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ジムニー、他社が対抗車を作らない理由を整理 採算や部品・設備の共通化、規制対応のコスト

ジムニー、他社が対抗車を作らない理由を整理 採算や部品・設備の共通化、規制対応のコスト

時間がない人向けの30秒で理解ゾーン

スズキの「ジムニー ノマド」が2025年1月30日の発表からわずか4日で約5万台の受注を集めた。月間販売目標1200台に対し、約3年半分の注文が一気に入った計算だ。これほどの人気にもかかわらず、他社は今も対抗車を投入していない。背景には採算性の低さと、部品や設備を他車種と共通化できない事情がある。

発表4日で受注5万台、月販目標の42カ月分

スズキは2025年1月30日、5ドアの派生モデル「ジムニー ノマド」を発表した。発表直後から注文が殺到し、わずか4日で受注を停止する事態となった。台数は約5万台に上り、月間販売目標の1200台と比べると、約42カ月分、3年半分の販売計画を4日間で受注した計算になる。

その後は増産を決めたものの、人気は収まらなかった。現在の納車待ちは2年先ともいわれ、発表から1年半以上がたった今も、需要に供給が追いついていない。

これほど分かりやすいヒット商品であれば、他の自動車メーカーが黙っているはずがない。だが実際には、ジムニーの対抗車といえる本格クロスカントリー車は、国内でほとんど見当たらない。

他社は「作らない」のではなく「作れない」

ビジネスインサイダージャパンの分析によると、この状況は他社が「作らない」のではなく「作れない」ことに起因する。理由の中心にあるのは採算性だ。単純な1台あたりの利益だけでなく、他の車種と部品や生産設備をどこまで共通化できるかが、量産車の収益を大きく左右する。

ジムニーのような本格クロスカントリー車は、ラダーフレームや縦置きエンジン、機械式の副変速機、リジッドアクスルといった専用の骨格・駆動系を必要とする。一般的なFFベースのプラットフォームなら、複数の車種で開発費や生産設備、部品調達の費用を分け合える。ところが本格クロカン専用の構造では、その分担が難しい。

開発費、生産設備への投資、部品調達の体制、そして衝突安全や環境規制への対応。これらはどれも高額な固定費であり、1車種だけで背負うにはあまりに重い。販売台数が少ないほど、モデルを続けること自体が経営判断として重くのしかかる。

半世紀の蓄積という、資金では買えない資産

採算の問題に加えて、スズキが積み重ねてきた歴史も大きい。初代ジムニーの発売は1970年にさかのぼる。2020年に50周年を迎えた時点で、199の国と地域に展開し、世界累計の販売台数は300万台に達していた。

この半世紀にわたる産業基盤は、一朝一夕には築けない。部品を供給するサプライチェーン、生産のノウハウ、故障や修理に対応する体制まで、長年の実績があって初めて成り立つ。仮に他社が今から本格クロカン市場に参入しようとしても、この蓄積は資金だけでは買えない資産だ。

ジムニー特有のプロポーションを再現しようとする場合も、壁は同じところにある。角ばった車体、短いホイールベース、高い最低地上高を実現しようとすれば、結局は非効率な専用構造にたどり着く。投資を回収できる見込みが立ちにくく、二の足を踏む要因になっている。

三菱がパジェロ系列を拡大、対抗車と決まったわけではない

唯一、動きがあるとすれば三菱自動車だ。2026年5月29日に発表した新しい中期経営計画で、看板車種「パジェロ」をシリーズ展開する方針を打ち出した。まず基幹モデルの新型パジェロを2026年秋に世界初公開し、2026年度内に発売する計画で、ラインアップにはコンパクトSUVやスモールSUVといった小型モデルも将来加える方針だ。

三菱にはかつて、軽自動車の「パジェロミニ」や5ドアの「パジェロイオ」を手がけ、本格四駆でジムニーと直接競合していた時期がある。今回の小型モデル展開は、その系譜を思い起こさせる内容だ。

ただし、ジムニーと同クラスで直接競合しうる小型モデルについては、車名・仕様・発売時期のいずれも現時点では明らかにされていない。基幹モデルの新型パジェロ自体もトライトンのラダーフレームを流用した中型SUVであり、軽自動車のジムニーとは価格帯もサイズも異なる。三菱が「ジムニー対抗車」を作ると明言したわけでもなく、ジムニーの牙城が崩れるかどうかは、まだ見通せない。

新型車の発表が相次ぐ中、続くジムニーの特異な立ち位置

2026年も国内の新車市場では、新型車の発表が相次いでいる。7月28日には、BYDの新型EV「ラッコ」が発売され、CEV補助金15万円を適用した実質199万5000円からの価格で3グレード展開を始めた。

関連記事:BYD ラッコ、本日発売 CEV補助金15万円で実質199万5000円から3グレード展開

こうした電動化や低価格志向の新型車が次々と登場する一方で、ジムニーが持つ「本格四駆」という価値は、価格競争とは別の物差しで測られている。効率だけを追えば生まれない車だからこそ、代わりが見つからない。

当面、ジムニー ノマドの納車待ちは解消しそうにない。三菱の新型パジェロ系列が具体化するまでには、まだ時間がかかりそうだ。それまでは、スズキが半世紀かけて築いた地位を、正面から揺るがす動きは出てこないだろう。

[文/構成 by MEDIA DOGS編集部]

寄稿者

MEDIA DOGS 編集部
メディアドッグス株式会社のMEDIA DOGS 編集部チーム。インターネットマーケティングに約10年携わるメンバーで編成し、企画・取材・執筆から公開後の改善まで一貫して担当。「出会いを、設計する。」のもと、人と企業が正しく出会える場をつくるために、一次情報の確認とファクトチェックを徹底。情報をわかりやすく誠実に届け、読者の疑問を解決します。

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