熱海富士、千秋楽本割で安青錦を破るも優勝決定巴戦で初優勝ならず 熱海育ちの関脇の歩みを整理

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大相撲名古屋場所は7月26日に千秋楽を迎え、東関脇・熱海富士(23)=伊勢ヶ濱部屋=が本割で関脇・安青錦を押し出しで下し、12勝3敗で並んだ。大関・霧島も加わった3人の優勝決定巴戦を制したのは安青錦で、3場所ぶり3度目の優勝となった。熱海富士は初優勝に届かなかった。熱海育ちの関脇がたどってきた道のりを整理する。
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押し出しで完勝、巴戦は安青錦に軍配
千秋楽の本割で組まれたのは、単独首位だった安青錦を熱海富士が追う一番だった。立ち合いから熱海富士が圧力をかけて前に出ると、安青錦は反撃する間もなく土俵の外へ出た。決まり手は押し出し。これで両者は12勝3敗で並び、優勝の行方は巴戦へ持ち越された。
同じ12勝3敗だった大関・霧島も、琴桜を寄り切りで下して巴戦に加わっている。3人による優勝決定巴戦は、まず熱海富士と霧島が対戦し、熱海富士が勝った。続く相手は安青錦。土俵際で体を入れ替えられ、寄り切りに屈した。安青錦はさらに霧島も寄り切りで下し、連勝で優勝をつかんだ。
安青錦にとっては3場所ぶり3度目の優勝だった。安青錦は初土俵から史上最速級の14場所で大関に昇進した経歴を持つが、負傷による休場などで関脇へ陥落していた。大関経験者が一定の好成績を挙げれば大関へ復帰できる特例復帰の制度があり、今場所は10勝以上を挙げればその資格を得られる場所でもあった。特例復帰を果たした力士は過去に6人・7例あるが、その場所で優勝まで果たした例はこれまでゼロ。安青錦が史上初のケースとなった。番付への反映は9月場所からで、正式な大関復帰はまだ先になる。優勝インタビューで安青錦は「やり切ったなって感じです」と語った。
千葉生まれ、熱海育ちの土俵人生
熱海富士の本名は武井朔太郎。日本相撲協会の公式プロフィールは出身地を静岡県熱海市と記すが、生まれは千葉県で、小学2年の時に熱海市へ引っ越した。相撲を始めたのは小学6年、三島市の三島相撲クラブでのことだ。
中学は当初、日本大学三島中学校の柔道部に入った。だが2年生の時に相撲一本に絞る決意をし、熱海市立熱海中学校へ転校している。柔道から相撲へ軸足を移したこの決断が、その後の力士人生の起点になった。
高校は沼津市の飛龍高校に進んだ。入学時130キロだった体重は卒業までに170キロへ増えた。現在は身長187センチ、体重197キロの体格を誇り、得意技は右四つからの寄りだ。卒業後は伊勢ヶ濱部屋に入門し、2020年11月場所で初土俵を踏んだ。そこから新入幕まではわずか12場所だった。前相撲からの所要場所数としては歴代8位タイのスピード出世だ。
その後も序ノ口、序二段、十両と各段で優勝を重ね、幕内では金星2個、敢闘賞4回を積み上げてきた。2026年3月場所で新小結、5月場所で関脇に昇進した。静岡県出身力士の関脇は、1930年夏場所の天竜以来96年ぶりだった。
部屋付きの楯山親方(元前頭・誉富士)は、感情を素直に出す熱海富士の土俵態度を「令和の高見盛」と評したことがある。2022年には妹の陽奈が母校・飛龍高校相撲部で創部から約50年で初めての女性主将に就任しており、地元では兄妹そろって知られた存在だ。
安青錦との巴戦、今場所も涙をのむ
熱海富士が安青錦と優勝決定戦で対戦するのは、これが初めてではない。2026年の初場所でも優勝決定戦で安青錦と対戦し、敗れている。熱海富士にとって優勝決定戦進出は今回で3度目だったが、いずれも優勝には手が届いていない。名古屋場所で本割は制したものの、巴戦ではまた同じ相手に土俵を割った。
本割で圧力をかけて完勝した相手に、巴戦では逆に体を入れ替えられて敗れた。皮肉な結果だ。土俵上でしばらく天を仰いだまま動けなかったと伝えられ、支度部屋の取材にも応じずそのまま会場を後にしたという。優勝まであと一番に迫っていただけに、悔しさの大きさがうかがえる。
熱海と母校、地元が沸いた千秋楽
千秋楽は日曜日で、地元・熱海市の総合福祉センターでは午後3時30分から熱海富士の取組を見守るパブリックビューイングが開かれた。先着100人の会場には地元住民やファンが集まり、声援を送った。母校の飛龍高校でも相撲部員らが急きょ集まり、同じように応援したという。
本割で安青錦を破った瞬間、会場には歓声が上がったはずだ。だが巴戦の結果を見届けた後の空気は、優勝を目前にして逃した悔しさと、それでも12勝を挙げた関脇への拍手が入り混じるものになっただろう。
目指すは静岡県勢初優勝と大関昇進
熱海富士にはまだ幕内優勝の経験がなく、静岡県出身力士としての幕内優勝も、これまで誰も成し遂げていない。大関昇進も果たしておらず、本人はこの2つを目標に掲げている。
関脇としては、小結だった3月場所を経て今場所で2場所目を終えた段階だ。12勝という好成績を挙げたが、大関昇進の議論が具体化するには来場所以降も上位の成績を積み重ねる必要がある。
本割で安青錦を破る地力は示した。あとは巴戦をどう越えるかが課題として残る。地元・熱海では、次こそ悲願の初優勝をという期待がすでに高まっている。熱海育ちの関脇の挑戦は、まだ終わっていない。
[文/構成 by スポーツライター 久遠(KUON)]


































































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