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「見たことない中谷潤人が見られるかもしれない」――5万5000人の東京ドームで示す、33戦目の覚悟

「見たことない中谷潤人が見られるかもしれない」――5万5000人の東京ドームで示す、33戦目の覚悟

時間がない人向けの30秒で理解ゾーン

世界スーパーバンタム級4団体統一王者の井上尚弥に挑む中谷潤人が23日、相模原市内で練習を公開した。約1カ月の米国合宿を終え、軽快な動きで好調さをアピール。5万5000人が見込まれる東京ドームでの大一番に向け、PFP1位への意欲と新たなスタイルの可能性を示唆した。

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5万5000人の大舞台へ、33戦目の覚悟

5月2日に東京ドームで行われる世界スーパーバンタム級4団体統一タイトルマッチに向け、WBA・WBC・WBO同級1位の中谷潤人(28)=M.T=が23日、神奈川県相模原市内の所属ジムで練習を公開した。

約1カ月にわたる米ロサンゼルスでの強化キャンプから19日に帰国し、翌日から練習を再開している。時差ボケは残るものの、シャドーボクシングやミット打ちなど計3ラウンドをこなし、軽快な動きを見せた。スポーツ報知の取材に対し、中谷は「スパーリングパートナーにも恵まれ、とてもいい練習ができた。あとは発揮するだけ」と自信をのぞかせる。

舞台は5万5000人の観客動員が見込まれる東京ドームだ。大きな会場への不安を問われると、表情を崩さずに答えた。「すごく楽しみにしている。皆さんを満足させられるようなファイトをしたい」。重圧に飲み込まれる懸念についても「そこは楽しんでやるだけ」と一蹴する。

着用していたTシャツには「33」の数字がプリントされていた。プロデビューから32戦全勝(24KO)で迎える33戦目。自身のキャリアにとって重要な意味を持つ一戦に、全力を注ぐ構えを見せた。

心理戦と「9割方」の駆け引き

決戦を前に、両陣営の盤外戦はすでに始まっている。

この日の公開練習には、井上陣営から大橋秀行会長や井上真吾トレーナーら5人が視察に訪れた。約100人の報道陣が詰めかける中、中谷はサンドバッグを叩き、順調な仕上がりを披露する。

スポニチアネックスによると、20日に行われた井上尚弥(33)=大橋=の公開練習で、大橋会長は「中谷がどう出てくるか9割方分かっている」と発言していた。この言葉について問われた中谷は、ニヤリと笑みを浮かべた。「出方は大橋会長が9割方分かっていると言っているので、それでいくんじゃないかと思います」。相手の想定通りに動くことを堂々と宣言し、揺さぶりをかける。

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井上は過去の試合で、中谷が初回から攻撃を仕掛けた展開を念頭に「あれを見せてしまったところがどう出るか」と指摘していた。これに対しても、中谷は冷静だ。リング上でしか発生しないリアクションの重要性を説き、早いラウンドから仕掛ける可能性も否定しなかった。

15歳の時から指導するルディ・エルナンデス・トレーナーも来日し、調整を進める。同氏は井上の武器を「賢さ、スピード、パワー」と分析しつつ、「警戒すべきはパンチ。どちらが当てるかが勝敗を分ける」と本質的なポイントを挙げた。

1年前の呼びかけから実現した頂上決戦

時計の針を1年前に戻す。

2025年3月に行われた年間優秀選手表彰式の壇上。最優秀選手賞を受賞した井上が、技能賞・KO賞の中谷に直接対戦を呼びかけた。この異例のアピールが、日本ボクシング史上最大級のビッグマッチへの発火点となる。

それから1年、両者はそれぞれの階級で防衛と勝利を重ねてきた。中谷は「その中で試合も経験して、より自分自身が成長できた時間だった」と振り返る。歩んできた道は異なる。井上は世界4階級制覇、中谷は世界3階級制覇。ともに32戦全勝という完璧な戦績を提げ、東京ドームのリングで交錯する。

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中学卒業後に単身で渡米し、約13年が経過した。異国で腕を磨き続けた日々が、現在の強さを支える。「僕だから歩めてきた道というものもある。周りの人たちのサポートがあって今ここにいられる」。ファンや関係者への感謝を口にし、大舞台での恩返しを誓った。

チケット完売、日本ボクシング史上最大規模の熱狂

試合への関心はかつてない高まりを見せている。

大橋ジムの発表によると、東京ドームのチケットはすでに完売。アリーナSRS席の33万円から内野指定席まで、あらゆる席種が早々に埋まった。国内最大級のイベントとして、スポーツ界全体からの視線を集める。

配信はNTTドコモの映像サービス「Lemino」がペイ・パー・ビュー(PPV)で独占生配信を行う。無敗の日本人同士による頂上決戦への熱気は高まる一方だ。

体重はリミットまで残り3〜4キロ。減量も最終段階に入り、頬は少しこけ始めている。それでも、公開練習中の表情は明るかった。所属ジムの村野健会長は「大変好調で怪我もなく、すごくいい表情をして取り組んでいる」と状態の良さを強調する。

PFP1位を見据える、新たなスタイルの予感

勝利の先には、さらなる高みがある。

米老舗専門誌「ザ・リング」が選定するパウンド・フォー・パウンド(PFP)ランキング。現在、井上が2位、中谷が6位につける。この試合に勝てば、中谷が目標として掲げてきたPFP1位の座も見えてくる。

「そこはぶらさず持っている目標。近づいていけるように今回勝利を収めたい」。日刊スポーツの取材に対し、中谷は力強く言い切った。

井上は間合いの操作や破壊力、鉄壁のディフェンスなど、群を抜く完成度を誇る。対する中谷は長身サウスポーの利点を生かした距離の支配と、接近戦での左アッパーが武器だ。井上がポイントを拾うような戦い方をしてきた場合でも、「いろんな幅の大きいボクシングができる選手。そこにも対応できる自分は作れる」と自信を見せる。

取材の最後、今まで見たことのない中谷潤人が見られるかという問いが飛んだ。

「見られるかもしれないですし、見られないかもしれないですし」。不敵な笑みを残し、挑戦者は会見を締めくくった。答えは5月2日、東京ドームのリングで明らかになる。

[文/構成 by 久遠(KUON)]

寄稿者

久遠(KUON)
WEBライター(主にスポーツ記事)経験7年。スポーツ、格闘技が好きで、ボクシング世界チャンピオンが主宰するジムに4年間在籍。自分でも練習を重ね、”3分”の過酷さと濃さを体で知る。観戦もライフワークで、会場には年4回ほど足を運ぶ。選手目線の実感とファン目線の熱量、その両方を武器に、試合の見どころやリングのリアルをライター経験を活かしてわかりやすく伝えます。

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