大橋信、アジア大会50m平泳ぎで銅 100m同着金、200m世界新の金に続き平泳ぎ3種目でメダル

時間がない人向けの30秒で理解ゾーン
愛知・名古屋アジア大会の競泳最終日となった9月25日、男子50メートル平泳ぎ決勝で17歳の大橋信が27秒01の3位に入り、銅メダルを手にした。前日の200メートルを2分4秒83の世界新記録で制し、21日の100メートルは中国選手と同着で優勝。平泳ぎ3種目すべてで表彰台に立ち、リレーの銀2個と合わせて5個のメダルで大会を終えた。
50メートル決勝は27秒01、中国勢2人に届かず
東京アクアティクスセンターで行われた男子50メートル平泳ぎ決勝は、4レーンの覃海洋(中国)がトップに立ち、そのまま26秒68でフィニッシュした。2位は同じ中国の劉俊傑で26秒99。大橋は3番手争いを制して27秒01でタッチし、銀の劉とは0秒02差だった。
| 順位 | 選手 | 国・地域 | タイム |
|---|---|---|---|
| 1位(金) | 覃海洋 | 中国 | 26秒68 |
| 2位(銀) | 劉俊傑 | 中国 | 26秒99 |
| 3位(銅) | 大橋信 | 日本 | 27秒01 |
午前の予選は27秒00の組1着、全体2位で通過していた。決勝のタイムは予選より0秒01遅く、100メートル、200メートルと合わせた平泳ぎ3冠は届かなかった。
レース後の言葉は率直だった。「予選よりタイム落としてしまったし、自己ベストでもないですし、まあ少し悔しいです。50mはまだまだ力不足なところが丸見え」。続けて「だからこそそこを強化すれば100m、200mにもつながると思うので、少しずつ50mを速くしていけたらなと思います」と、短い距離を伸ばす意味を口にした。
大会全体については「目標としてた200mの世界記録は出せましたし、3冠まではいかなかったんですけど、100mも200mも勝てたことはとてもいいことだと思うので、これからつなげていけたらいいなと思います」と語っている。
前夜の200メートルは2分4秒83、世界記録を0秒65更新
3冠の懸かった50メートルの前夜、9月24日の200メートル決勝で大橋は世界を驚かせていた。前半100メートルを59秒89で折り返した時点で後続に体1つ分の差をつけ、そのまま独走。2分4秒83でゴールし、2023年に覃海洋が記録した世界記録2分5秒48を0秒65縮めた。2021年に佐藤翔馬が出した日本記録2分6秒40も5年ぶりに塗り替え、2位のデニス・ペトラショフ(キルギス)には3秒84の大差をつけた。
大会前には新型コロナウイルスに感染していたという。レース後、大橋は「大会前にアクシデントがあって無理かなと思ったんですけど、皆が支えてくれた」と明かした。自分でも信じ切れないタイムだったようで、「4秒は速すぎる」とも漏らしている。
200メートル決勝までに、大橋は予選を含めて7本のレースを泳いでいた。100メートル平泳ぎの予選と決勝、男子と混合の400メートルメドレーリレーの予選と決勝をこなし、24日午前の200メートル予選も2分9秒93のトップで通過。決勝は大会8本目のレースだった。
2002年の釜山アジア大会では、北島康介がこの種目を当時の世界新記録で制し、2004年アテネ、2008年北京の両五輪で連覇へと進んだ。それから24年、自国開催の大会で17歳が同じ種目の世界記録を塗り替えた。
100メートルは董志豪と58秒64の同着優勝
大橋の大会初戦は劇的だった。9月21日の100メートル決勝、大橋はスタートでやや出遅れながら、速いピッチで両腕をかいて50メートルのターンでトップに立つ。終盤に董志豪(中国)に追いつかれたが、電光掲示板の記録はともに58秒64。同着の1位で金メダルとなった。
フィニッシュ直後、中国の観客から歓声が上がり、大橋は負けたと思い込んだという。自己の持つ日本記録58秒54には0秒10届かず、「タイムはあまり良くないし、納得のいく泳ぎではなかったので、少し悔しい」と口にした。それでも「今までの自分だったら、あそこで負けていた。同着でも金を取れた。試合で強くなっているのかな」と、勝ち切った点には手応えを見せた。
この種目で日本勢が勝つのは、2018年ジャカルタ大会の小関也朱篤以来2大会ぶり。決勝の4日前には39度の熱が出て、練習を1日休んでいた。表彰式でプレゼンターを務めたのは北島康介だった。
平泳ぎの3種目以外でも、大橋は日本の銀メダル2個に関わった。9月22日の男子400メートルメドレーリレーでは第2泳者を務め、竹原秀一、光永翔音、村佐達也とつないで3分28秒70の日本新記録をマーク。2021年東京五輪で出した従来の日本記録3分29秒91を1秒21更新し、中国に0秒81差の2位だった。翌23日の混合400メートルメドレーリレーでも竹原、池江璃花子、池本凪沙とともに3分43秒98で銀を手にしている。
| 日付 | 種目 | 結果 | 記録 |
|---|---|---|---|
| 9月21日 | 男子100メートル平泳ぎ | 金(董志豪と同着) | 58秒64 |
| 9月22日 | 男子400メートルメドレーリレー | 銀 | 3分28秒70(日本新) |
| 9月23日 | 混合400メートルメドレーリレー | 銀 | 3分43秒98 |
| 9月24日 | 男子200メートル平泳ぎ | 金 | 2分4秒83(世界新) |
| 9月25日 | 男子50メートル平泳ぎ | 銅 | 27秒01 |
関連記事:池江璃花子、アジア大会50mバタフライで銅メダル 前日は体調不良で50m自由形を棄権、本命種目で表彰台
大阪・枚方出身の高校生、1年で世界記録保持者に
大橋は2009年3月5日生まれ、大阪府枚方市の出身だ。3歳で水泳を始め、小学3年で本格的に競技の道へ進んだ。大阪・東香里中を経て四條畷学園高に在学している。所属は枚方SS。身長169センチと小柄で、趣味はゲームだという。
名前が一気に広がったのは2025年。高校2年の近畿大会で200メートル2分6秒91を出し、2026年3月の日本選手権では史上最年少で平泳ぎ3冠を達成した。100メートルでは58秒67の日本新記録も樹立している。8月のパンパシフィック選手権(米アーバイン)でシニアの国際大会にデビューし、100メートルで日本記録を58秒54まで縮めて銀メダルを獲得した。
アジア大会は初出場。その舞台で個人金2個、世界記録1つ。100メートルの前には北島が「持久力もあって、スピードもあって、本当に魅力ある選手」と評していた。
関連記事:小島夢貴、アジア大会400m個人メドレー大会新で金 豊川高3年の17歳、父はアジア大会リレー2冠
平泳ぎ3種目の表彰台、次は世界水泳とロス五輪
アジア大会の平泳ぎ3冠は、2018年ジャカルタ大会で小関也朱篤が50メートル、100メートル、200メートルを制して達成している。大橋はそこに50メートルの1種目だけ届かなかった。
ただ、本人が見ているのは50メートルの順位ではない。短い距離のスピード不足を認めたうえで、それを100メートル、200メートルの強化に結びつける考えを示した。200メートルの世界新は、大会前に掲げていた目標そのものだった。
100メートルの日には「世界記録を出さないとそのルートには乗れないと思っているので」と話していた。北島が歩んだ、アジア大会の世界記録から五輪の頂点へ向かう道を意識した言葉だ。
来季は大学に進む予定で、2027年の世界選手権(ブダペスト)、2028年のロサンゼルス五輪が続く。日本の男子平泳ぎは、2012年ロンドン五輪を最後に五輪のメダルから遠ざかる。17歳が5つのメダルを抱えて、自国開催のアジア大会を後にした。
[文/構成 by スポーツライター 疾風(HAYATE)]







































































コメントはこちら