井上拓真、9・27那須川天心戦は「これで最後」 「自分に負けて他の団体に」と再々戦を言わせない完封宣言

時間がない人向けの30秒で理解ゾーン
WBC世界バンタム級王者の井上拓真(30)=大橋=が9月15日、横浜市内の所属ジムで練習を公開した。9月27日にトヨタアリーナ東京で挑戦者・那須川天心(28)=帝拳=を迎える2度目の防衛戦を前に、主催者が興行に掲げたキャッチコピー「これで最後だ」について問われた井上は「これで最後」と受け、完封して勝つと言い切った。三度目の対戦はないとの見立ても示している。
手の内は見せず、言葉だけを置いていった王者
井上が報道陣に見せたのは、シャドーボクシング1ラウンドとミット打ち1ラウンドだけだった。ミットの中身もジャブとワンツーが中心で、12日後に迫った世界戦の組み立ては最後まで伏せたまま。動きの切れは鋭かったものの、手札は一枚も開かなかった。
練習の抑制ぶりと、その後の言葉は対照的だった。
主催者はこの興行に「これで最後だ」というキャッチコピーを掲げている。その意味を問われた井上は「これで最後」と受け、「自分に負けて他の団体に」と続けて、那須川が敗れれば別団体の世界戦へ向かうのではないかとの見方を示した。もう一度やろうと言わせないだけの内容で勝つ、という意味だ。
狙う勝ち方もはっきりしている。前回は1、2回に中間距離から遠い距離での戦いでポイントを取られ、3回からプレスをかけてペースをつかんだ。今回はもうあの展開はない、と井上は言い切る。流れの中でKOは追うが、まずは完封して何もさせずに勝つ。自分にしかできない「打たせないで打つ」ボクシングで、何をやっても勝てないと思わせる内容にすると話した。合宿から始まった調整はスパーリングまで順調で、仕上がりは良いという。
自分にとっては防衛戦であり、預かっているものは何もない。井上はそう言って、簡単にはひっくり返らない壁の大きさを見せつけると続けた。
王座決定戦から10か月、二人がたどった道
前回の対戦は2025年11月24日、会場は今回と同じトヨタアリーナ東京だった。空位のWBC世界バンタム級王座を懸けた12回戦で、井上が116-112、116-112、117-111の3-0判定勝ち。序盤は那須川の速さに手を焼いたが、3回以降は前に出て右ストレートと左フックを当て続け、接近戦では右アッパーを連発した。
この一戦で、キックボクシングとMMAを含む格闘技の公式戦で無敗を続けてきた那須川に、初めて黒星がついた。プロボクシング転向から8戦目、初の世界挑戦での敗戦となる。
那須川は約4か月半後の2026年4月11日、元2階級制覇王者のファン・フランシスコ・エストラーダ(メキシコ)を9回終了TKOで下し、指名挑戦権を手に入れた。井上も5月2日の東京ドームで、5階級制覇を狙った井岡一翔を118-108、119-107、120-106の大差判定で退け、初防衛に成功する。双方が結果を出したことで条件がそろい、再戦は7月23日に正式発表された。
| 項目 | 井上拓真 | 那須川天心 |
|---|---|---|
| 年齢・所属 | 30歳・大橋 | 28歳・帝拳 |
| 戦績 | 24戦22勝(5KO)2敗 | 9戦8勝(3KO)1敗 |
| 9月27日の立場 | WBC世界バンタム級王者・2度目の防衛戦 | 指名挑戦者・世界戦2度目 |
| 前回対戦(2025年11月24日) | 3-0判定勝ち・王座獲得 | 0-3判定負け・プロ初黒星 |
| 直前の試合 | 2026年5月2日/井岡一翔に3-0判定勝ち | 2026年4月11日/エストラーダに9回終了TKO勝ち |
井上の2敗は、2019年のノルディーヌ・ウバーリ戦と、2024年10月13日に有明アリーナで堤聖也に0-3で敗れWBA世界バンタム級王座を明け渡した一戦だ。一度は世界から落ちた男が、那須川を破って王座に戻った。その経緯が、今回の強気な言葉の背中を押している。
関連記事:那須川天心、井上拓真との再戦が9月27日に決定 プロ初黒星からの雪辱懸けるバンタム級世界戦
視察し合った二つの公開練習
前日の9月14日には、那須川が東京・新宿区の帝拳ジムで練習を公開していた。シャドー2ラウンド、ミット打ち2ラウンド、軽いサンドバッグとクールダウンを1ラウンドずつ。スパーリングは見せず、「もうだいぶ見せたんで、もういいかなって思います」と説明した。両者とも、最後の公開の場で中身を隠した。
見に来ていたのは大橋ジムの面々だった。北野良トレーナーは「前回とまたちょっと違ったなっていうイメージ。重心を下げていて、打ち合いの想定なのかな」と分析し、前より前に出てくる印象だと付け加えた。鈴木康弘トレーナーは「しっかり汗もかいているし、力強いミットをやってるなっていう印象でした」と話す。井上のいとこで元日本スーパーライト級王者の井上浩樹は「いろんな意味で地に足がついたなっていう印象でした。かっこよくなったと思います」と評した。
翌15日は立場が入れ替わる。横浜での井上の公開練習には、帝拳プロモーション代表の浜田剛史氏と、那須川のトレーナーを務めるGLOVESジムの葛西裕一会長が足を運んだ。葛西は「やっぱり速いですよね。スピードだけじゃなくテンポも」と王者の質を認めたうえで、「完璧な崖っ縁だし、天心は行かざるを得ないというか、行かなくちゃいけないです」と前に出る意思を口にした。ポイント争いになるかと問われた場面では「できたら倒したいですよね。ボクシングは必ずKOを狙わないとダメと思うので」とKOへのこだわりも見せた。
那須川陣営はトレーナーが葛西に代わっている。鈴木トレーナーはその変化にも触れ、どんなボクシングで来ても対応できるとしたうえで、「めちゃくちゃ今、拓真は強いです」と言い切った。
「全部ひっくり返してやる」と書いた挑戦者
那須川は9月12日、自身のXに「全部ひっくり返してやるよ 世界ごとひっくり返してやる」と投稿した。14日の公開練習でその真意を問われ、これほど負け要素が多い試合もないと前置きしたうえで、そうした見方や思い込みごと覆したいのだと説明している。崖っ縁の状況でひっくり返すから面白い、という理屈だ。
自分への風当たりの強さも自覚している。ここまで叩かれるのかと感じる一方で、叩き甲斐があるのだろうとも受け止めていた。出る杭は打たれる、出過ぎた杭は打たれないという言い回しを引きながら、出過ぎても打たれると知った、試合では打たれないようにする、と修正点を挙げる。
強がりだけでもない。人生で初めてのリベンジ戦であり、自信を持って100パーセント勝てるかと言われれば、そう思えない自分もいた。そこをひっくり返す心意気でずっと練習してきた。那須川はそこまで口にしている。
9月27日、同じリングで出る答え
試合はWBC世界バンタム級タイトルマッチ12回戦で、9月27日午後4時30分開始の興行のメインイベントとして、東京都江東区のトヨタアリーナ東京で行われる予定だ。Prime Video Boxing 16の一戦として、Amazonのプライム・ビデオで独占ライブ配信される。
前回と同じ会場、同じ12ラウンド、同じ二人。違うのは、一方が王者としてベルトを腰に巻き、もう一方が指名挑戦者として戻ってきたことだ。井上が言う完封が実現すれば、三度目の対戦を求める声は出にくくなる。那須川が覆せば、バンタム級の勢力図は9月27日の夜から書き換わる。
那須川がこの先どの団体のベルトへ向かうのかは、本人も陣営も何も発表していない。他の団体という言葉はあくまで井上の見立てであり、現時点で決まった予定ではない。答えが出るのは、12ラウンドが終わってからになる。
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[文/構成 by スポーツライター 久遠(KUON)]










































































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