若隆景、九州場所に出場決定 2場所連続全休から西十両5枚目で再起へ、休場理由と経緯

時間がない人向けの30秒で理解ゾーン
大相撲の十両・若隆景(31)=荒汐部屋=が、11月8日に福岡国際センターで初日を迎える九州場所に出場する。師匠の荒汐親方(元幕内・蒼国来)が11月4日の稽古後に明かした。7月に左太ももの「コンパートメント症候群」で緊急手術を受け、名古屋場所と秋場所を2場所続けて全休。番付は西十両5枚目まで下がり、ここから再起を図る。
師匠の荒汐親方「出場することが決まりました」
決定を伝えたのは11月4日、福岡での稽古を終えた荒汐親方だった。「先ほど本人と話をして、九州場所に出場することが決まりました」。親方はそう説明した。5日をめどとしていた判断は、その前日に出た。
若隆景が本場所の土俵に立つのは、小結で優勝した5月の夏場所以来になる。日本相撲協会の公式サイトに載る九州場所の番付は「西十両五枚目」。関脇で迎えるはずだった7月の名古屋場所から、わずか2場所で幕内の座を失った計算だ。
2場所の休場は、どちらも初日から千秋楽までの全休だった。協会の記録では、東関脇だった名古屋場所、東前頭12枚目だった9月の秋場所とも「0勝0敗15休」。途中出場や途中休場はない。
7月1日の異変、4度の手術と左脚切断の危機
けがの始まりは7月1日だった。名古屋場所に向けて本格的な稽古を再開したこの日、若隆景は左太ももの異常を訴え、稽古を切り上げて安静にした。それでも痛みは引かず、師匠の荒汐親方が救急車を呼んだ。普段は痛みを口にしない若隆景が「痛い」と訴えたことで、事態の重さが分かったという。
診断は「コンパートメント症候群」。筋肉を包む膜の内側で圧力が高まり、血流や神経を圧迫する症状で、処置が遅れると筋肉の壊死や神経まひにつながる。日本相撲協会が7月11日に公表した診断書は「左大腿部外傷性コンパートメント症候群で2カ月の加療安静を要する」との内容で、若隆景は名古屋場所を初日から休んだ。
手術は1回で終わらなかった。出血が多く翌日に再び手術を受け、傷をしばらく開いたまま経過を見たという。大きな手術は計4度に上る。荒汐親方によると、最初の手術が1時間半から2時間遅れていれば、左脚を切断する可能性もあった。
7月24日、名古屋市内から転院していた東京都内の病院を退院した。師匠は現役続行に支障はないと説明し、「本人は再び土俵に立つという気持ちでいる」と伝えた。一方で、8月の夏巡業と9月の秋場所は全休の見通しを示している。7月29日には、いきなり負担をかけると再発の可能性があると言われているとして、「慎重にやるしかない」と話した。
本人が初めて報道陣の取材に応じたのは9月1日、両国国技館で開かれた力士会の日だった。激しい痛みに襲われ、医師から「1分1秒を争う」と告げられて手術を受けるしかなかったと振り返り、現状については「経過は良好」と話した。リハビリを続けながら復帰を目指し、日常生活に支障がないところまで回復したことも明かした。復帰の時期はこの時点で決まっていなかった。
関脇から十両へ、番付の推移
番付の動きを並べると、5月の優勝からの落差がはっきりする。
| 場所 | 番付 | 成績 |
|---|---|---|
| 2026年5月・ | 東小結 | 12勝3敗 |
| 2026年7月・ | 東関脇 | 0勝0敗15休 |
| 2026年9月・ | 東前頭12枚目 | 0勝0敗15休 |
| 2026年11月・ | 西十両5枚目 | 11月8日初日 |
夏場所は12勝3敗で並んだ大関・霧島との優勝決定戦を制し、2022年春場所以来、25場所ぶり2度目の賜杯を抱いた。優勝の翌場所は関脇に戻り、大関昇進を目指す場所になるはずだった。けがは、その名古屋場所の直前に起きている。
九州場所も全休となれば、来年1月の初場所では幕下への陥落が避けられない位置にいる。関取の地位を守れるかどうかがかかる場所でもある。
若隆景にとって、番付を大きく落とすのは2度目だ。2023年春場所で右膝の前十字じん帯などを損傷し、手術を経て関脇から幕下まで下がった。そこから幕内へ戻り、優勝までたどり着いた。幕下に落ちた元幕内優勝力士が再び優勝したのは、元横綱・照ノ富士に次いで2人目だった。
関連記事:若隆景、ぶつかり稽古で胸を出す「徐々にリハビリも進んで、稽古場で出来ることも増えた」 九州場所の出場は未定
福岡入り後の稽古で関取衆に連勝
復帰への手応えを見せたのは福岡入りしてからだった。東京では10月11日の朝稽古でぶつかり稽古の胸を出すところまで進んでいたが、相撲を取る稽古にはまだ入っていなかった。「徐々にリハビリも進んで、稽古場で出来ることも増えた」と本人は話していた。
11月2日、福岡県志免町の時津風部屋であった時津風一門の連合稽古に参加。幕内の大栄翔らを相手に5番取り、5戦全勝だった。他の部屋の関取と相撲を取るのは手術後初めてで、本人は「様子を見ながら」と話した。
関連記事:若隆景、時津風一門の連合稽古で5戦全勝「様子を見ながら」 7月に左脚手術、九州場所の出場は5日めどに判断
翌3日も、福岡県須恵町の荒汐部屋の稽古場で申し合いに加わり、丹治や大青山らと6番取って全勝した。兄の若元春にも、立ち合いから一気に前に出て押し出すなど2番とも勝った。若隆景は「勝ち負けじゃないので」と話し、出場については「しっかりやることをやる」と答えるにとどめた。親方もこの日は「また様子を見て決めます」と話していた。
その翌日に、出場が決まった。
福島の家族と後援会、兄・若元春も同じ場所へ
若隆景は福島県福島市出身。学法福島高校(学校法人松韻学園福島高等学校)から東洋大学へ進み、2017年春場所に荒汐部屋から初土俵を踏んだ。祖父は元小結の若葉山。長兄の若隆元、次兄の若元春とともに「大波3兄弟」と呼ばれ、末弟にあたる。協会の公式プロフィールでは身長183センチ、体重138キロ、得意は右四つ・寄り。最高位は関脇で、新入幕は2019年九州場所だった。
出場決定の知らせは地元にも届いた。父の大波政志は復帰が「少し早いような気もする」と気遣いながら、「決めたことは曲げない人だから」と語り、「無理をせず、けがをせずに乗り切ってほしい」と励ました。荒汐部屋後援会の藤井大吾会長は、本人から電話で報告を受けたという。明るい声から土俵を楽しみにしている様子が伝わったといい、「頑張れるのではないかと思う」と期待を寄せた。
兄の若元春は九州場所を東前頭7枚目で迎える。10月の全日本力士選士権で初優勝しており、兄弟がそろって福岡の土俵に上がる。
関連記事:若元春、33歳の誕生日に全日本力士選士権で初優勝 大の里・琴桜を破り「いい誕生日に出来ました」、三兄弟は?
西十両5枚目から始まる再起の15日間
九州場所は11月8日から22日までの15日間、福岡国際センターで開かれる。協会の公式サイトでは入場券の完売が告知されている。十両は幕内の前に取組があり、若隆景は最初の手術から約4か月で本場所の土俵に戻る。
左脚の状態は、本場所の連戦でどこまで持つかが焦点になる。2023年の右膝のけがでは幕下からはい上がったが、今回は関取の地位を保ったままの再出発。十両で勝ち越しを重ねれば、幕内復帰の道も開ける。
[文/構成 by スポーツ担当ライター 疾風(HAYATE)]








































































コメントはこちら