野々村竜太郎氏は何をした人か 2014年の「号泣会見」と政務活動費の詐取で有罪判決、占い師として活動する現在 太田光がGMO会見で名前を挙げ再注目

時間がない人向けの30秒で理解ゾーン
爆笑問題の太田光(61)が11月3日深夜放送のTBSラジオ「火曜JUNK 爆笑問題カーボーイ」で、前日に会見したGMOインターネットグループの熊谷正寿会長兼社長について「野々村議員みたいなもん」と口にした。名前が挙がったのは、元兵庫県議会議員の野々村竜太郎氏(60)だ。
野々村竜太郎氏とは 市職員から4度の落選を経て県議に
野々村氏は2014年7月1日、政務活動費の使い道をめぐる釈明の記者会見で号泣し、全国的な注目を集めた。同じ月に議員を辞め、2016年7月には詐欺などの罪で懲役3年、執行猶予4年の判決を受けている。2025年12月の報道時点では、スキル売買サイト「ココナラ」で占い師として依頼を受け付けていた。
野々村氏は1966年7月29日、大阪府の生まれ。関西大学法学部を出て、兵庫県の川西市役所に勤めた。2025年12月の報道によると、ココナラのプロフィールの職歴欄には「元川西市役所職員」「元兵庫県議会議員」の2行が並ぶ。
政治家を志して市役所を退職した後は、太子町長選や西宮市長選など4回の選挙に立候補し、いずれも落選した。県議の座にたどり着いたのは2011年4月の兵庫県議選で、西宮市選挙区で初当選している。問題が発覚した2014年当時は、無所属の1期目だった。
発端は2013年度の「日帰り出張195回」
問題が表に出たのは2014年6月30日。神戸新聞が、兵庫県議会の公開した2013年度の収支報告書をもとに、野々村氏の支出の不自然さを報じた。
政務活動費(政活費)は、議員の調査や研究のために議員報酬とは別に公費から出るお金で、使い道は収支報告書で報告する決まりだ。野々村氏の報告書には、城崎温泉のある豊岡市や佐用町など、地元の西宮市から遠く離れた土地への日帰り出張が1年で195回記されていた。交通費として政活費から出した額は約300万円に上る。
行き先で多かったのは城崎温泉の106回と佐用の62回で、ならせば2日に1回ほどのペースで遠出していた計算になる。ところが交通費の領収書は付いておらず、現地で何をしたのかを示す記述も見当たらなかった。
2014年7月1日の号泣会見で何があったのか
報道の翌日、野々村氏は記者会見を開いた。会見は約3時間に及び、野々村氏は195回の訪問を「精力的な議員活動の結果」と位置づけて、支出は正当だと訴えた。
だが、記者が出張先や会った相手を尋ねると、「相手との約束があり公表できない」などと答え、具体的な説明には応じなかった。やりとりが続くうち、野々村氏は机をたたきながら声を上げて泣き出す。「世の中を変えたい」と叫ぶ場面もあり、その映像はテレビやインターネットで繰り返し流され、海外メディアも取り上げた。
反応はすぐに県庁へ届いた。神戸新聞によると、翌2日までに県議会事務局と県の広聴室には電話やメールで約150件の苦情や抗議が寄せられ、東京都や福岡県など県外からのものも含まれていた。同紙の後の集計では、会見から1週間で届いた苦情は約3000件に膨らんでいる。
会見を指す「号泣会見」という言葉は、この年の11月に発表された2014年の新語・流行語大賞の候補50語に入った。同じ年の候補には「ダメよ~ダメダメ」「ありのままで」「妖怪ウォッチ」などが並んでいた。
会見から10日で辞職、2年後に有罪判決
7月11日、兵庫県議会は虚偽公文書作成・同行使の疑いで野々村氏を兵庫県警に刑事告発した。野々村氏は同じ日に議員を辞職し、のちに在任中に受け取った政活費の全額にあたる1834万円を返還した。会見から、わずか10日後の辞職だった。
捜査はその後も続く。神戸新聞によると、県警は家宅捜索などで日帰り出張の一部が架空だったことを確かめ、政活費が商品券や食料品の購入にも使われていたことをつかんだ。2015年1月、野々村氏は約220万円をだまし取った詐欺などの疑いで書類送検された。神戸地検は新たな証拠を押収したうえで、2011年度から2013年度の日帰り出張はほぼすべて虚偽と判断し、同年8月、約913万円の詐取で在宅起訴した。
裁判は初めからつまずいた。2015年11月24日の初公判を野々村氏は欠席し、この日の公判は開かれていない。神戸地裁が勾引状を出して身柄を確保し、2016年1月26日にやり直しの初公判が開かれた。法廷で野々村氏は起訴内容を否認し、収支報告書の作成などについて「記憶にない」といった答えを繰り返した。
判決は2016年7月6日に言い渡された。神戸地裁の佐茂剛裁判長は、詐欺と虚偽有印公文書作成・同行使の罪で懲役3年、執行猶予4年(求刑懲役3年)を言い渡す。判決は、起訴された計344回の日帰り出張について「事実はなかった」と認め、約913万円の詐取を認定した。切手やはがきの購入とした事務費も虚偽とされ、領収書の金額を修正テープで改ざんしていたことも認められた。お金の行き先は、食料品や国民年金保険料などの私的な支出だった。
弁護側は記憶障害の可能性を主張したが、裁判長は公判での受け答えから心身の障害はうかがえず、供述は虚偽の疑いが強いと退けた。そのうえで「金銭欲からの犯行で悪質」と指摘しつつ、議員を辞めたこと、1834万円を全額返還したこと、報道で社会的な制裁を受けたことを挙げ、執行猶予を付けた。
検察側は控訴しない方針で、野々村氏側も控訴期限が迫った7月20日夕方の時点で控訴状を出していなかった。J-CASTニュースによると、野々村氏は2025年12月の時点でココナラのプロフィールの賞罰欄に「詐欺罪等懲役3年執行猶予4年終了」と記しており、4年の猶予期間は2020年7月に満了している。
当選から刑期の満了までの主な流れは次のとおり。
- 2011年4月:兵庫県議選の西宮市選挙区で初当選
- 2014年6月30日:神戸新聞が2013年度の日帰り出張195回、約300万円の支出を報道
- 2014年7月1日:約3時間の釈明会見を開き、途中で号泣
- 2014年7月11日:県議会が刑事告発し、同じ日に議員を辞職
- 2015年1月:詐欺などの疑いで書類送検
- 2015年8月:神戸地検が約913万円の詐取で在宅起訴
- 2015年11月24日:初公判を欠席し、公判は開かれず
- 2016年1月26日:勾引されて出廷し、やり直しの初公判
- 2016年2月:保釈
- 2016年4月25日:検察が懲役3年を求刑し、結審
- 2016年7月6日:神戸地裁が懲役3年、執行猶予4年の判決
- 2020年7月:執行猶予4年の期間が満了
号泣会見は、ほかの議員の政活費にも目を向けさせるきっかけになった。神戸新聞によると、会見の後に政活費の不正を疑う動きは各地の議会に広がった。兵庫県議会は、野々村氏を含む30人と1会派が不適切な支出として計約2500万円を返還したと発表している。県議会は2014年9月に条例を改め、政活費の月額を1割減らして45万円にした。
号泣会見から12年、占い師として活動する現在
判決の後、野々村氏は取材に応じず、表立った活動はほとんど伝えられていなかった。2023年3月には、野々村氏がライブ配信アプリ「ふわっち」で音声だけの生配信を始めたと、週刊女性PRIMEが伝えている。1回10分ほどの配信だったという。
2024年に入ると、音声配信アプリでのネットラジオに加え、ココナラで西洋占星術の占いや人生相談を有料で受け始めた。週刊女性PRIMEによると、ココナラで悩み相談を請け負い始めたのは2024年2月だった。ココナラの説明で本人は、長年にわたり西洋占星術、数秘術、四柱推命を学び、実践してきたと説明する。
J-CASTニュースが2025年12月17日に伝えたところでは、占いは2500円から、悩み相談は5万円からで、同日午後2時半時点の販売実績は106件あった。プロフィールには「世界的に有名な野々村竜太郎があなたの悩みお聞きします!」との一文が掲げられている。Xでは「野々村竜太郎占いゲーム」の名前でアカウントを運用し、ココナラの出品者でTikTokやゲームの配信者でもあると名乗る。料金や実績、プロフィールの文言は、いずれも2025年12月の報道時点のものだ。
同じ記事でJ-CASTニュースは、SNSで会見当時との違いを面白がる投稿が出ていることも紹介した。号泣会見で知られた元県議は、50代の終わりに、悩みの相談を受ける側に回っていた。
2026年11月4日時点でも、ココナラのプロフィールで野々村氏は、2014年の会見(いわゆる「号泣会見」)で広く知られるようになった元兵庫県議会議員だと自ら名乗っている。西洋占星術、数秘術、四柱推命を組み合わせた鑑定の出品も並んでいる。
GMO会見で再び名前が出た理由
11月2日、GMOインターネットグループの熊谷正寿会長兼社長が、不正アクセス問題の発覚後で初めての記者会見を開いた。冒頭で顧客を守れなかったことを謝罪し、その後の説明の途中では、社是に触れて涙ぐむ場面があった。会見の最中から、Xには熊谷氏の姿を野々村議員になぞらえる投稿が出て、2日夜の時点で3万件を超える「いいね」を集めた。
関連記事:GMO熊谷社長の会見、涙の場面にXで「野々村議員みたい」の投稿
翌3日には、東洋経済オンラインが「令和の野々村」「ポエム会見」という言葉を見出しに掲げて会見を論じた。同じ日の深夜、太田光はラジオで「これはすごいの出たなと思いながら」と切り出し、「ああいうのってさ、あそこまでいっちゃうと野々村議員みたいなもんでさ。あれを超えることはない」と語る。日刊スポーツが4日朝にこの発言を報じると、同日昼には野々村氏の名前がGoogleトレンドで急上昇した。
ただ、2つの会見の中身は異なる。GMOの会見は、外部からの不正アクセスで顧客情報が流出するなどした被害について、企業として説明する場だった。野々村氏の場合は、自身の政活費の不正を問われ、のちに裁判で詐欺と認定された件だ。重ねられたのは、会見の場での振る舞いや涙の印象の部分だった。
2014年7月1日の会見から12年あまり。60歳になった野々村氏の名前は、別の人物の会見を語る言葉として、もう一度広がった。
[文/構成 by ライター 飯田タツヤ]








































































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