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彦根城、文化審議会が国内候補に推薦決定 暫定リスト入りから34年、ユネスコの登録審査は2年後の見通し

彦根城、文化審議会が国内候補に推薦決定 暫定リスト入りから34年、ユネスコの登録審査は2年後の見通し

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国の文化審議会は9月3日、彦根城(滋賀県彦根市)を世界文化遺産の国内推薦候補に選ぶと決めた。1992年の暫定リスト入りから34年、5回目の提案書でつかんだ前進だ。手続きが順調に進めば、2028年のユネスコ世界遺産委員会で登録の可否が審査される見通しとなった。

文化審議会が国内推薦候補に選定、5度目の提案書で前進

文化審議会世界文化遺産部会は9月3日、彦根城を「今年度推薦することが適当と思われる世界文化遺産の候補物件」として選定したと答申した。国内候補への選定は、日本政府が世界遺産条約に基づきユネスコへ正式に推薦書を出すための前提条件にあたる。滋賀県と彦根市でつくる彦根城世界遺産登録推進協議会は、5月25日に推薦書案の第5版を文化庁へ提出していた。

彦根城世界遺産登録推進協議会は、2028年(令和10年)のユネスコ世界遺産一覧表への記載を目標に掲げる。今後は9月末までに暫定版の推薦書をユネスコへ提出し、2027年2月1日までに正式な推薦書を出す段取りだ。この通りに進めば、2028年の世界遺産委員会で登録の可否が決まる。

暫定リスト入りから34年、5度目の挑戦がつかんだ光

彦根城が世界遺産暫定リストに記載されたのは1992年。日本が世界遺産条約を締結した年で、姫路城も同時にリスト入りしていた。だが姫路城は17世紀前半の木造城郭建築の様式を伝える「人間の創造的才能を表す傑作」として彦根城より先に単独で世界遺産へ登録され、彦根城には姫路城とは異なる価値をどう示すかという課題が残った。姫路城が天守や櫓の意匠そのものを評価されたのに対し、彦根城が掲げるのは、天守だけでなく城と城下町がまとまって残ることで見えてくる大名統治の仕組みという、性格の異なる価値だ。

滋賀県と彦根市は2020年に登録推進の協定を結び、2023年にはユネスコの事前評価制度を使って申請書を提出した。ユネスコの諮問機関イコモス(国際記念物遺跡会議)は、世界遺産委員会に先立って書類審査や現地調査を行い、登録の可否について専門的な勧告をまとめる組織だ。そのイコモスは2024年10月、彦根城単独では大名統治のあり方を十分に説明しきれないと指摘し、他の城郭との組み合わせ推薦も含めた再検討を求めている。

なぜ、そこまで慎重な判断が続いたのか。

2025年8月26日、文化審議会は2027年度の登録候補としての選定を一度見送った。彦根城が主張する「大名統治システムの物証」としての価値について、説得的な根拠が示されていないと判断したためだ。彦根市の田島一成市長は見送りを受けて「課題を修正し推薦を勝ち取りたい」と述べ、2028年登録を目指す方針を崩さなかった。今回の選定は、その立て直しが実った結果だった。

「大名統治システム」を伝える城、国宝5城の一つ

彦根城は滋賀県彦根市にあり、江戸時代またはそれ以前に建てられた天守が今も残る「現存12天守」に数えられる。そのうち国宝に指定されているのは彦根城を含めてわずか5城のみで、残る4城は姫路城、松本城、犬山城、松江城。関ヶ原の戦いの後に近江へ封じられた井伊直政の跡を継いだ長男・直継が1604年に築城を始めた。徳川家康の号令による天下普請で尾張藩や越前藩なども工事に加わり、弟の直孝の代を含め約20年をかけて1622年に完成させた。天守は大津城から移した部材を使う複合式望楼型で、1952年に国宝の指定を受けている。築城以来、井伊家が江戸時代を通じて彦根藩主を務めた。幕末の大老・井伊直弼も、この井伊家に生まれている。

彦根城世界遺産登録推進協議会は、彦根城が幕府による大名統治のあり方を今に伝える城郭だと位置づける。大坂の陣が終わると、日本の城は戦うための砦から、大名が領地を治め、民の暮らしと秩序を守るための拠点へと役割を変えた。彦根城博物館でかつて学芸員を務めた母利美和・京都女子大学教授は近世日本の政治・社会史が専門で、天守や櫓だけでなく城下町全体の構造から、その統治のあり方を読み解けると説明してきた。天守、櫓、石垣に加え、藩主が政務を執った御殿の跡、家臣団の屋敷跡、大名庭園として今も一般公開されている玄宮園までまとまって残る点が、他の城にはない強みとされる。

2028年登録へ、知事「引き継ぐことこそ使命」

三日月大造知事は決定を受け「登録は決してゴールではなく、先人により守られてきた世界的な価値を持つ貴重な文化財を、未来に向けて引き継いでいくことこそが、私たちの使命と考えています」とコメントした。30年以上にわたる働きかけが、一つの区切りを迎えた。

今後はイコモスによる書類審査と現地調査を経て、世界遺産委員会の判断を待つことになる。2025年の見送りで指摘された「大名統治の概念について説得的な根拠が示されていない」という課題をどこまで解消できたかが、2028年の可否を左右する。2026年7月には奈良県の「飛鳥・藤原の宮都」が世界文化遺産として登録されたばかりだ。彦根城の推薦が実れば、日本の世界文化遺産はまた一つ増えることになる。34年間追い続けてきた悲願まで、残る関門はあと少しだ。

関連記事:「飛鳥・藤原の宮都」世界文化遺産に登録決定 構成19資産の全リストと、提案から20年かかった歩みを整理

[文/構成 by MEDIA DOGS編集部]

寄稿者

MEDIA DOGS 編集部
メディアドッグス株式会社のMEDIA DOGS 編集部チーム。インターネットマーケティングに約10年携わるメンバーで編成し、企画・取材・執筆から公開後の改善まで一貫して担当。「出会いを、設計する。」のもと、人と企業が正しく出会える場をつくるために、一次情報の確認とファクトチェックを徹底。情報をわかりやすく誠実に届け、読者の疑問を解決します。

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