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“貞子の生みの親”鈴木光司さん(68)死去に悲しみの声 妻は幼なじみの高校教師、娘2人に孫5人──家族を愛した「ホラー界の帝王」の意外な横顔とその経歴を辿る

“貞子の生みの親”鈴木光司さん(68)死去に悲しみの声 妻は幼なじみの高校教師、娘2人に孫5人──家族を愛した「ホラー界の帝王」の意外な横顔とその経歴を辿る

時間がない人向けの30秒で理解ゾーン

ホラー小説「リング」「らせん」で知られる作家の鈴木光司さん(本名・晃司)が5月8日午後5時ごろ、東京都内の病院で死去した。68歳。静岡県浜松市出身。Jホラーブームを世界に広げた”貞子”の生みの親が、自宅で娘2人を育てる主夫作家でもあったことは、講演などで本人が繰り返し語ってきた。

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“貞子の父”68歳で逝去 68歳、Jホラーの旗手

「リング」「らせん」などのホラー小説で知られる作家の鈴木光司(すずき・こうじ、本名・晃司)さんが5月8日午後5時ごろ、東京都内の病院で死去した。68歳だった。所属側は、お別れの会を行う予定だが日取りなどは未定としている。

静岡県浜松市出身。静岡県立浜松北高校、慶應義塾大学文学部仏文科を卒業した。代表作の映画「リング」(中田秀夫監督)には松嶋菜々子、真田広之、中谷美紀が出演。続編「らせん」(飯田譲治監督)には佐藤浩市、中谷、真田らが出ている。テレビ画面から這い出る白装束・長髪の女性キャラクター”貞子”が、世界の恐怖の代名詞となった。

共同通信が9日夜、朝日新聞デジタルが同日午後9時42分にそれぞれ訃報を配信。各報道機関も追って報じた。

専業主夫として書いた「リング」 ヒットの裏に家庭

「ホラー界の帝王」という呼び名とは裏腹に、鈴木さんが書斎で抱えていたのは、ごく普通の家族の日常だった。

慶應大学を卒業後、専業主夫として家庭を支えながら、自宅で学習塾を営む傍ら執筆を続けた。1990年に長編「楽園」で第2回日本ファンタジーノベル大賞優秀賞を受け、作家デビュー。続いて91年、角川書店から「リング」を刊行した。

「見たら1週間後に死ぬ」呪いのビデオを巡る物語は、論理を積み上げた設定と現実味のある描写で読者を引き込んだ。95年刊行の続編「らせん」は、翌96年に第17回吉川英治文学新人賞を受賞。リング、らせん、ループの3部作は日本、米国、韓国で映画化され、日本のホラーを”Jホラー”という世界的なブランドに押し上げた。

2008年に発表した「エッジ」は、英訳版が2013年に米国の文学賞・シャーリイ・ジャクスン賞長編部門を日本人として初受賞。海外でも高い評価を得て、米メディアから「日本のスティーヴン・キング」と呼ばれた。

幼なじみの妻と二人三脚 娘2人と5人の孫

家族構成は本人が公の場で繰り返し明かしてきた。妻は高校教師をしていた幼なじみの女性。鈴木さんは大学卒業後、その妻と結婚し、二人の娘を育てながら作品を書いた。講演テーマ「新しい家族のあり方」では、自身の体験をこう振り返っている。

「私は、高校教師をしている幼馴染の女性と結婚しました。小説家志望のボクは自然に家事をし、娘ができたことで子育てをすることになりました」。長女が生まれた当初、妻はフルタイム勤務だったため、保育園の送り迎えから家事まで鈴木さんが担った。

長女が2歳のころ、執筆の手が止まっていた書斎にビデオテープを持ってきて、ぽんと置いていったという。「そうだ。ビデオの映像を見たことにしよう」。「リング」の核となる仕掛けは、その瞬間に固まった。過去のインタビューで本人が明かしている。

「僕にとって一番怖いことは妻と娘たちが失われること。リングのストーリーは単なる偶然で、当時の家族状況そのままです」。世界を震わせた恐怖の原型は、家族を失う恐怖そのものだった。

娘2人はその後それぞれ家庭を築き、孫は5人になった。本人は2024年公開のインタビューで「娘たちと婿殿と5人の孫たち」と語り、家族ぐるみの暮らしぶりに触れていた。

「なるべく貞子を出すな」生み出した恐怖の原則

創作姿勢は、徹底して観念を疑うところに置かれた。中日新聞のインタビューで鈴木さんはこう語っている。

「小説は、普通の人が気付かないことを奥深く書かなければ意味がない。寄り添わず、徹底的に破壊することが大事。破壊するのは『これはこういうこと』と信じている固定観念と先入観」

映画化された「貞子」シリーズについては、製作側に注文を出し続けた。「僕は映画製作者に『なるべく貞子を出すな』と言っている。米国版のシリーズもそう。井戸だけを映し、何かが出てくる物語、背景をつくっておく。すると、観客の想像力の中で出てくる。これが一番怖い」。”見せない恐怖”こそが、鈴木さんの原則だった。

趣味はヨット、バイク、格闘技、筋トレ。夢は太平洋横断と公言する肉体派でもあった。著作は世界20カ国以上の言語に翻訳され、講演にも数多く立った。

SNSで広がる追悼 訃報にファン絶句

訃報はSNSでも瞬く間に広がった。Xでは、ユーザーの一人が朝日新聞の訃報記事を引用し「流石にこれはマジで!?って口走ってしまった。ご冥福をお祈りします」と投稿。同じ世代の読者から共感が相次いだ。

昨年(2025年)3月19日には角川書店の特設サイトで、同月26日に刊行された長編ホラー小説「ユビキタス」の冒頭が公開された。「リング」を超える絶望、「らせん」を上回る恐怖を打ち出した16年ぶりの完全新作で、読者の期待を集めていた矢先の訃報となった。

残された言葉、続く”恐怖”の遺伝

角川書店から2025年3月に刊行された「ユビキタス」は、消息不明の孫を巡る老夫婦の物語が軸になっている。東京新聞2025年6月8日付の書評は、入り組んだ家族の事情を抱えた老夫婦の探索行と評し、新刊執筆を続ける作家の意欲を伝えていた。

専業主夫として娘2人を育てながら、世界が震える恐怖を書き続けた68年。井戸の底から這い出した白い影は、これからもスクリーンの向こうで生き続ける。家族を愛した男が遺した、ひとつの逆説だ。

[文/構成 by さとう つづり]

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