MEDIA DOGS

二子岳、元小結の山中武さんが死去 82歳、内無双・外無双の名手で大鵬から金星

二子岳、元小結の山中武さんが死去 82歳、内無双・外無双の名手で大鵬から金星

時間がない人向けの30秒で理解ゾーン

大相撲の元小結二子岳で、元荒磯親方の山中武(やまなか・たけし)さんが9月10日、肝細胞がんのため自宅で亡くなった。82歳だった。日本相撲協会が秋場所初日の13日に発表し、葬儀は家族葬で執り行う予定だという。

秋場所初日に伝えられた訃報

青森県金木町(現五所川原市)の出身。初代若乃花が興した二子山部屋で最初の関取となり、左四つからの下手投げに内無双、外無双を織り交ぜる技巧派として、幕内を57場所務めた。最高位は西小結。引退後は荒磯部屋を開き、若い力士を育てた。

発表は、東京・両国国技館で秋場所が始まった13日。亡くなったのは、その3日前だった。

1943年11月15日生まれ。現役時代は身長178cm、体重は110キロほどで、幕内では軽い部類に入る体つきだった。

花籠部屋に入門、二子山部屋の関取第1号に

中学を卒業して花籠部屋に入門し、1961年初場所で本名の「山中」のまま初土俵を踏んだ。翌1962年、同じ部屋にいた横綱初代若乃花が現役を退いて二子山部屋を創設すると、山中さんもそれについて移り、四股名を「若二子」と改めている。

関取の座をつかんだのは1964年九州場所。新十両への昇進で、二子山部屋から初めての関取誕生となった。

だが、順調には進まなかった。新十両の場所は途中休場となって幕下へ逆戻りし、翌場所は全休した。十両に戻るまで1年余りを要し、1966年春場所で再び関取の地位に上がると、同年夏場所から「二子岳」を名乗る。1967年初場所で新入幕を果たした。

二子山部屋はその後、角界の一大勢力へ育っていく。初代若乃花は、同じ青森出身の2代目若乃花と隆の里という2人の横綱に加え、2人の大関を送り出した。その最初の関取が、二子岳だった。

師匠の初代若乃花は「土俵の鬼」と呼ばれ、横綱栃錦とともに昭和30年代の「栃若時代」を築いた。引退後は1988年から92年まで日本相撲協会の理事長を務め、2010年9月に亡くなっている。

左四つから繰り出す内無双と外無双

得意は左四つからの下手投げ。そこに内無双や外無双、足技を組み合わせる多彩な取り口が持ち味となった。

内無双は、相手の内ももを下から手で払い、体をひねって倒す技だ。膝の外側から払えば外無双になり、どちらも日本相撲協会が定める決まり手に含まれる。力で押し込むよりも、相手の足を払って体勢を崩す技といえる。

大柄な力士がそろう幕内で、110キロほどの二子岳はこうした技を武器に番付を保ち続けた。幕内から十両へ落ちたのは2度あるが、1969年名古屋場所、1974年初場所のいずれも、1場所で幕内に戻っている。

小結3場所、技能賞と大鵬からの金星

入幕から1年足らずの1967年九州場所で、新小結に昇進した。翌1968年の春場所と夏場所も小結を務め、三役在位は小結で3場所。春場所では8勝7敗と勝ち越したが、続く夏場所は途中休場となり、小結の座を離れた。

1968年九州場所では前頭7枚目で10勝5敗を挙げ、技能賞を受けた。三賞を受けたのは、現役を通じてこの1回だった。

翌1969年九州場所では、横綱大鵬を蹴返しで破り、金星を手にする。金星は、この1個だけとなった。

10分を超えた三重ノ海戦、幕内最後の引き分け

記録の上で、今も特別な意味を持つ一番がある。1974年秋場所11日目、9月18日の三重ノ海戦だ。

土俵中央で四つに組んだ両者は、ほとんど動かなかった。水入りを挟み、二番後の取り直しになっても決着はつかず、10分を超える攻防の末、審判が下した判定は引き分け。幕内では11年ぶりの引き分けだった。

相手の三重ノ海は当時、低迷の時期にあり、のちに第57代横綱へ上り詰める。この一番を最後に、幕内の取組で引き分けは出ていない。

国立市に荒磯部屋、弟子の荒鷲は幕内へ

1976年秋場所限りで現役を退き、年寄「白玉」を経て「荒磯」を襲名した。1993年5月には二子山部屋から独立し、東京都国立市に荒磯部屋を創設する。2008年11月に定年を迎えた。

師匠として送り出した力士の一人に、モンゴル出身の荒鷲がいる。荒鷲は2002年九州場所に荒磯部屋から初土俵を踏み、その後花籠部屋、峰崎部屋と所属を移した。花籠部屋は、二子山部屋から独立した元関脇太寿山が1992年に再興した部屋で、荒鷲はここで関取に上がる。2012年に花籠部屋が経営難で閉鎖されると、力士らとともに同じ二所ノ関一門の峰崎部屋へ移った。2014年夏場所で新入幕を果たし、幕内に21場所在位して金星3個を挙げた。

荒鷲の断髪式は2021年2月23日、両国国技館で行われた。同じモンゴル出身の横綱鶴竜、元横綱日馬富士ら約330人がはさみを入れ、師匠の峰崎親方(元幕内三杉磯)が大銀杏を切り落とす。入門時の師匠だった山中さんも、この日はさみを入れた一人だった。

荒磯の名跡は、その後別の親方にも受け継がれた。元横綱稀勢の里も一時期「荒磯」を名乗り、2021年に「二所ノ関」を襲名している。いずれも、二子岳の山中さんとは別の人物だ。

昭和40年代から50年代初めにかけて、二子山部屋の最初の関取として幕内に立ち続けた二子岳。多彩な技で知られた元小結が、秋場所の開幕を前に82年の生涯を閉じた。

[文/構成 by スポーツライター 久遠(KUON)]

寄稿者

久遠(KUON)
WEBライター(主にスポーツ記事)経験7年。スポーツ、格闘技が好きで、ボクシング世界チャンピオンが主宰するジムに4年間在籍。自分でも練習を重ね、”3分”の過酷さと濃さを体で知る。観戦もライフワークで、会場には年4回ほど足を運ぶ。選手目線の実感とファン目線の熱量、その両方を武器に、試合の見どころやリングのリアルをライター経験を活かしてわかりやすく伝えます。

コメントはこちら

*
*
* (公開されません)

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)

ライフハック/実用

More

グルメ

湯気の立つホットケーキ風の蒸しまんを割った断面から、つぶあんとバター色のフィリングがのぞく様子

ホットケーキまん、あんバターが9月15日発売 ファミマ全国約1万6500店で税込...

ファミマの「森永製菓監修ホットケーキまん(あんバター)」が9月15日に全国約1万6500店で発売された。税込190円。井村屋のつぶあんとバターフィリングを包んだ中身、6年目・累計700万食のシリーズの歴代価格、今季の中華まんとの価格比較をま...
More

エンタメ

More

社会/ニュース

More

旅行/スポット

More

ファッション/ビューティー

More
Return Top