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宇良、太ももが米国で話題と報じられる 報道の実際の規模と相撲スタイルを整理

宇良、太ももが米国で話題と報じられる 報道の実際の規模と相撲スタイルを整理

時間がない人向けの30秒で理解ゾーン

大相撲の宇良和輝(34)の脚の太さが、米国の筋力トレーニング専門メディアに取り上げられた。8月7日付の記事は、その脚を”ただ大きいだけではない”と位置づけた。発端はSNSに投稿された1枚の写真だった。その約5カ月半前、宇良は母校と同じ学校法人が設置する小学校で、自身の体について語っていた。

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米国の筋トレ専門メディアが伝えた宇良の脚

米国のフィットネス系メディア「Generation Iron」が8月7日、宇良の脚を主題にした記事を公開した。記事は宇良を相撲界で最も動きの軽い力士の一人と紹介し、その持ち味をこう並べた。

「explosive movements, unusual attacks, lightning-fast footwork, and remarkable flexibility」

爆発的な動き、意表を突く攻め、目にも留まらぬ足さばき、そして並外れた柔らかさ。体重300ポンド超という表現を添えながら、記事は大きさと身のこなしが同居する点に焦点を当てた。

記事が引いたのは、歴史をテーマにしたInstagramアカウント「historic」(Historic Moments)の投稿だった。「プロ力士・宇良和輝の脚の大きさ」という言葉とともに、鍛え上げられた下半身の写真が投稿されていた。記事はそこから、力士が重心を低く保つために下半身を鍛えるのだという自らの解説へ進んでいる。この投稿に集まったいいねは、東スポWEBが報じた8月10日時点で約2万2000件だった。

ここで規模を正確に押さえておきたい。取り上げたのは米国の一般ニュースメディアではなく、筋力トレーニングとボディビルを扱う専門媒体1社だった。SNS投稿の反応も2万件台にとどまる。日本では東スポWEBが8月10日にこの記事を紹介し、国内へ伝わった。米国社会を巻き込む現象というより、体づくりに関心の高い層の間で回った話、というのが実際のところだった。

2月に関西学院初等部を訪問 児童に鍛えた体を見せた

数字を挙げながら、宇良は自分の体を子どもたちに説明していった。

2026年2月27日、宇良は母校・関西学院大学と同じ学校法人関西学院が設置する関西学院初等部(宝塚キャンパス)を訪ねた。関西学院大学の公式発表によると、この日は約540人の児童が集まり、「相撲との出会いから現在までの道のり」と題した講演と質疑応答、四股の実演、児童との相撲体験が行われた。宇良は2015年3月に同大教育学部を卒業している。相撲部で腕を磨いた先輩の来校だった。

会場で宇良は自身の体について具体的に語った。体重は「今は体重が140キロくらいあるんです」。周囲には180キロ級の力士もいると説明した。その場で握力を測ると、右手は86.5キロだった。国技館の定期健康診断では左右とも100キロを超え、握力計の針が振り切れて測定不能になったこともある、角界屈指の怪力である。食事についても「食べるのは得意ではなくて1日に5合は目標に食べる」と語り、体を大きくする苦労をのぞかせた。

「200キロの力士を相手にすると怖い時もあるけれど、頑張っている」

児童に向けたこの一言に、宇良の相撲の芯が詰まっていた。サンテレビによると、この日は鍛え上げた肉体も披露している。米国で写真が回るおよそ5カ月半前、宇良は自分の体のことを、母校と同じ学院の子どもたちに自分の言葉で説明していた。

176センチ139キロ 低い重心が生む多彩な決まり手

日本相撲協会の公式プロフィールによると、宇良の身長は176.0センチ、体重は139.0キロ。幕内では小柄な部類に入る。自分より20キロ、30キロ重い相手と組むのが日常で、幕内最重量級の熱海富士(197キロ)と当たる日もある。

その体格差を埋めてきたのが、低い重心と関節の柔らかさだった。相手の懐へ深く潜り込み、体を反らせて後ろへ投げる。居反り、伝え反り、足取りといった、他の力士がほとんど使わない決まり手を繰り出す取り口から「技のデパート」と呼ばれてきた。伝え反りは2022年9月場所、2024年1月場所、2025年1月場所、2025年5月場所と4度決めている。幕内で記録された伝え反りは通算5回しかなく、うち4回が宇良のものだ。残る1回は2002年9月場所、新大関だった朝青龍が貴ノ浪を破ったときのものだった。幕内でめったに出ない技が、宇良の場合は持ち技として働いてきた。

太ももの太さは、この相撲と地続きだった。低く構えて相手の下に入る姿勢を保つには、脚で体重を支え続ける力がいる。反り技で相手を担ぐ瞬間にも、押し合いから一気に横へ動く瞬間にも、負担は脚へ集まる。四股やすり足という相撲の基礎運動は、まさにその部位を鍛える動きにほかならない。米国の記事が脚の写真から稽古の話へ進んだのも、この結びつきがあったからだった。

アマチュア時代から、宇良の相撲は体格に頼らない取り口で通してきた。関西学院大学1年時の2011年、全国学生相撲個人体重別選手権の65キロ未満級で優勝。2013年には第2回世界コンバットゲームズの相撲・軽量級で金メダルを取った。65キロ級で勝ってきた選手が、いま139キロで幕内の土俵に立っている。

二度の右膝手術と序二段106枚目まで落ちた日々

宇良の脚には、失って取り戻した時間も刻まれていた。

2015年3月場所で初土俵を踏んだ宇良は、順調に番付を上げた。2017年7月場所では横綱・日馬富士をとったりで破り、金星を挙げている。ところが同じ場所で右膝を痛めた。9月場所には右膝前十字靭帯を損傷し、手術を受けることになる。休場が続き、番付は下がり続けた。2019年1月場所で再び右膝を痛め、その後、二度目の手術を受けた。

行き着いた先は、序二段106枚目だった。幕内まで上がった力士が三段目、序二段まで落ちる例は多くない。取組が組まれるのは十五日間で数番のみ、支度部屋の景色も関取時代とはまるで違う世界だった。

そこから宇良は上がってきた。2020年1月場所の序二段、3月場所の三段目と全勝優勝を続け、幕下でも勝ち越しを重ねて同年11月場所で関取に復帰した。2021年5月場所には十両で12勝3敗を挙げて初の優勝を飾り、翌7月場所で21場所ぶりに幕内へ戻った。復帰の場所は10勝5敗で終えている。同年11月の九州場所では10勝を挙げ、かねて目標に掲げていた技能賞を初めて受けた。2022年9月場所には横綱・照ノ富士から2個目の金星を奪った。2024年1月場所で小結へ昇進し、これが現在までの最高位となっている。

太い脚は、二度の膝の手術を経てなお相撲を取り続けるための土台でもあった。米国の記事が結びに置いたのも、大きさそのものではなく、その脚が何を可能にしているかという点だった。

「His legs aren’t simply massive. They allow him to move with the speed, control, and explosiveness that have made him one of the most exciting competitors in professional sumo.」

宇良の脚はただ大きいだけではない。その脚があるから、彼はスピードと制御と爆発力をもって動ける。それが彼を大相撲で最も面白い取り手の一人にしてきた、という趣旨だった。

秋場所は9月13日初日 名古屋の5勝10敗からの立て直し

2026年の宇良は、番付の上下が続いている。1月場所は東前頭2枚目で4勝11敗、3月場所は東前頭8枚目で5勝10敗と苦しんだ。5月場所は東前頭11枚目で10勝5敗と勝ち越したものの、東前頭5枚目まで戻した7月の名古屋場所は5勝10敗に終わった。この名古屋場所は安青錦が巴戦を制して優勝している。

関連記事:安青錦、名古屋場所の巴戦を制し3場所ぶり3度目の優勝 大関特例復帰と同時のVは史上初

次の秋場所は9月13日に初日を迎え、27日まで両国国技館で行われる。34歳を迎えた宇良にとって、上位で戦い続けるための正念場が続く。

小柄な力士が大型力士を倒す取組は、いまの角界でも客席を沸かせている。7月の名古屋場所では藤ノ川(21)が横綱・豊昇龍を破り、2日連続の金星を挙げた。体格で劣る側が技で上回る瞬間に、相撲の面白さが凝縮される。

関連記事:藤ノ川が横綱豊昇龍を撃破、名古屋場所で2日連続金星、21歳の経歴と父・甲山親方を整理

米国で回った1枚の写真は、そうした相撲の面白さへの入り口になった。脚の太さそのものより、その脚が何を可能にしてきたかへ目を向ける人が増えれば、宇良の土俵はもっと違って見えてくる。

[文/構成 by スポーツライター 久遠(KUON)]

寄稿者

久遠(KUON)
WEBライター(主にスポーツ記事)経験7年。スポーツ、格闘技が好きで、ボクシング世界チャンピオンが主宰するジムに4年間在籍。自分でも練習を重ね、”3分”の過酷さと濃さを体で知る。観戦もライフワークで、会場には年4回ほど足を運ぶ。選手目線の実感とファン目線の熱量、その両方を武器に、試合の見どころやリングのリアルをライター経験を活かしてわかりやすく伝えます。

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