人的補償の撤廃協議、今オフの新ルール施行は見送りへ 廃止時期の見通しとプロテクトの扱いを整理

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NPBと日本プロ野球選手会は8月12日、都内で事務折衝を行い、FA権行使に伴う国内移籍の「人的補償」について協議した。撤廃の方向では両者が一致しているものの、代替案の詰めが残り、今オフからの新ルール施行は見送られる見通しになった。プロテクト28人を伴う現行の仕組みは、このオフも続くことになる。
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「今シーズンからスタートするのは難しい」 8月12日の事務折衝
協議の場に出た選手会の加藤諭事務局次長は、NPB側へ伝えた内容をこう明かした。
「全体的には今シーズンからスタートするのは難しいかなとお伝えさせてもらった。今までのルールと比べても移籍のハードルになってるかどうかが大きい」
撤廃そのものに反対しているわけではない。むしろ求めてきたのは選手会の側だ。引っかかっているのは、人的補償の代わりに置こうとしている仕組みが、選手にとってこれまで以上の壁になりかねない点にある。加藤事務局次長は「進めていかないといけないので、早めに決められるように継続して話をしていきたい」とも語り、協議自体は続ける姿勢を示した。施行が今オフに間に合わないことで、この秋にFA権を行使する選手は、従来どおりの補償ルールの下で移籍先を探すことになる。
代替案はドラフト指名権の譲渡 Aランクは2位、Bランクは3位
NPB側が示している代替案は、選手を獲得した球団が旧所属球団へドラフト会議の指名権を譲る形だ。年俸ランクによって譲る順位が変わる。Aランク(球団内の年俸上位1〜3位)ならドラフト2位の指名権、Bランク(同4〜10位)なら3位の指名権を渡し、これに金銭補償を組み合わせる案が軸になっている。
7月3日の事務折衝でこの案が提示された時点から、選手会は指名順位が高すぎるとして難色を示してきた。上位指名権を手放す負担が重ければ、球団はFA選手の獲得そのものをためらう。人的補償をなくしても移籍が増えないのでは、撤廃の意味が薄れる。
加藤事務局次長は7月の協議後にも「人的補償はなくしていきたいが、これまで以上に移籍のハードルになったら意味がない」と話していた。この一点が、8月12日まで持ち越されたまま残っている。
プロテクト28人と金銭補償 現行制度はこう動く
現行のFA制度では、選手の旧年俸が球団内で何番目かによってランクが決まる。上位3位以内がAランク、4〜10位がBランク。人的補償が発生するのはこの上位10人に入る選手で、そこから外れるCランクには補償そのものがない。順位を数えるとき、外国人選手は除かれる。
AランクとBランクの選手が国内移籍した場合、補償の中身を選ぶのは旧所属球団の側だ。金銭だけを受け取るか、金額を抑えたうえで選手1人を受け取るか。後者を選んだときに動き出すのが人的補償で、獲得した球団は手放したくない選手28人を並べたプロテクト名簿を提出し、旧球団はその名簿から外れた選手を1人指名できる。
名簿は公表されない。誰が守られ、誰が外れているかを知るのは当該球団だけで、選手本人にも知らされない。この不透明さが、制度への批判の土台になってきた。
撤廃論を広げた2024年1月の一件
議論が一気に広がったのは、2024年1月11日だった。西武からソフトバンクへFA移籍した山川穂高の人的補償をめぐり、この日の朝に「42歳の和田毅が指名される方針」という報道が先行する。ファンの反発が集中したところで、同じ日の夕方に両球団が正式発表し、対象は甲斐野央だと明らかになった。朝から夕方までの間に何があったのかは各メディアが報じたものの、公式発表ではないため確認された事実にはなっていない。
選手会の森忠仁事務局長は、その直後の1月23日、「選手会は補償自体を撤廃してほしいというのは前から言っている」と改めて説明した。そのうえで問題の中心に置いたのが、プロテクトされる28人の見えなさだった。
「当該球団しか知り得ない。実態が分からないというのが一番問題」
選手を守るはずの補償が、当人の意思と関係なく移籍先を決めてしまう。ベテランに突然「移籍か引退か」を迫る形になりうることも、批判の的になった。獲得球団から見れば、高額の年俸と補償金に加えて戦力を1人失う負担が重なる。選手会は撤廃を求め続け、球団側にも見直しを求める空気が広がっていった。
廃止はいつになるのか
撤廃へ向かう流れ自体は、2026年5月27日の時点で固まっていた。事務折衝を終えた選手会が「廃止する方向ということは聞きました。次回までに具体案をこちら側に提出してもらう形になっています」と明かしている。7月3日にドラフト指名権の譲渡案が示され、8月12日の折衝で今オフの施行が見送られた、という順序になる。
残る焦点は、譲る指名権を何位相当に設定するかだ。上位すぎれば移籍の妨げになり、下位すぎれば旧球団への埋め合わせにならない。落としどころが決まらないかぎり、次のオフも現行制度のまま迎えることになる。
具体的な施行時期は、まだどちらの側からも示されていない。選手会は「早めに決められるように」と繰り返しており、協議は秋以降も続く。今季のFA戦線は、プロテクト名簿が動く最後のオフになるのか、それとももう一年続くのか。答えはこれからの折衝に委ねられている。
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[文/構成 by スポーツライター 高瀬翔吾]




































































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