伊藤美誠の現在、日本代表を離れる決断「一人の人間として自分自身を見直す時間にしたく」

時間がない人向けの30秒で理解ゾーン
卓球の東京五輪金メダリスト、伊藤美誠(25)=スターツ=が日本代表を離れた。日本卓球協会が公表した10月1日付の2026年度後期女子ナショナルチームでは、選手7人にも候補選手11人にも名前がない。伊藤は文面で「一人の人間として自分自身を見直す時間にしたく」と心境を明かした。引退は表明していない。
後期ナショナルチームの名簿に名前がなかった
日本卓球協会の公式サイトに載った後期女子ナショナルチーム選手は、張本美和、早田ひな、大藤沙月、佐藤瞳、橋本帆乃香、長﨑美柚、面手凛の7人だった。適用は10月1日付。協会の発表は10月15日と報じられている。
協会のナショナルチームは、国際大会に向けた強化の中心となる選手の名簿で、年度の前期と後期で組み直される。前期の名簿は違った。5月18日付の前期女子ナショナルチーム選手7人の中に、伊藤は「スターツ」の所属で入っている。後期は伊藤が抜け、前期に候補選手だった佐藤が選手へ上がった。
佐藤は10月1日から11日まで中国で開かれたWTTチャイナスマッシュの女子シングルスで、日本女子として初めて決勝に進み準優勝したカットマンだ。ナショナルチーム選手に入るのは、2023年10月1日付の2023年度後期以来、3年ぶりとなった。
伊藤の名前は、11人の候補選手の欄にも見当たらない。協会が10月12日発表の世界ランキングとして掲載した表で、伊藤は25位。日本選手の中では、候補選手に入っている木原美悠(19位)、横井咲桜(21位)に次ぐ9番目の順位だ。
協会の名簿ページに、伊藤が外れた理由の説明はない。離れる期間についても、本人・協会とも明らかにしていない。
本人が文面で明かした「今回の決断」
なぜ代表から外れたのか。
10月17日に報じられた取材への回答で、伊藤は文面で今の気持ちを伝えた。回答の言葉は次のとおりだ。
「今後のことを考えながら日々を過ごす中で、日本代表を離れてまっさらな状態で考えられる環境に身を置きたいと考えるようになりました。卓球だけでなく一人の人間として自分自身を見直す時間にしたく、これからの人生を幅広く考えたりチャレンジしたい想いもあり、今回の決断に至りました」
「今回の決断」という言葉から分かるとおり、代表を離れるのは伊藤自身が選んだ道だった。本人は「日本代表を離れて」と書き、競技をやめるとは書いていない。考える場所を変えたい、卓球以外も含めて自分を見直したい。文面にはこの思いに加え、これからの人生を幅広く考えたりチャレンジしたいという気持ちも書かれているが、具体的な今後の予定には触れていない。
伊藤は10月21日に26歳になる。10代のころから日本代表として世界の大会を回ってきた選手が、代表の外に身を置いて自分の将来を考える。
東京で3つのメダル、パリは届かず
静岡県磐田市出身の伊藤が五輪の舞台に初めて立ったのは、15歳で出た2016年のリオデジャネイロ五輪。福原愛、石川佳純と組んだ女子団体で銅メダルを手にしている。
5年後の2021年東京五輪では、この大会から採用された混合ダブルスで水谷隼と組み、7月26日の決勝で中国の許昕、劉詩雯組と対戦した。最初の2ゲームを落としてから逆転し、ゲームカウント4-3で勝利。日本の卓球界が五輪で初めて手にした金メダルだった。伊藤はさらに女子団体で銀、女子シングルスでも日本女子として初めてのメダルとなる銅を加え、1大会で3つのメダルを持ち帰った。
だが、パリへの道は険しかった。選考の最終大会となった2024年1月の全日本選手権で、伊藤は女子シングルス6回戦に3-4で敗れ、選考ポイントで平野美宇を上回れなかった。2月5日の代表発表では、団体戦要員の3人目に、選考ポイント4番手の張本美和が強化本部の推薦で選ばれた。ポイント3番手だった伊藤は落選し、女子は早田、平野、張本の3人に決まって、伊藤は3大会連続の五輪出場を逃した。伊藤は2月の会見で、自分はリザーブには向かないと話しており、6月に決まった補欠(リザーブ)は、女子が木原美悠となった。夏のパリ五輪では、日本女子は伊藤のいない3人で団体の銀メダルを手にしている。
当時の女子日本代表の渡辺武弘監督は「伊藤選手は素晴らしい選手なので、4人選べるなら4人目で絶対に選んでた」と語り、苦しい判断だったことを明かしている。
ドーハの銅、9月のアジア大会でも代表
パリの後、伊藤は再び結果を出す。2025年5月の世界選手権ドーハ大会では、5月23日の女子シングルス準々決勝で中国の王芸迪を4-1で破った。伊藤は14歳だった2015年の蘇州大会で女子シングルス8強に入り、それまで福原愛が持っていた最年少記録を塗り替えた。その後は8強で敗れる大会が続き、その準々決勝の壁を10年後のドーハでようやく越えた。翌24日の準決勝は世界1位の孫穎莎に0-4で敗れたが、3位決定戦がないため銅メダルが決まり、世界選手権のシングルスで初めての表彰台となった。
2026年は、2月に発表された4〜5月の世界卓球団体戦(ロンドン)の女子代表5人には入らなかったが、ナショナルチームの選手として日本代表の一員であり続けた。協会は4月13日、9月の愛知・名古屋アジア競技大会の女子日本代表候補5人を発表し、伊藤は「世界ランキング上位枠」でその1人に入った。面手、張本、早田、長﨑と並ぶ顔ぶれで、伊藤にとっては、出身地の静岡と同じ東海地方で迎える大舞台だった。9月24日の決勝は中国に0-3で敗れたが、日本は2大会連続の銀メダル。伊藤は第3試合に出て、蒯曼に0-3で敗れた。
後期の名簿が報じられたのは、その決勝から約3週間後だった。アジア大会の決勝でコートに立っていた選手が、次の名簿では候補選手の欄にもいない。前期から後期へ、名簿の顔ぶれは1人だけ入れ替わった。
25歳の「現在」と、これから
10月17日の報道でも、伊藤の所属はスターツと紹介されている。ナショナルチーム以外の国内大会への出場予定や、国内のTリーグへの参戦について、本人や所属先から新しい発表は出ていない。Tリーグでは2022年からの2シーズンを日本生命レッドエルフで戦い、2024年4月に契約満了が発表されている。
日本女子の代表争いは、伊藤が抜けた後も続く。協会の後期名簿は張本、早田らを中心に組まれ、10月19日からはウズベキスタン・タシケントでアジア選手権が始まる。2027年5月にはカザフスタン・アスタナで世界選手権の個人戦が控え、協会は10月16日にその代表選考基準の一部変更を公表した。
伊藤が次にどこで、どんな形でラケットを握るのかは、まだ本人の言葉の中にしかない。「これからの人生を幅広く考えたりチャレンジしたい」。リオ、東京、ドーハと表彰台に立ってきた25歳は、代表を離れ、自分を見つめ直す時間に入った。
[文/構成 by スポーツライター TAKU]














































































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