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姫野花春、釜山国際映画祭の最優秀俳優賞から凱旋 『さとこはいつも』舞台あいさつで喜びを語る

姫野花春、釜山国際映画祭の最優秀俳優賞から凱旋 『さとこはいつも』舞台あいさつで喜びを語る

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第31回釜山国際映画祭のコンペティション部門で最優秀俳優賞を受けた姫野花春(16)が10月17日、東京・池袋シネマ・ロサで映画『さとこはいつも』の凱旋舞台あいさつに立った。受賞は10月15日、帰国は翌16日。沖田修一監督と並んだ姫野は、すごくしびれていると喜びを口にした。映画初出演での受賞だった。

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帰国の翌日、池袋で観客と対面

イベントは「釜山凱旋!ティーチイン付き舞台挨拶」と銘打たれ、上映後に観客の質問に答える形で進んだ。登壇は姫野と沖田監督の2人。まず、沖田監督から姫野へ祝福の大きな花束が贈られた。

釜山から戻って1日。冒頭、姫野は沖田監督に会えたことと、映画を見てくれた人が目の前にいることを喜び、これ以上うれしい空間はないと表現した。イベントの締めくくりには、公開から約1か月がたって笑顔で話を聞いてくれる人がいること、沖田監督とも話せたことに触れ、言葉が合っているか分からないと前置きしたうえで、すごくしびれていると笑顔を見せた。感謝でいっぱいだとも伝えている。

イベント終盤には、釜山で受け取ったトロフィーが披露された。会場はもう一度、祝福の拍手に包まれる。

新設2年目のコンペで、俳優賞は2人

釜山国際映画祭は10月6日から15日まで、韓国・釜山で開かれた。コンペティション部門「釜山アワード」は前回の第30回(2025年)に新設され、今回が2回目となる。

10月15日、釜山・海雲台の映画の殿堂で行われた閉幕式で受賞作が発表された。大賞はイランのマジッド・マジディ監督の作品が手にし、俳優賞は2人。中国の俳優、周迅(ジョウ・シュン)と、『さとこはいつも』の姫野が選ばれた。日本では「最優秀俳優賞」(英語名The Best Actor Award)として報じられている。コンペティション部門の全部門を通じ、史上最年少での受賞だった。

授賞式で姫野は、まだ未熟な自分の演技に目をとめてもらったことへの感謝を述べた。映画は1本目で、おばあちゃんになっても俳優を続けていたいという願いも口にしている。韓国語で「カムサムニダ」とも伝えた。審査員の一人で韓国の俳優チェ・ヒソは、「輝く原石」と出会えた喜びを語った。

現地では10月6日のレッドカーペットに有村架純、石田ひかり、筒井竜平プロデューサーとそろって参加し、7日のインターナショナルプレミア上映、8日の記者会見にも登壇した。レッドカーペットを歩いた後、姫野は「会場全体がすごく熱気があり、いろんな映画に対する愛に溢れた、温かい空間で、その中に入れることが夢のようでした」と現地の印象を語り、この映画が持つエネルギーがもっと多くの人に広がってほしいと願っていた。仕事の都合で現地に行けなかった沖田監督は、レッドカーペットと授賞式をオンラインの映像で見守ったという。舞台あいさつで、監督はその様子を夢みたいな光景だったと振り返った。

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「さとこ!」コールと翻訳機のサイン会

姫野が語った釜山の様子は、具体的だった。空港に着いた時点で映画祭の熱気を感じたという。閉幕式では会場から「さとこ!さとこ!」のコールが起きた。

韓国の観客は作品を素直に受け止め、周りの人がそれぞれ独り言のようにツッコミを入れたり、韓国語で驚きを表す「アイゴー」と声を漏らしたりしながら楽しんでいたそうだ。有村が演じる西田沙都子のパートには韓国ドラマが絡む場面があり、本場の観客に特にウケた。姫野演じる中井聡子が歌舞伎の鑑賞中に眠り込む場面でも笑いが広がる。日本と韓国で笑いのポイントが違うことを、姫野は肌で知った。

現地ではサイン会も開かれた。翻訳機を使って感想を伝えてくれるファンもいて、作品が国境を越えて届いたことがうれしかったという。劇中の塩辛茶漬けのような食の描写が海外でどう受け止められるか気にしていた沖田監督は、予想以上に伝わっていたことに驚いていた。

受賞祝いは品種違いのサツマイモ

ティーチインでは、好きな食べ物を聞かれた姫野が、芋、とりわけサツマイモが大好きだと答えた。すると、沖田監督から受賞祝いに大量の生のサツマイモが贈られていたことが明かされる。贈り物には受賞を祝う言葉と、韓国語で「ありがとう」を意味する言葉が書かれていたという。

監督は品種にこだわりがあると聞いて、スーパーで1個ずつ買ったと説明した。姫野は、どうして1個ずつ包装が違うのだろうと思っていたそうで、会場は笑いに包まれた。

好きな食べ物の話には伏線があった。文字を書いたり読んだりする場面が多い作品のため、オーディションでは好きな食べ物へのラブレターを書く課題が出た。姫野は5分で芋への思いを書くよう求められ、沖田監督は姫野が長い文章を書き上げていたことを覚えていた。

創作や表現について観客から質問が出た場面では、姫野は映画の好きなところを語ったうえで、カメラの前に立つと思い通りにいかず、コントロールもできないけれど、その時間で経験が積み重なっていると答えている。

約300人のオーディションから主演、沖田監督は万感

『さとこはいつも』は、長編映画デビュー20周年を迎えた沖田監督が脚本も手がけた完全オリジナル作品だ。年齢も育った環境も違う3人の「さとこ」が、自分の人生を物語として書き始め、少しずつめぐり合っていく。上映時間は139分。

35歳の西田沙都子を有村、55歳の飯島里子を石田、同級生に恋する中学3年生・15歳の中井聡子を姫野が演じるトリプル主演作となった。聡子は鼻炎持ちで、ソフトボール部に入っている。聡子に影響を与える国語教師・寺尾を吉田羊、沙都子と6年に及ぶ不倫を続ける村井をオダギリジョー、里子の夫・重明を筒井道隆が演じる。音楽は柴田聡子、主題歌「シミレ(feat.柴田聡子)」は折坂悠太が手がけた。配給はハピネットファントム・スタジオで、9月18日からTOHOシネマズ日比谷ほか全国で公開されている。

姫野は約300人が参加したオーディションで聡子役に選ばれた。演技経験はほぼゼロ。それでも沖田監督は、自分の作品にとても似合うと直感したという。筒井プロデューサーも「運命的な出会い」と表現している。5月の公開決定時、姫野は合格を聞いた瞬間を「人生で一番高く飛び跳ねました」とコメントしていた。それから約5か月で、海外の映画祭のトロフィーを手にしたことになる。

舞台あいさつの最後、沖田監督は、姫野を見たらみんな驚くだろうとは思っていたが、予想を超えたと話した。釜山で賞をもらい、観客の前でトロフィーを持って写真を撮る。こんな日が来るとは思わなかったと、16歳の主演俳優の隣で監督は感慨をにじませた。

[文/構成 by エンタメライター 和泉ユウスケ]

寄稿者

和泉ユウスケ
映画とアニメのことばかり書いているライターの和泉です。Webメディアで映画レビューを書き始めて9年になりました。深夜アニメは毎クール20本前後を追いかけ、映画館には月に数回、公開初日にもよく出没します。公開日・配信日・キャスト情報は正確に、ネタバレには慎重にお届けします。

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