くすのき花火が休止へ、来場者増でボランティア運営限界 岩国の花火大会、24年前から開催

時間がない人向けの30秒で理解ゾーン
山口県岩国市の「岩国くすのき花火フェスティバル」が休止となる見通しになった。2002年から24年続いた夏の花火大会だ。来場者の急増でボランティア運営が限界を迎え、実行委員会は今年10月の開催を見送った。
樹齢300年の楠が見守る、住民手作りの花火大会
会場となってきたのは、岩国市川下地区にある楠町1丁目の「くすのき広場」。樹齢300年を超える大きな楠(くすのき)の木が立ち、大会名もこの木に由来する。地元の自治会や商工業者たちがつくる実行委員会が主催し、企業や個人からの協賛金を集めて運営してきた。当日の会場運営や警備、誘導まで、地域住民のボランティアが中心となって支えてきた大会だ。
大規模な花火大会のように、行政の予算で専門の警備会社を入れているわけではない。資金も人手も、地域の善意に頼ってきた運営体制だ。
例年は、川の水への感謝を込めた神事や日中のステージ企画を経て、夜に錦川から花火を打ち上げる構成だった。臨時駐車場には近くの小学校の校庭をあてるなど、運営側も工夫を重ねてきた。2002年の開始から24年、こうして地域に根付いた夏の恒例行事として続いてきた。
SNSで拡散、昨年は例年より最大千人増の人出に
転機になったのは昨年の大会だった。もともとは地域住民が中心となって楽しんできた小規模な祭りだったが、会場の様子が交流サイト(SNS)で発信されるようになり、地域の外にもその存在が一気に知られていく。昨年は6月7日に開催され、夕方の錦川水恩感謝祭や開会セレモニーを経て、午後8時から花火が打ち上げられた。県外を含む遠方からの来場者が目立って増え、例年より500~1000人ほど多い、約2500人が「くすのき広場」に押し寄せたという。
くすのき広場はもともと限られた広さの会場で、収容できる人数には限りがある。あふれた人の列は広場の外へと伸び、周辺の道路までごった返す事態になった。錦川からは例年通り約1800発の花火が打ち上げられ、大会自体は大きな事故の報告もなく終えている。それでも、この規模のまま大会を続けられるかという課題が、実行委員会には重くのしかかった。
10月開催も断念、想定超える人出に安全確保できず
これまでの開催時期は例年5月から6月にかけての初夏だった。実行委員会は今年、時期を秋の10月へ移し、仕切り直して準備を進めていた。だが、昨年以上の来場者が集まれば、住民ボランティア中心の体制では警備や誘導が追いつかない。その懸念は最後まで消えず、10月の開催も断念に追い込まれた。24年続いた大会は、こうして休止という結論に至る。
地元の自治会や商工業者が協賛金を出し合い、住民ボランティアが警備や誘導を担う。この手作りの体制こそが、大会を24年間支えてきた土台だった。皮肉にも、その人気の広がりが、同じ体制では支えきれない状況を招いた。
再開のめど立たず、手作り花火大会に共通の課題
現時点で、フェスティバルの再開時期や条件について具体的な発表はない。SNSでの拡散をきっかけに来場者が急増し、運営が追いつかなくなる構図は、岩国に限った話ではない。ボランティアの厚意に支えられてきた小規模な花火大会ほど、人気が出た途端に体制が追いつかなくなりやすい。
来場者が増えること自体は、地域にとって歓迎すべき話だ。だが、警備や誘導を担う人手、駐車場や周辺道路の許容量といった安全面の備えは、来場者数に比例して自動的に増えるわけではない。手弁当に近い体制で支えられてきた地域行事ほど、この差が急速に開きやすい。
花火大会の休止や中止をめぐっては、運営面の事情が理由になるケースが各地で相次いでいる。滋賀県では今年8月、長浜・彦根・高島の3市域で初めて計画されていた大規模な花火大会が、消防への必要な申請が行われないまま中止となったばかりだ。開催地とされた3市はこの大会の主催者・共催者ではなく、開催前から「大会に関与していない」と注意を呼びかけていた。
関連記事:琵琶湖三市同時花火大会が中止、実行委が発表 消防への申請は8日時点で確認されず、観覧券の扱いは検討中
岩国のケースは行政手続きではなく安全確保の観点からの休止であり、消防への必要な申請そのものが行われていなかったことが理由だった滋賀県のケースとは、直接の原因が異なる。それでも、地域に支えられてきた花火大会が、必要な備えを十分に整えられないまま実施に踏み切らず、休止や中止という判断に至った点は共通している。
地域住民にとっては、夏の一大行事が姿を消すことへの寂しさも小さくないだろう。それでも、実行委員会は無理を重ねてまで開催を強行する道を選ばなかった。
今回の一連の報道で使われているのは「廃止」ではなく「休止」という言葉だ。「休止」という表現からは、大会そのものをやめると決めたわけではなく、再開の道を探る余地が残っていると読み取れる。24年間続いた地域の夏の恒例行事を、規模や運営体制をどう見直した上で次につなげるかは、実行委員会の今後の判断にかかっている。
[文/構成 by MEDIA DOGS編集部]


































































コメントはこちら