柳瀬雄之監督死去、59歳 心筋梗塞 「りぼん」持ち込みから30年──「北斗の拳」「NARUTO」「聖闘士星矢」を支えたアニメ人生とその経歴、妻が明かした最期「本人が1番びっくりしている」

時間がない人向けの30秒で理解ゾーン
アニメ監督・アニメーターの柳瀬雄之(やなせ・ゆうじ)さんが8月22日、急性心筋梗塞のため死去した。59歳だった。「北斗の拳」「聖闘士星矢Ω」「NARUTO疾風伝」など数々の人気作を支えた30年のキャリアの持ち主で、死去時は放送中のアニメ2本で監督を務めていた。妻の小岩正美さんは本人のXを通じ「突然すぎて家族もまだ実感が湧かない」とつづった。
↓ 詳細が気になる方は、このまま下へ ↓
放送中のアニメ2本を抱えたまま、突然の別れ
9月2日、アニメ「最強出涸らし皇子の暗躍帝位争い」の公式サイトと、「世界最強の後衛 〜迷宮国の新人探索者〜」の公式Xが、相次いで柳瀬雄之さんの訃報を発表した。どちらも柳瀬さんが監督を務め、現在TOKYO MXなどで放送中の作品だ。
「突然のご逝去の報に接し、スタッフ・関係者一同、いまだ受け入れがたい気持ちであり、悲しみに堪えません」。「最強出涸らし皇子の暗躍帝位争い」製作委員会はそう記した。
「世界最強の後衛」側も「情熱と温かい人柄で本作の制作現場を率いてくださいました」と追悼している。
所属する制作会社MAHO FILMも同日、公式Xで訃報を伝えた。「弊社所属社員の柳瀬雄之氏が令和8年8月22日心筋梗塞により享年59歳にて逝去いたしました」。葬儀は遺族の意向で近親者のみで執り行われたという。
関連記事:柳瀬雄之監督、放送中のアニメ”2本同時”のさなかに急逝…「世界最強の後衛」「出涸らし皇子」は今後どうなる?ファン衝撃「信じられない」
妻がXで明かした胸の内「本人が今1番びっくりしている」
制作会社の発表のあと、柳瀬さん本人のXアカウントが更新された。投稿したのは妻の小岩正美さんだ。
「妻の小岩正美です。夫柳瀬雄之は8月22日急性心筋梗塞により永眠いたしました(享年59歳)」
そう切り出したうえで、こう続けた。
「突然すぎて家族もまだ実感が湧かない日々ですが本人が今1番びっくりしていると思います」
「今までお世話になった方々 応援してくださった方々 仲良くしていただいた方々 本当にありがとうございました」
小岩さん自身もアニメーターで、「まんが日本昔ばなし」などに参加した経歴を持つ。同じ業界で歩んできたパートナーの、あまりにも唐突な死だった。
「りぼん」に持ち込んだ少年、アニメの世界へ
柳瀬さんがアニメ業界に入る前に目指していたのは、漫画家だった。
2017年12月、ライブハウス情報誌「Rooftop」のインタビューで、柳瀬さんはこう振り返っている。「元々、絵でご飯を食べれるようになりたいというのがあったんです」。上に姉がいて、親戚のお姉さんも近所に住む環境で育った柳瀬さんは少女漫画に親しみ、小学6年のとき庄司陽子の「生徒諸君!」にハマったという。
漫画を持ち込んだ先は、少女漫画誌「りぼん」(集英社)だった。編集者からの評価は”あと一歩で賞”レベル。「僕は才能がないんだと思って」と、持ち込みは1度きりでやめた。
かといって安定した道を選んだわけではない。「漫画家としてデビューできるかもわからないですし」。すぐに生活できる仕事を求め、アニメ雑誌に載っていた募集に応募する。採用されたのは、サンライズと中村プロダクションの合作を手がける制作会社。ここからアニメーター人生が始まる。
作画監督として支えた国民的タイトルの数々
1996年頃から作画監督として活動を始めた柳瀬さんは、以後30年にわたって途切れることなく作品に携わり続けた。
1997年の「超魔神英雄伝ワタル」、2001年の「シャーマンキング」。2003年には「人間交差点」、2005年に「ARIA The ANIMATION」。2008年の「北斗の拳 ラオウ外伝 天の覇王」では絵コンテと作画監督を兼任し、2010年には「遊☆戯☆王5D’s」、2012年に「聖闘士星矢Ω」と、名だたるタイトルの映像を支え続けた。
やがて演出にも手を広げる。きっかけは「誘われたから」だと同じインタビューで語っている。「作画監督をやるはずだったんですけど、ついでに演出もやってみたらって誘われたんです」。最初の作品ではうまくいかず悔しい思いをしたが、次の作品で要領を掴んだ。「NARUTO -ナルト- 疾風伝」や「イナズマイレブン アレスの天秤」でも演出を担い、作画と演出の両面からアニメ制作を支える存在になっていく。
2014年、初監督「ひめゴト」から広がった世界
監督としてのデビューは2014年、ショートアニメ「ひめゴト」だった。同年には「ポケットモンスター XY」で演出も担当している。
以降、柳瀬さんはMAHO FILMを拠点に、いわゆる”なろう系”と呼ばれるライトノベル原作の異世界アニメを次々と手がけていく。2017年の「異世界はスマートフォンとともに。」、2019年の「うちの娘の為ならば、俺はもしかしたら魔王も倒せるかもしれない。」、2020年〜2022年の「神達に拾われた男」1期・2期、2022年の「リアデイルの大地にて」、2023年の「レベル1だけどユニークスキルで最強です」、そして2024年の「歴史に残る悪女になるぞ」。
このジャンルの監督作品数では、業界でも屈指の実績を持つ。原作ファンの間では「柳瀬監督×MAHO FILM」の組み合わせは一種のブランドになっていた。
制作に対する姿勢を、柳瀬さんはRooftopのインタビューでこう語っている。「作品を大好きになることから始める」。記事の見出しにもなったこの言葉が、柳瀬さんの原作への向き合い方を端的に表す。
柳瀬さんには「自分の監督作品では若手声優にチャンスを与えられる場を作ろう」という考えがあり、サブキャストにはできるだけ経験の浅い声優を起用しようとしていたという。
SNSに広がる追悼、そして業界への問いかけ
Xでは、オリコンニュースのアニメ公式アカウントが「世界最強の後衛」の柳瀬監督死去を伝える投稿を行い、1万5千回以上閲覧された。この投稿に対し「世界最強の後衛 〜迷宮国の新人探索者〜の放送中に担当であるアニメ監督が8月に死去されたのは驚きました。御冥福をお祈り致します」というコメントが寄せられている。
放送中の作品を2本同時に抱えた状態での急逝は、ファンに驚きと悲しみを広げた。59歳、心筋梗塞。この事実は、アニメ業界の労働環境をめぐる議論とも無縁ではない。2025年には「機動戦艦ナデシコ」で知られる佐藤竜雄監督が61歳で亡くなり、「ドラえもん」映画シリーズの芝山努監督も死去するなど、ベテランの訃報が相次いでいる。
関連記事:池田勝さん訃報 享年83「ヤッターマン」ヤッターワン役 代表作と経歴を辿る
「深い愛情を注ぎ」──残された2作品の行方
「最強出涸らし皇子の暗躍帝位争い」製作委員会は、柳瀬さんについて「深い愛情を注ぎ本作の制作現場を率いてくださいました」と記した。「世界最強の後衛」は現在第9話まで放送が進んでおり、9月2日時点で放送中断や変更のアナウンスは出ていない。
アニメ制作は通常、放送より数話分先行して進む。柳瀬さんが最後までどこまで作業を終えていたのか、公式からの説明はまだない。
少女漫画誌「りぼん」に原稿を持ち込んだ少年は、30年にわたってアニメの現場を走り続けた。妻の小岩さんが書いた「本人が今1番びっくりしていると思います」という一文が、柳瀬さんの人柄と、その突然すぎる別れの重さを伝えている。
[文/構成 by さとう つづり]
関連記事:柳瀬雄之監督、放送中のアニメ”2本同時”のさなかに急逝…「世界最強の後衛」「出涸らし皇子」は今後どうなる?ファン衝撃「信じられない」


























































コメントはこちら