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工藤監督、パイプ椅子で投手陣を指導 中日秋季キャンプで草加勝が気づいた下半身の課題

工藤監督、パイプ椅子で投手陣を指導 中日秋季キャンプで草加勝が気づいた下半身の課題

時間がない人向けの30秒で理解ゾーン

中日の工藤公康監督(63)が11月3日、高知での秋季キャンプ2日目に、ブルペンでパイプ椅子を使った投球フォームの指導を行った。中心になったのは2023年ドラフト1位の草加勝(24)。約15分の指導のあと、草加はデータで球速が少し上がっていたと明かし、これまで下半身を十分に使えていなかったと気づいた様子だった。

ブルペンに置かれたパイプ椅子、着地の直前にサッと引く

中日の秋季キャンプは、高知県立春野総合運動公園野球場とナゴヤ球場の2カ所で11月2日に始まった。高知の日程は16日までで、休日は5日、9日、13日の3日間。3日は第1クールの2日目にあたり、球団公式YouTubeチャンネルで練習が生配信された。高知の球場は期間中、入場無料で一般に開放されている。

全体練習は午前9時30分に始まった。アップのあと、投手も野手もポール間走で汗を流す。基礎体力を上げ、けがをしにくい体をつくるためのランニングだ。工藤監督は午前9時45分ごろに姿を見せ、投手陣が移ったブルペンへ足を運んだ。

工藤監督が向かったのは、球場に隣接する屋内のブルペンだった。投球練習をしていた投手の背中側から近づき、手に持ったパイプ椅子を、踏み出す足が着地するあたりに置く。投手が足を踏み出すと、着地の間際に椅子をサッと手前に引いた。

椅子に座りにいくように重心を斜め下へ移し、そのまま捕手の方向へ体を運ぶ。それが狙いだ。

工藤監督はこの指導を草加と、同じ右腕で2025年ドラフト2位の櫻井頼之介に行った。草加が受けたレクチャーは15分ほど。重心を上ではなく斜めに持っていくイメージで、一球ずつ確かめるようにボールを投じていった。

「突っ込む系」の投手が多い、工藤監督が椅子を持ち出した理由

なぜ椅子なのか。

工藤監督は、上半身が先に捕手方向へ倒れてしまう投手が多いと見ていた。報道陣には「突っ込む系」という言葉を使い、上体が前に倒れると腕が出にくくなると説明。下半身から動き出す感覚を理解してもらうための椅子だった。

工藤監督が軸に置くのは、自ら「ヒップファースト」と呼ぶ考え方だ。踏み出す足の側のお尻を捕手方向へ向けて、椅子に腰を下ろすように体重を移していく。踏み出した足の着地と同時に、その脚の太ももの裏の筋肉で膝を固め、そこから上半身を回してリリースする。下半身の力をボールまで伝えるための順番で、工藤監督は下半身が安定しないとリリースポイントも安定しないとも語った。

この練習は、工藤監督がソフトバンクの監督を務めた時期にも取り入れていたメニューだ。ソフトバンクは工藤監督の7年間で5度、リーグトップのチーム防御率を記録し、日本一にも5度輝いた。

指導は一律ではなかった。2025年ドラフト1位の中西聖輝には椅子を使わず、腕の振りの速さはあるものの、力の最大点がリリースの位置で来てしまっている点を指摘。もっと前の捕手側で力を出すことと、ボールの握りを少し緩めて手首を柔らかく使うことを助言した。

「腕を振らなくても」、草加勝が手応えを語った

草加の課題として工藤監督が見ていたのは、投球の途中で体が早く正面を向いてしまう点だった。椅子を使ったのは、下半身の使い方を体で覚えさせるためでもある。

指導を受けた草加の反応は早かった。「腕を振らなくても」球速がデータ上で少し上がっていたと話し、これまで下半身をしっかり使えていなかったのではないかと受け止めた。自分のものにしていきたいとも語っている。

腕を強く振らずに球速が出る。投手にとっては、体の使い方が変わったことをうかがわせる手応えだ。

櫻井も、教わったあとはボールが指にかかる感覚があったと手応えを口にした。

右肘の手術を越えた3年目、24試合で防御率2.59

草加は2001年11月21日生まれ、岡山県出身の右投右打。創志学園高等学校から亜細亜大学に進み、東都大学リーグでは3年秋に最優秀防御率のタイトルを手にした。4年夏には日米大学野球選手権の日本代表にも選ばれ、リーグ通算13勝、防御率1.24の成績を残している。2023年のドラフト会議で中日から1位指名を受け、背番号は14。

プロ生活は順調な滑り出しではなかった。入団直後の2024年1月、新人合同自主トレーニング中に右肘の違和感を訴え、2月に右肘の内側側副靱帯再建術(トミー・ジョン手術)を受ける。ルーキーイヤーはリハビリに費やした。

2年目の2025年10月1日、東京ドームでの巨人戦で一軍初登板初先発を果たしたものの、4回途中5失点で負け投手となった。2026年2月には右肘痛が再発したが、4月23日のファーム戦で実戦に戻り、3回を無安打無失点に抑えている。

3年目の2026年シーズンは、一軍で救援として登板を重ねた。6月7日の西武戦でプロ初ホールドを記録し、最終的に24試合に登板して0勝1敗1ホールド、防御率2.59。24回1/3を投げて21三振を奪った。プロ初勝利はまだない。

数字は残した。その上で、工藤監督は投げ方の土台から手を入れにいった。

最下位からの立て直し、工藤監督の高知での日々

中日は2026年シーズン、2年ぶりの最下位に沈み、6年連続のBクラスに終わった。工藤監督は10月15日に就任会見を開き、背番号は81に決まった。名古屋出身の工藤監督にとって、故郷の球団での監督就任となる。現役時代も、コーチとしても中日に在籍したことはなく、外部から招かれた監督だ。

関連記事:工藤公康監督が高知入り「みんなが成長できる」 中日秋季キャンプで背番号81のユニホーム姿を初披露へ

就任会見で工藤監督は、選手に何かを強制するつもりはないとしながらも、足りないものは身につけてもらわなければいけないと話した。失敗についても「失敗しない人間なんていないです」と述べ、失敗から何を学ぶかが大事だという考えを示している。強いチームの条件には、能力、体力、技術、メンタルの向上が総合的にかみ合うことを挙げた。

どんな選手になりたいのか、そのために何をしなければいけないのかを考えるのが自分の仕事だとも、工藤監督は会見で話している。パイプ椅子の指導も、投手ごとに課題を見て、言葉と道具で気づかせるやり方だった。

キャンプ2日目の3日も、工藤監督は初日と同じくブルペンを見たあと約3時間の練習メニューで動き続け、宿舎に戻ってからは選手との面談の時間を設けた。投手陣はブルペンのあと、下半身を鍛えるトレーニングにも取り組んだ。

関連記事:中日秋季キャンプ始動、工藤公康監督「選手が変わるために必要な時間にしたい」

高知での秋季キャンプは11月16日まで続く。パイプ椅子で覚えた下半身主導の投げ方を、草加が来季のプロ初勝利につなげられるか。椅子を引く工藤監督の指導は、若い投手陣の土台づくりから始まった。

[文/構成 by スポーツ担当ライター 高瀬翔吾]

寄稿者

高瀬翔吾
Webメディアでスポーツ、エンタメ、時事ニュースなど、累計数千本の記事制作に携わってきたスポーツ系ライター。野球分野では、プロ野球の試合結果や選手の記録をはじめ、MLB、高校野球、ドラフト、移籍、契約更改などの記事を継続的に担当。数字や公式記録を基に情報を整理する記事を得意としており、結果を伝えるだけでなく、その記録が持つ意味や、選手・球団を取り巻く背景までわかりやすく解説することを心がけている。主な執筆分野は、プロ野球、MLB、高校野球、侍ジャパン、ドラフト、移籍情報。

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