後藤大樹、400mで45秒33の高校新記録 21年ぶり更新の洛南高17歳

時間がない人向けの30秒で理解ゾーン
洛南高等学校(京都)2年の後藤大樹(17)が11月3日、静岡県で開かれた第17回エコパトラックゲームズの男子400mで45秒33をマークした。2005年に金丸祐三が出した高校記録45秒47を0秒14縮め、21年ぶりの更新となった。本職は400mハードルで、専門外の400mを走るのは公式戦で2本目。今年6月の400mハードルに続き、個人種目で2つ目の高校記録になる。
エコパで45秒33、金丸祐三の記録を0秒14更新
舞台は静岡県袋井市の小笠山総合運動公園エコパスタジアム。後藤は第17回エコパトラックゲームズの男子400mにオープン参加で出場し、45秒33でゴールした。オープン参加のため順位は記録に残らないが、タイムは場内で日本高校記録としてアナウンスされた。
それまでの高校記録は、大阪高校の金丸祐三が2005年に出した45秒47だった。金丸はその後、法政大学、大塚製薬へ進んだ。その記録を0秒14上回り、21年ぶりに書き換えた。
記録の価値は高校の枠に収まらない。45秒33はU18日本記録の45秒89、U18アジア最高の45秒58をともに上回り、18歳以下の今季世界最高にもあたる。年齢を問わない大会で走る大学生や社会人の選手と比べても見劣りしない数字だ。
高校記録の更新は、個人種目では今年2つ目になる。6月の日本選手権では400mハードルの予選で48秒31を出し、為末大が1996年に作った高校記録49秒09を30年ぶりに更新。決勝では48秒09までさらに縮めていた。ハードルと平地の両方で高校記録を持つ17歳が現れたことになる。
400mは人生2本目、スタート前に機器の不具合
後藤にとって400mは本職ではない。高校1年だった2025年に一度走り、46秒80(当時の高校1年最高)を記録したのが最初で、今回が2本目だった。2026年に入って400mを走るのはこれが初めてで、シーズン最後のレースに選んだ一戦でもあった。
ウオーミングアップの段階では、連戦の疲れを感じながらも体はよく動いていたという。アジア大会のあとも試合が続き、200mではリズムの切り替えに苦労した時期もあった。後藤は、本当に強い選手は連戦のなかでも自分のベストに近い力をコンスタントに出していくものだと話し、将来はダイヤモンドリーグなどでも安定して戦える選手になりたいと語った。
レース前には予定外の出来事もあった。スタートの直前に機器の不具合とみられるトラブルがあり、選手はいったん待機所へ戻された。待ち時間は約3分と伝えられている。後藤はこれを気にせず、むしろ「いつもと違うな」と感じ、何かを起こせるかもしれないと受け止めたと話した。この日は朝もアラームが鳴る少し前に目が覚め、いつもと違った感覚があったという。
レースに特別な作戦はなかった。400mハードルや200mで身につけた動きをそのまま生かし、前半はスムーズに入る。終盤は苦しさを感じながらも「これだ」という感覚があったと振り返り、必死にもがいて走ったと明かした。先にレースを終えていた400mの選手たちからは、後藤の走りに驚きの反応が出た。
記録は高校記録を目標に置いていたが、400mの力は自分でも読めなかった。未知の部分を「楽しもう」という気持ちでレースに入ったと語り、結果は想像以上だったと話している。
指導する洛南高の柴田博之先生とのやりとりも伝わる。スタート前、柴田先生から、びっくりする準備をしていいかと聞かれ、後藤は「びっくりしてください」と返したという。柴田先生は、400mハードルや300mハードルの合間に200mやリレーの短い距離を入れることで、心身をリセットさせてきたと説明した。
U20日本記録まで0秒15、日本記録との距離は
45秒33がどの位置にあるのか。主な記録と並べると次のようになる。
| 区分 | 記録 | 保持者(年) |
|---|---|---|
| 日本記録 | 44秒44 | 中島佑気ジョセフ |
| U20日本記録 | 45秒18 | 山口有希 |
| 後藤大樹の新高校記録 | 45秒33 | 後藤大樹 |
| 従来の高校記録 | 45秒47 | 金丸祐三 |
| U18アジア最高(従来) | 45秒58 | ― |
| U18日本記録(従来) | 45秒89 | ― |
U20日本記録は、洛南高の先輩にあたる山口有希が2003年に出した45秒18だ。後藤との差はわずか0秒15だ。洛南高の先輩が持つ記録に、後輩が手の届く位置まで迫った。
日本記録は、2025年9月の東京世界陸上で中島佑気ジョセフが予選で出した44秒44。中島はこの大会の決勝で6位に入り、日本勢の過去最高順位を残した。後藤とはまだ0秒89の開きがある。それでも、400mを専門に練習していない17歳が、2本目のレースで45秒台前半に届いた。
400mハードルで日本一、アジア大会で銀
後藤の2026年は、400mハードルを軸に進んだ。6月の日本選手権では48秒09で優勝。高校生がこの種目で日本一になるのは初めてで、U20日本記録とU18世界最高も同時に塗り替えた。この優勝で愛知・名古屋アジア大会の代表に決まる。
8月には米国で開かれたU20世界選手権の400mハードルで銀メダルを手にした。9月28日、名古屋市のパロマ瑞穂スタジアムで行われたアジア大会の決勝では、最後の直線まで先頭を守りながら、ゴール直前でカタールの選手にかわされた。それでも47秒93で銀メダル。為末大が2001年に作った日本記録47秒89まで0秒04に迫る日本歴代2位タイの記録で、2027年の北京世界選手権の参加標準記録も突破している。
関連記事:後藤大樹さんが200mで20秒19の追い風参考記録 U20日本記録と高校記録を上回るタイム
スプリントの力も積み上がっている。9月の近畿選手権では200mで追い風参考ながら20秒19を出し、10月のU20日本選手権の200mでは20秒40で優勝した。桐生祥秀が高校時代に出した20秒41を上回り、高校歴代2位にあたる。アジア大会のあともダイヤモンドリーグなど海外での転戦を見すえ、ほぼ毎週のようにレースに出てきた。
200m、400mハードル、そして400m。どの種目でも上位の記録を並べる高校生は珍しい。後藤は、シーズンの途中に200mや110mハードルのレースを入れて強みを磨いてきたことが、400mにも生きたと話している。
来年の目標は北京世界陸上の決勝
走るレースは、この400mで今季最後になる。この後は走幅跳に出場する予定で、本人は跳んで今季を終えると話した。走幅跳については7m40くらい跳べればと控えめな目標を口にしている。
来季の大きな目標は、2027年の北京世界選手権だ。後藤は決勝の舞台に立ち、世界との差と自分の立ち位置を確かめたいと話した。参加標準記録を突破しているのは400mハードルだが、本人は200mや400mにも出ているかもしれないと含みを持たせた。どの種目が一番合うのかはまだ誰にも分からず、師弟ともに今はそれでよいと考えているという。
来年は、自分で作った高校記録を自分で更新する立場になる。プレッシャーと楽しみの両方があると話す17歳が、高校3年の1年をどの種目で走るのかも、来季の見どころになる。
[文/構成 by スポーツ担当ライター 南條楓]








































































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