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平岡アンディ「あと10日欲しかった」ラッセル戦の真相、大橋ジム移籍の理由、そして米国挑戦へ

平岡アンディ「あと10日欲しかった」ラッセル戦の真相、大橋ジム移籍の理由、そして米国挑戦へ

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プロボクサー平岡アンディ(29)は、2月21日のWBA世界スーパーライト級王座決定戦で王者ゲーリー・アントゥアン・ラッセルに0-3で判定負けを喫した。ビザ発給遅延で試合2日前に米国入りする異例の事態だった。3月29日には大橋ジム離脱を発表。次の舞台は米国を視野入れていると語った。

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34年ぶりの快挙ならず、0-3判定負け

WBA世界スーパーライト級1位の平岡アンディ(29)が、2月21日(現地時間)に米ラスベガスのT-モバイル・アリーナで行われた同級タイトルマッチで王者ゲーリー・アントゥアン・ラッセル(29)に0-3の判定で敗れた。プロ25戦目で初黒星となった。

採点は116-111、116-111、117-110。スコア上はラッセルの明白な勝利だが、試合内容は拮抗していた。中盤以降、平岡はボディーへの攻勢を強め、7回には王者の動きを止める場面もつくった。10回、右アッパーがラッセルの股間にまともに入り、ローブローの反則で減点1を科された。流れは途切れた。

平岡が勝てば、1992年4月にメキシコでWBA世界同級王座を獲得した平仲明信以来、日本ジム所属選手として同階級で34年ぶり4人目の世界王者となるところだった。ラッセルは初防衛に成功。戦績を19勝17KO1敗とした。

関連記事:平岡アンディvsラッセル ボクシング世界戦が持つ意味 34年ぶり日本人WBAスーパーライト級王者誕生なるか

ビザ発給は前日、試合2日前に現地到着

平岡は万全を期して試合10日前の現地入りを希望していた。しかし主催者や米国政府の事務手続きに時間がかかり、ビザ発給が正式に決まったのは出発前日だった。18日に問題が解決し、19日夕方の羽田発の飛行機で渡米した。

羽田→シアトル→ラスベガスの乗り継ぎにも失敗した。ラスベガス到着は計量前日の夕方6時頃。メディカルチェックで時間を取られ、ホテル到着は夜10時から10時半。さらに浴槽付きの部屋への変更にもう1時間を要した。水抜き開始は23時半頃、終了は深夜1時から2時だったという。減量リミットまで残り2.3から2.4キロ。極めてタイトな状況だった。

羽田空港では「良かったですね。何とか」と安堵を口にし、「結構しんどかったですね。正直、試合がなくなることも考えました」とスポーツ報知の取材に心境を打ち明けた。公開計量時には「時差ボケの問題はない」とコメントしていた。

だが本音は違った。「時差ボケと言っている時間もないくらい忙しすぎた」と明かしている。「強い選手とやると力を発揮するタイプ。ビザさえなければマジックが起きると思っていた」「あと10日欲しかった、本当に」。悔しさがにじんだ。

中止、延期、そして2日前到着

ここに至るまでの経緯も平坦ではなかった。直前の試合は2024年9月、WBA世界スーパーライト級挑戦者決定戦。暫定王者イスマエル・バロッソに9回TKO勝ちで挑戦権を獲得した。

ラッセル戦は当初、2025年11月14日(現地時間)に米マイアミで予定されていた。興行のメインはジャーボンタ・デービス対ジェイク・ポール。ところが11月4日、デービスが元交際相手への暴行・不法監禁で 訴えられたことを理由にエキシビションマッチの中止が決まり、 興行自体が中止となった。平岡は動画内で「もう明日だよというくらい直前で中止と聞かされ、一瞬プツッと切れた」と当時の心境を振り返っている。最終調整段階で減量は残り4から5キロというところまで進んでいた。

11月興行用にビザは一度発給されていた。だが有効期間は1カ月のみ。再設定された2月の試合に向けて再申請が必要となり、結果として試合2日前の現地入りにつながった。

王者ラッセルとの実戦感覚

試合を終えた平岡の評は冷静だった。動画内で「ハンドスピードもあり、強いチャンピオンだとは思った」としつつ、「もっとガンガン攻めてくると思ったが、意外とアウトボクシングしてきた」と振り返った。パンチの強さやスピードよりも、「アピールが上手かった」「ローブローを誘うなどポイントの取り方が上手かった」と経験値の差を指摘する。

判定スコアについては「もう少し競っていると思っていた。こんなに離れているとは思わなかった」と率直に驚きを口にした。勝てない相手じゃない、との感触も得たという。

反省点は明確だ。「前半をもう少し攻めるべきだった。ジャブやボディジャブをもっと打ってポイントを取りに行きたかった」。ラッセルの連打は顔面には当たっていなかったが、体には当たっており、それがポイントになる「見栄え」の差として実戦で痛感したと語っている。

実際、採点を巡っては米国のファンの間でも議論が起きた。専門家の採点記事では、ラッセルが取ったラウンドは1、3、4、5、10回で、平岡が2、6、7、8、9、11、12回を取ったとの見方が示されている。ジャッジ2人が5点差、1人が7点差をつけた数字は、試合内容と乖離しているとの声もある。

大橋ジム離脱、そして米国へ

敗戦から約1カ月後の3月29日、平岡は自身のインスタグラムで大橋ボクシングジム離脱を発表した。「大橋会長と話し合いの上での決断です」と報告し、「現時点で次の所属先は決まっていません。ただ、ひとつだけ変わらないことがあります。これからも世界と戦い続けます」と決意を記した。

平岡は2013年12月に花形ジムからプロデビュー。2015年から米ロサンゼルスで修業し、2016年9月に大橋ジムへ移籍した。戦績は24勝19KO1敗。

動画内では「特に揉めたわけではなく、好きなことをやらせてくださいということ。会長もOKを出してくださった」と円満離脱を強調した。

大橋秀行会長(61)は3月30日、横浜市で取材に応じ、「ビザの問題やいろんな大変なことがあった。これからは自分で好きなように自由にやってもらいたい」とコメント。「彼は実力的には世界王者になれるし、もちろんこれからも協力する。彼は性格もいいので、どこに行ってもかわいがられると思うので大丈夫」とエールを送った。フェニックスバトルなど大橋ジム主催興行への出場可能性にも「全然あり得る。協力します」と語っている。

同ジムのトレーナーで元世界3階級王者の八重樫東氏も自身のYouTubeチャンネルで、「大橋ジムを離れるからと言って、決してアンディのことを我々が嫌いでとか、そういうのじゃなくて。アンディが自分で道を選んだというだけの話」と説明。「もちろん会長も協力すると言っていたんで。それこそ何かあったら、また一緒に練習もするだろうし」と同門としての支援を約束した。

拠点は米国、Zuffa Boxingの名も

次の拠点は米国を想定する。動画内では「中量級がメインの国でトレーニングするのは大事」として、ロサンゼルスまたはラスベガスを候補に挙げた。父親も賛成しているという。すでに複数のオファーを受けているが、現時点で具体的な契約先は明言できない段階だ。

階級はスーパーライト級とウェルター級の双方を視野に入れる。ウェルター級にはブライアン・ノーマンJr、ライアン・ガルシア、ロランド・ロメロが名を連ねる。テオフィモ・ロペスも階級を上げてくるとの噂もあり、人気選手が集結する激戦区だ。「そういう選手とやれるのはモチベーションでしかない」。動画内で意欲を示した。

対談では、Zuffa Boxingの話題にも触れた。ブランダン・リーやリチャードソン・ヒッチンズ、ホセ・バレンズエラらが契約している新興プロモーションだ。平岡自身の口からも「Zuffaもあり」と肯定的なコメントが出ており、移籍先として現実味を帯びる。

ジムは未定だが、練習は止めていない。大橋ジム離脱後はランニングとシャドウが中心。ラッセル戦による大きな怪我はなく、ジムさえ決まればすぐに実戦練習を再開できる状態だという。

29歳、これからが全盛期

世界戦で初黒星を喫した平岡は、いま29歳。年齢について本人は「ボクシング選手の寿命は最近長くなった。これからが全盛期」と動画内で語っている。

ラスベガスのT-モバイル・アリーナを「入場だけでワクワクするような夢の舞台」と表現した平岡は、敗戦後も同じ舞台への復帰を見据える。「またああいう舞台で戦いたい」。

中量級の世界王座は、WBAがラッセル、WBCがダルトン・スミス、IBFがリチャードソン・ヒッチンズ(※今回セミファイナルで防衛戦予定も当日体調不良で欠場、後に返上)、WBOがシャクール・スティーブンソンと、全階級屈指の陣容だ。日本ジムの離脱、米国拠点の選択、そしてウェルター級進出も視野に入れた構想。29歳のサウスポーが再び世界に挑む日は、そう遠くない。

[文/構成 by 久遠(KUON)]

寄稿者

久遠(KUON)
WEBライター(主にスポーツ記事)経験7年。スポーツ、格闘技が好きで、ボクシング世界チャンピオンが主宰するジムに4年間在籍。自分でも練習を重ね、”3分”の過酷さと濃さを体で知る。観戦もライフワークで、会場には年4回ほど足を運ぶ。選手目線の実感とファン目線の熱量、その両方を武器に、試合の見どころやリングのリアルをライター経験を活かしてわかりやすく伝えます。

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