退職代行「モームリ」前社長に有罪判決 174人を弁護士へ違法あっせん、妻と法人も 東京地裁

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退職代行「モームリ」を運営していた「アルバトロス」の前社長、谷本慎二被告(37)に東京地裁が有罪判決を言い渡した。罪状は弁護士法違反で、退職を希望する利用者174人を弁護士2人へ有償であっせんしていたとされる。妻で元執行役員の志織被告(32)、法人としての同社にも判決が出た。
前社長に懲役2年、執行猶予3年の判決
東京地裁は8月28日、谷本被告に懲役2年、執行猶予3年の判決を言い渡した。求刑通りの内容だ。志織被告には懲役1年6月、執行猶予3年、法人のアルバトロスには罰金200万円が科された。いずれも求刑と同じ量刑となった。
林欣寛裁判長は、あっせんの対象が174人に上ったと指摘し「弁護士制度の公正円滑な維持運営に影響を与えかねない大規模かつ職業的な犯行」と述べた。「利益を優先するあまり、法令順守を軽視した」とも非難している。
起訴内容によると、2人は2023年6月から2025年2月にかけて、弁護士資格を持たないまま、勤務先との交渉が必要な退職希望者を弁護士2人に紹介した。紹介料は1人当たり1万6500円で、総額は約280万円に上る。この金は「労働組合への賛助金」や「アフィリエイト広告の業務委託料」といった別の名目で処理されており、名目を偽装した点が重い。
弁護士法は、資格を持たない者が報酬目的で法律事務を周旋する行為を禁じている(72条)。無資格の仲介がまかり通れば、依頼者の利益より紹介料が優先されかねない。あっせんを受けた弁護士側にも、こうした無資格の周旋者と提携してはならないとする規定(27条)があり、谷本・志織両被告と法人が問われた条文と、梶田・佐藤両被告が問われた条文は厳密には異なる。今回の事件が問われたのは、この一線だった。
谷本夫妻、成功から一転逮捕への道
谷本被告は神戸学院大を卒業後、大手前職を経て退職代行業界に参入した人物だ。2022年3月にモームリを立ち上げた。2年余りで相談件数2万8000件、退職代行の実施件数1万5000件突破という急成長ぶり。業界最大手の座を築いた。
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急成長の裏で、無資格のまま弁護士業務を仲介する仕組みが広がっていた。検察側の冒頭陳述によると、この仕組みは、アルバトロスと顧問契約を結んでいた弁護士法人オーシャン代表の梶田潤被告(45)の提案で始まったという。警視庁は2025年10月に家宅捜索に入り、押収資料から資金の流れを確認。2026年2月3日、谷本被告と志織被告を弁護士法違反容疑で逮捕した。志織被告はアルバトロスの部長職を経て執行役員を務めていた人物だ。
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東京地検は2月24日に2人を起訴した。5月26日の初公判で、谷本被告は起訴内容を認め「同業他社から聞き、自分たちもできるのではないかと考えた。違法性の認識はあったが、弁護士が言うならと安易な対応をしてしまい反省している」と話した。志織被告も「利用者の役に立ち、売り上げになればと考えた。グレーなお金だと思っていたが、深く考えていなかった」と語っている。紹介料による収入は、同社売上の1%に満たなかった。それでも裁判所の判断は厳しいものとなった。
あっせん先の弁護士2人、明暗が分かれた対応
174人が紹介された弁護士は2人いる。1人は先述した梶田被告だ。アルバトロスから85人の紹介を受け、紹介料約110万円を虚偽の名目で処理していたとして、東京地裁は6月5日に懲役1年6月、執行猶予3年、法人には罰金150万円の判決を言い渡した。岩見貴博裁判官は「弁護士の使命をはき違えたもので責任は重い」と指摘している。判決が確定すれば、弁護士法が定める欠格事由に触れ、弁護士資格を失う見通しだ。梶田被告は判決を不服として控訴しており、本記事の執筆時点で判決は確定していない。
もう1人は弁護士法人みやび代表の佐藤秀樹被告(49)だ。8月7日の初公判で起訴内容を認め、即日結審した。検察は懲役2年、法人には罰金200万円を求刑している。違法性の認識を問われた佐藤被告は「もちろんあった」と答え、「広告料を支払うのと紹介料を支払うことに大きな違いはないと考えた」と説明した。判決は10月7日に言い渡される。
佐藤被告の弁護側は8月7日の公判で、紹介された案件は適切に処理しており、依頼者を食い物にした事案とは異なると主張した。
営業再開のモームリ、新体制の今
アルバトロスはモームリのサービスを事件発覚後に一時停止し、4月から再開した。トップも交代している。4月1日付で代表取締役に就いたのは、広報担当だった浜田優花氏だ。
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同社は経営体制を改めたうえでの再開だと説明し、「関係法令を踏まえた業務運営に努める」としている。4月23日付のプレスリリースでは、外部専門家の助言を受けながら法令順守体制を高める方針も示した。逮捕からわずか2カ月足らずでのトップ交代。事業を続けるうえで、避けられない決断だった。
次の判決は10月、業界に残る課題
今回の判決は一審にあたる。谷本、志織両被告と法人が控訴するかどうかは、本記事の執筆時点で明らかになっていない。もう1人の弁護士、佐藤被告への判決は10月7日に予定されている。事件はまだ終わっていない。
退職代行は、意思表示を伝えるだけの業務にとどまる範囲なら弁護士資格は不要だ。だが、未払い賃金や残業代の交渉に踏み込むと、弁護士でなければ扱えなくなる。今回の事件は、その一線を越えた業者に司法がどう向き合うかを示した。業界最大手の有罪判決は、同業他社にも法令順守の重みを突きつける。
[文/構成 by MEDIA DOGS編集部]


































































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