容疑で捜査本部を設置した。社内の情報共有の仕組みについて、熊谷氏は「改善すべく議論をしている」と説明した。役員報酬の減額をめぐっては、安田昌史副社長が「検証の結果を踏まえて改めて経営責任のあり方を検討する」と述べている。
補償と再発防止がどこまで進むのか。涙への受け止めとは別に、問われ続ける点だ。
[文/構成 by ライター 飯田タツヤ]







































































コメントはこちら