原田マハ、初監督作『無用の人』が第74回サン・セバスチャン国際映画祭コンペ部門に選出

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作家の原田マハが自ら脚本・監督を務めた初監督作『無用の人』が、第74回サン・セバスチャン国際映画祭のコンペティション部門に選出された。同映画祭はスペイン北部バスク地方のサン・セバスチャンで9月18日から26日まで開催され、本作はワールドプレミア上映される。主演は蒼井優、日本公開は2027年1月の予定だ。
蒼井優主演で9月にワールドプレミア
原田は7月28日、初監督作『無用の人』が第74回サン・セバスチャン国際映画祭のコンペティション部門に選出されたと発表した。同映画祭はスペイン北部バスク地方のサン・セバスチャンで9月18日から26日まで開かれ、本作はここでワールドプレミア上映を迎える。
物語の主人公は、美術館の監視員として働く羽島聡美。ひと月前に孤独死した父・唯一の遺品から届いた謎の鍵をきっかけに、家族も知らなかった父の晩年の姿をたどっていく人間ドラマだ。聡美を蒼井優、父・唯一をイッセー尾形が演じ、2人は本作が初共演となる。聡美が交流を深める古道具屋の店主タクを永山瑛太、聡美の母・柊子を渡辺えりが演じた。上映時間は109分。日本での公開は2027年1月を予定している。
高校生の手紙が監督転身のきっかけに
原作は、原田が2014年に発表した短編集「あなたは、誰かの大切な人」(講談社文庫)に収録された同名の短編小説だ。この短編が高校の現代国語の教科書に採用され、読んだ女子高生から「小説を全部読みたくなって購入しました。最後まで読んだらまるで映像を見ているようでした」という手紙が届いたことが、映画化を考えるきっかけになったという。原田は「映画監督になるという明確な意思はなかった」としながらも、小説を書きながら常に頭の中で映像を描いてきたと明かし、脚本・監督を自ら手がける道を選んだ。
原田は1962年、東京都生まれ。関西学院大学と早稲田大学を卒業後、美術館やニューヨーク近代美術館での勤務を経て、2002年にフリーのキュレーターとして独立した。2006年に「カフーを待ちわびて」で作家デビューし(2005年に同作で第1回日本ラブストーリー大賞を受賞)、同作は映画化もされている。以降、美術を題材にした作品を数多く手がけ、2012年に「楽園のカンヴァス」で山本周五郎賞、2017年に「リーチ先生」で新田次郎文学賞、2024年には「板上に咲く」で泉鏡花文学賞を受賞した。美術館を舞台にした「無用の人」の物語には、キュレーター出身の原田ならではの視点も重なる。
これまでも「キネマの神様」「総理の夫」など複数の作品が映画化されてきたが、いずれも原作者としての立場だった。脚本と監督を自ら兼ね、撮影現場の中心に立ったのは今回が初めてとなる。
ピカソの絵画を題材にした「暗幕のゲルニカ」の取材でバスク地方を訪れたこともあり、選出の発表では「豊かな文化が息づく風土で芸術と平和を愛する人々に出会い、深い感銘を受けました」と語っている。
出演者もそれぞれの思いを語る
コンペティション部門への選出について、原田は「伝統あるサン・セバスチャン国際映画祭コンペティション部門に選出され、望外の喜びです」とコメントを寄せた。続けて「父と娘のささやかな幸せを描いた本作が、この映画祭から世界へ飛び立ち、多くの方々の心の窓辺に留まる幸せの小鳥となることを願っています」とつづった。
サン・セバスチャン国際映画祭は1953年に創設された歴史ある映画祭だ。現地バスク語では「ドノスティア・シネマルディア」とも呼ばれる。国際映画製作者連盟が定めるAカテゴリーに数えられ、欧州ではカンヌ、ベルリン、ヴェネチアに次ぐ格式の映画祭だ。コンペティション部門は、他の映画祭で公開されていない近作だけが対象になる狭き門でもある。
キャスト発表の際には、出演者からもコメントが寄せられた。主演の蒼井優は「穏やかに現場を見つめていらした原田監督の眼差しから、私は多くのことを学ばせていただいたように思います」と撮影現場での様子を明かし、「『無用の人』という言葉に、胸がほんの少しきゅっとなる方に、ぜひご覧いただきたい作品です」と呼びかけた。父・唯一役のイッセー尾形は、劇中で描かれる茶の湯の場面のために茶人の千宗屋から指導を受けたといい、「魅力的な人たちに出会えて、無用どころか、僕にとってはありがたい作品です!」と述べている。タク役の永山瑛太は家族や伝統工芸への思いを原田から学んだとして「原田マハさんのエネルギーによって人間はどこに向かえば良いのか少しだけ分かった気がしました」と語った。柊子役の渡辺えりは、登場人物たちが追い求める目に見えない「愛」について触れている。
2027年1月公開、注目集まる
サン・セバスチャン国際映画祭のコンペティション部門でのワールドプレミアは、小説家から映画監督へと踏み出した原田にとって大きな一歩となった。美術館学芸員としての経験と、数々の美術小説で培ってきた視点。それが初めての映像作品でどう結実するのかが問われる。
『無用の人』は9月18日からの映画祭本番を経て、日本では2027年1月に全国公開される。父と娘、そして家族が知らなかった時間をめぐる物語が、世界の映画関係者にどう受け止められるのか。結果は9月26日までの会期中に明らかになる。
[文/構成 by MEDIA DOGS編集部]
































































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