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名字「井(い)」さんは全国約2900人、熊本・産山村は村民の5人に1人 由来や読み方、100人超が集まった「全国井さん祭り」

名字「井(い)」さんは全国約2900人、熊本・産山村は村民の5人に1人 由来や読み方、100人超が集まった「全国井さん祭り」

時間がない人向けの30秒で理解ゾーン

漢字1文字、読みも1音の名字「井(い)」。全国に約2900人とされ、そのうち約260人が熊本県阿蘇郡産山村(うぶやまむら)に暮らす。村では5人に1人が井さんで、全国でいちばん井さんが多い村だ。11月3日、その産山村で「全国井さん祭り」が開かれ、村内外から100人を超える井さんが集まった。

「井」さんは全国に何人いる? 多い地域は熊本・阿蘇

全国の井さんは約2900人。祭りを伝えた報道は、いずれもこの数字を挙げていた。

名字の情報サイト「名字由来net」の調べでは、全国の人数はおよそ2800人で、全国順位は4037位となる。報道の数字とは100人ほどの差があるものの、3000人に届かない珍しい名字という点は変わらない。

都道府県別に見ると、熊本県が飛び抜けて多い。名字由来netの調べによる上位5府県は次のとおりだ。

都道府県人数(名字由来net調べ)
熊本県およそ1300人
福岡県およそ300人
大分県およそ180人
大阪府およそ170人
長崎県およそ140人

全国のおよそ半数が熊本県に集まる計算になる。市区町村別でも、名字由来netは熊本県阿蘇郡産山村を1位に挙げ、熊本市、阿蘇市、阿蘇郡南小国町と阿蘇地方を中心とした地名が続く。

市区町村人数(名字由来net調べ)
熊本県阿蘇郡産山村およそ420人
熊本県熊本市およそ290人
熊本県阿蘇市およそ240人
熊本県阿蘇郡南小国町およそ230人
長崎県対馬市およそ140人

産山村の井さんの人数は、出典によって幅がある。祭りの報道では村内に約260人とされ、村と全国井さん祭り実行委員会が2021年に出した宣言では、人口1400人あまりのうち280人余りとしていた。名字由来netの「およそ420人」は同サイト独自の調べで、村が示す数字とは集計の方法が異なる。

読み方は「い」だけじゃない 名字由来netが挙げる10通り

産山村の井さんは「い」と名乗る。ただ、名字としての「井」には別の読み方もある。

名字由来netが掲載する読み方は、い、いい、わかし、いのもと、いづつ、さらい、じょう、いげた、しょう、せいの10通りだ。同じ1文字でも、家によって呼び名が大きく変わる。

なかでも「い」は、漢字1文字で読みも1音という、日本では珍しい名字にあたる。

短さゆえの苦労もつきまとう。名乗っても、相手に名字だと伝わらないのだ。祭りでは、そんな「井さんあるある」が次々と披露された。中身は後半で紹介する。

由来は湧き水か 南北朝時代には「井」を名乗る武士

井という名字はどこから来たのか。

名字由来netは、藤原氏の良門流、清和源氏、宇多源氏、日下部氏などに井姓が見られると解説し、「近年、熊本県阿蘇郡に多数みられる」と記している。

産山村は、名字と村の水を結びつけて考える。村の観光協会「うぶやま未来ラボ」が発信している宣言によると、井姓は湧き水に関わりの深い名字だといわれ、産山でも湧水の水源に近い地域に井さんが多い。中世の南北朝時代には、産山周辺に「井」を名乗る武士が数多くいたことが記録で分かっている。

こうした点から村側は、湧き水の恵みを受けて暮らしてきた人々が、湧水の住人としての誇りを込めて「井」と名乗ったのではないかと考えている。名字の起源を確定させた説ではなく、村が地域の歴史をもとに示した見方だ。

11月3日は「井さんの日」 2021年に村が宣言

村と名字の結びつきを形にしたのが、2021年11月3日の「井さんのふるさと、産山村宣言」だった。熊本県阿蘇郡産山村と全国井さん祭り実行委員会の連名で、全国に散らばる井姓のルーツとして、湧水の恵みと自然との共存を守ってきた産山の暮らしを、全国の井さんと未来へつないでいくとうたった。

11月3日は語呂合わせで「井さんの日」。2022年には日本記念日協会に記念日として認定され、村が掲げた日が、登録された記念日になった。

100人超が集結 「全国井さん祭り」で飛び出した井さんあるある

2026年の祭りは、その「井さんの日」の11月3日に開かれた。会場は村内の「UBUYAMA PLACE」。主催は村内の有志でつくる実行委員会で、祭りは日付と同じ数字が並ぶ11時3分に始まった。

参加者の数は、報道によって100人以上とも約150人ともされる。村内の井さんに加え、東京都や福岡県、大分県などからも井さんが駆けつけた。会場では「井と申します」「井です」と、同じ名字の名乗りが続いた。

特別ゲストは、医師で芸人の井たくま(本名・拓磨)さん(33)。父親が産山村の出身で、東京から招かれてトークショーに登場した。

祭りの会場で語られた「井さん」のエピソードは次のとおりだ。

話した人発言
井たくまさん電話での予約が取りづらい。『井たくまです』『えっ?』って言われて、『斉藤です』って別の名前で予約とって
井雄一郎村長高校に入ったときに名前を先輩から聞かれて『井です』と言ったら『いいですとはなんだ!ちゃんと名前を言え!』と怒られたこともありました
参加した井さん私が生まれた所は7軒家がありまして、6軒が井でございました
中学生の井さん名前が覚えられやすいかなと思います

電話口で名字が伝わらず、別の名前で予約を取る。名乗っただけで「いいです」と聞き取られる。どちらも1音の名字ならではの苦労話で、井たくまさんはこうしたあるある話で会場を盛り上げた。

井雄一郎村長は、2025年11月16日投開票の産山村長選で初当選した。元副村長で、農林水産省の職員だった経歴を持つ。

7軒中6軒が井という生まれ故郷の話は、井さんが当たり前にいる村の暮らしを伝える。村では同じ名字が多いため、下の名前で呼び合うことが多いという。中学生は、珍しい名字を「覚えられやすい」と前向きに語った。

来年以降も11月3日に続けたい考え

実行委員会の井恒博(つねひろ)会長は、全国の井さんが集まって友好の輪を広げ、それが産山村のPRにつながってほしいと話した。

祭りは地域おこしの一環として、来年以降も11月3日に続けていきたい考えだという。全国約2900人のうち、およそ1割がひとつの村に暮らす。その村に年に1度、全国の井さんが顔をそろえる日が根づき始めている。

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[文/構成 by ライター 飯田タツヤ]

寄稿者

飯田タツヤ
時事ニュースを中心に、社会の動きから芸能・スポーツの話題まで幅広く書いているWebライターの飯田です。ライター歴は6年。心がけているのは、発表や報道で確認できたことと、まだ分かっていないことを分けて書くこと。「何が起きて、暮らしにどう関わるのか」を最初に整理しています。休日はラジオを流しながらの散歩とサウナ。

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