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出口クリスタ、東京都葛飾区のウルフアロン杯に登場 ウルフアロンが計画した“引退試合”で子どもたちと真剣勝負

出口クリスタ、東京都葛飾区のウルフアロン杯に登場 ウルフアロンが計画した“引退試合”で子どもたちと真剣勝負

時間がない人向けの30秒で理解ゾーン

パリ五輪柔道女子57キロ級金メダリストの出口クリスタ(30)が10月25日、東京都葛飾区の奥戸総合スポーツセンターで開かれた「ウルフアロン杯(第79回葛飾区民秋季柔道大会)」にシークレットゲストとして登場した。同学年のウルフアロンがサプライズで用意した“引退試合”で大会優勝者らと対戦し、報道によると8戦全勝だった。「聞いてない」と不満を見せつつ、最後は「楽しかった」と笑顔を見せた。

柔道教室のゲストから一転、“引退試合”へ

大会は葛飾区柔道会が主催する区民大会で、実施要項では開会式を午前9時30分としていた。幼年・小学生の部の試合と表彰式が終わったあと、ウルフアロンによるイベントの時間が組まれ、そこに出口がシークレットゲストとして現れると、会場は騒然となった。

ここからが、ウルフの仕掛けだった。トークイベントのあと、出口の“引退試合”として、子どもたちとの直接対決が始まる。報道によると、相手は大会の優勝者らで、出口は8試合すべてに勝った。

出口本人には試合の予定が知らされていなかった。首謀者のウルフに「聞いてない」と頬を膨らませたが、畳に上がると久々の実戦モードに切り替わる。女子の小中学生を相手に、得意の大内刈りや大外刈りで一本勝ちを重ねていった。

最後の相手は100キロ超の男子中学生

締めくくりは、自ら対戦を志願してきた男子中学生との一番だった。競技歴は半年ながら、身長約180センチ、体重100キロ超という大柄な選手で、出口も当初は「無理無理無理」とたじろいだという。それでも組んでしまえば、金メダリストの大内刈りが決まり、相手を畳に投げ飛ばした。

試合後、出口は「(試合すると)聞いてなかったけど、たしかに五輪以降は試合してないので楽しかったです。悪ノリで腹が立ったけど、久々に楽しく試合できました」と満面の笑みを浮かべた。2024年夏のパリ五輪以降、実戦の機会はなかった。

敗れた男子中学生は「絶対勝てると希望を持って挑戦したけど、全然ダメでした。強かったです」と完敗を認める。この日の柔道教室のトークショーで、ウルフは「恨むこともいい。自分が負けた相手を嫌いになるくらい、なにくそという気持ちで練習したら強くなれる」と子どもたちに話していた。その言葉が胸に残ったのか、中学生は「出口さんを恨みます!次は絶対に勝ちます」と宣言している。

“逆恨み”を伝え聞いた出口は笑って受け止めた。「それが彼のモチベーションになるなら、私は悪役でも全然買って出ますよ。あの子は体も大きいし、力が強いし、本人のやる気次第で強くなれる」。負けた悔しさを次への力に変えるよう背中を押した。

長野で3歳から柔道、カナダ代表で五輪の頂点へ

出口は長野県出身で、3歳から柔道を始めた。カナダ人の父を持ち、2017年からカナダ代表として国際大会に出場する道を選ぶと、2024年のパリ五輪女子57キロ級で金メダルを手にした。

2026年3月、妹のケリーとそろって現役引退を発表。最近はABCテレビの「相席食堂」に出演するなど、畳の外へ活動の場を広げている。正式な引退試合の場がないまま競技を離れていただけに、葛飾区の畳が思わぬ“ラストマッチ”の舞台となった。

関連記事:パリ五輪金メダリスト・出口クリスタ「現役としての柔道人生に満足」妹ケリーと同時引退発表 カナダ代表の経歴と涙の理由

葛飾区の区民大会に冠された「ウルフアロン杯」

ウルフアロンは2021年東京五輪の柔道男子100キロ級金メダリストで、東京都葛飾区の出身だ。2025年6月に柔道を引退し、現在は新日本プロレスのプロレスラーとして活動する。葛飾区が地元のウルフが子どものころにこの大会へ出場していた縁もあり、昨年秋から区民大会が「ウルフアロン杯」と名付けられた。大会は春と秋の年2回開かれている。

主催する葛飾区柔道会は1953年4月に正式発足した団体で、2023年秋に創立70周年の記念行事を盛大に開いた。傘下の町道場の数は都内でも有数だ。春と秋の区民大会は個人戦のトーナメントで行われ、今回の秋季大会の実施要項では、幼年と小学1〜3年生の男女混合4部門、少年男子6部門、女子7部門、成年男子4部門に分けて優勝者を決める。ウルフアロン杯は各部門の優勝者の中から、試合内容や姿勢、態度を考えてウルフが選ぶ。今大会はスポーツ協会の補助金が出たため、参加費と協賛金はかからなかった。

“引退試合”の舞台になるのも、初めてではない。2026年5月31日の春季大会では、2024年パリ五輪までウルフの付け人を務めた宇田川力輝さんが“引退試合”として三段男子の部に出場し、決勝で一本負けして準優勝で畳を去った。昨年秋の大会でも、ウルフが柔道教室で優勝者たちと「10人掛け」の勝負をした様子を、葛飾区柔道会が動画で公開している。

講道館での対戦を「根に持っていた」同級生

ウルフと出口は同学年で、ともに30歳。大会のトークイベントでは、2人の出会いが話題に上がった。

ウルフは「同級生で試合に参加すると、名前にカタカナが入っているので、パンフレットで目立っていた。僕は記憶にないけど、小学校の時に1回試合をして、僕が勝っているみたいです」と明かす。出口は「私たちは1回講道館で試合をしているのに覚えていないんですよ…。勝っているからね。私は負けているからずっと根に持っていた」と苦笑いだった。

親しくなったのはここ1年ほどで、フジテレビ系「ジャンクSPORTS」での共演がきっかけだという。出口はウルフについて「柔道をやっていて、今はプロレスでも大人気でしゃべりもうまい」と持ち上げた。小学生のころに講道館で負けた相手が、今度は自分の引退試合を用意したことになる。

「次も引退試合をしてない選手に」シリーズ化の構想

盟友の“ラストマッチ”を演出したウルフは「僕もそうだけど、柔道家は最後に楽しんで試合した方がいい。勝っても負けても最後って気持ちで試合できるのは引退試合だけ。こういった機会にやってもらえてよかった」と実感を込めた。

ウルフ自身は2025年6月の全日本実業団体対抗大会を最後に柔道を引退し、プロレスの世界へ移った。今年5月の宇田川さんに続き、出口の“引退試合”も自分の名前を冠した地元の大会で実現させた。

構想はまだ続く。「次も引退試合をしてない選手に出てもらおうかな」。ウルフはあごひげをさすりながら、元トップ選手の“有終の場”としてシリーズ化する考えを口にした。構想が形になれば、葛飾区の子どもたちは元トップ選手と本気で組み合う機会を、これからも得ることになる。

[文/構成 by スポーツ担当ライター 疾風(HAYATE)]

寄稿者

疾風(HAYATE)
スポーツニュースサイトでの執筆を経て、ゴルフ、競馬、大相撲、フィギュアスケート、陸上など、競技の枠を越えてスポーツ記事を書いてきたWEBライター。経験は6年。大会結果や記録、番付、レース展開など、数字と公式記録を土台に「何がすごかったのか」を整理する記事を得意としている。ルールや採点方式が分かりにくい競技でも、初めて観る人がその一戦を楽しめるよう、背景や見どころまでかみくだいて伝えることを心がけている。主な執筆分野は、ゴルフ、競馬、大相撲、フィギュアスケート、陸上、バスケットボール。

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