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GMO、攻撃者から5000万ドル(約80億円)の金銭要求と熊谷正寿代表が公表 声明文の100万ドル要求との関係は不明

GMO、攻撃者から5000万ドル(約80億円)の金銭要求と熊谷正寿代表が公表 声明文の100万ドル要求との関係は不明

時間がない人向けの30秒で理解ゾーン

GMOインターネットグループの熊谷正寿代表(会長兼社長)が10月26日、自身のブログに追記し、FX自動売買向けサーバーへの不正アクセスをめぐって攻撃者から5000万ドル(約80億円)を要求されていたと明らかにした。要求額の公表は初めてだ。24日には攻撃者とみられる側が「100万ドル」を求める声明をネット上に出しており、この記事では、要求額の中身と2つの要求の違い、10月27日未明時点のGMOの対応を整理する。

要求文書は10月21日11時57分付、期限は同日午後5時

熊谷代表が追記したのは、25日に公開したブログ「今こそ官民連携で日本を守ろう――能動的サイバー防御を具申した理由」だ。追記では、攻撃者から届いた要求文書のうち、金額が書かれた部分の画像2点を載せた。文書の日時は2026年10月21日11時57分。GMOインターネットが「お名前.com デスクトップクラウド」への不正アクセスを第1報で知らせた日にあたる。

報道によると、文書は「2026年10月21日午後5時(日本時間)までに5000万ドルをお支払いください」と求め、支払い方法には暗号資産を指定していた。期限まで5時間あまり。文面には「言い訳は通用しません」という一文もあったという。

要求とあわせて示された3つの脅し

ブログによると、金銭の要求は次の3つの脅しとセットだった。

・お客様の口座に対する不正な取引操作の継続

・接続されたお客様のPC内の情報に関する不正公開およびランサムウェア攻撃

・当社システムや運用体制等に関する内部情報の外部不正公開

ランサムウェアは、パソコンのデータを勝手に暗号化して使えなくし、元に戻す代わりにお金を要求するウイルスのことだ。熊谷代表は追記で「当社は、これらの要求に応じておらず、支払いも一切行っておりません」と書いた。

GMOはそれまでの発表で、攻撃者とみられる者から金銭を要求されていることは明らかにしていたが、金額は伏せていた。26日深夜に公開した第7報の経緯欄にも、21日の出来事として「脅迫メール(約80億円の要求)」と書き加えている。

FX自動売買用サーバーの仕組みや、口座で起きた不正な売買の訴えは次の記事で詳しく扱っている。

関連記事:GMOお名前.comのFX用サーバーに不正アクセス、口座で身に覚えのない売買の訴え相次ぐ

21日から27日までの主な動き

要求文書が届いてから、24日の声明、26日の金額公表までの流れは次の通りだ。

日付主な出来事
10月21日11時57分付で5000万ドルの要求文書(期限は同日午後5時)。GMOはサービスを止め、第1報で不正アクセスを公表
10月22日GMOが警察に相談
10月24日第4報で補償と見舞金を決定。政府関係機関に能動的サイバー防御の適用を要請。攻撃者とみられる側が100万ドルを求める声明を出す
10月25日熊谷代表がブログを公開。GMOが利用者に端末調査への協力を依頼
10月26日熊谷代表がブログに5000万ドルの要求を追記。官房長官が会見、首相が関係閣僚会議。GMOが第6報・第7報を公開し、預かった端末の解析を始める
10月27日正午が24日の声明の期限。GMOは同時刻に情報公開とランサムウェア攻撃を行うとの予告を受けたと公表している

24日の「100万ドル」声明とは金額も時期も違う

5000万ドルという数字が出る前から、ネット上ではもう1つの要求が知られていた。攻撃者とみられる側が24日、自ら開設したとするウェブサイトに出した声明だ。

21日の要求文書と24日の声明

2つの要求を並べると、違いがはっきりする。

項目21日の要求文書24日の声明
明らかにした側熊谷代表のブログ(26日追記)攻撃者とみられる側のウェブサイト
金額5000万ドル(約80億円)100万ドル(日本円で約1億5000万〜1億6000万円)
期限21日午後5時(日本時間)27日正午(日本時間)
支払い方法暗号資産(報道による)不明
GMOの公表金額を公表金額は公表していない

報道によると、24日の声明は「27日正午までに100万ドルを払えば、顧客へのランサムウェア攻撃やその他の情報公開は行わない」という趣旨だった。円換算は報道によって約1億5000万円から約1億6000万円まで幅がある。

声明の主は、サービス利用者のパソコンのデータにすべてアクセスできたと主張し、払わなければ口座の不正操作を続け、閲覧履歴などを家族や知人に送るとも予告していた。一部の利用者には、証拠だとして閲覧履歴の一部を添えたメールが届いたと報じられている。侵入の手口については、全サーバーに共通の管理者アカウントがあった、利用者がサーバーにつなぐと手元のパソコンのドライブがサーバー側から見える設定が初期状態になっていた、とも主張した。GMOは弱点の詳細を明らかにしておらず、これらはいずれも攻撃者側の言い分にとどまる。

2つの要求の関係は分からない

金額の差は4900万ドルで、24日の声明の額は最初の要求の50分の1にとどまる。最初の要求が通らなかったため額を下げたのか、それとも別の人物や集団が便乗したのか。

答えは出ていない。100万ドルはGMOが公式に示した金額ではなく、24日の声明を出した側と実際にサーバーへ侵入した者が同じかどうかも確認されていない。GMOも第7報で、予告の主を「攻撃者とみられる者」と表現するにとどめている。

27日正午の予告、GMOは「応じない」と第7報

GMOは第7報(10月26日23時10分時点)で、攻撃者とみられる者から、27日12時に利用者の情報を公開し、ランサムウェア攻撃を行うとの予告を受けていると公表した。そのうえで要求には応じないと改めて示した。理由は、払っても取られた情報が消される保証も、悪用されない保証もないためだ。警察などの関係機関に相談し、協力して対応している。

手を打つ先は、利用者の手元のパソコンだ。GMOは25日に調査への協力を呼びかけ、申し出のあった全国の利用者のもとへ従業員が出向き、端末を預かった。26日からは、グループのホワイトハッカー(防御側のセキュリティ技術者)チームが、ランサムウェアを含む不正なプログラムが入っていないかを解析している。対処法が分かれば、対象の利用者へ個別にメールで知らせるという。協力を呼びかけた日は当初「23日」と書かれていたが、27日0時20分に「25日」へ訂正された。

利用者へのお願いは4点だ。

1. 接続に使ったパソコンやスマートフォンを、ウイルス対策ソフトで「フルスキャン」する

2. 大切なデータを、ネットから切り離した外付けの記録装置などにバックアップする

3. 別の安全な端末から、金融機関やメールなどのパスワード変更、多要素認証の設定といったアカウントの保護を行う

4. 端末の調査に協力する(任意)

GMOは、同社がパスワードや認証コードを尋ねることはないとし、「被害金を取り戻す」などと費用を求める連絡には応じないよう呼びかけている。27日正午の期限は、10月27日未明の時点ではまだ来ていない。

補償の細かい中身は第4報で示されている。不正取引による損失の補償と、現在サービスを利用している全員への一律5000円の見舞金が柱だ。

関連記事:GMOインターネット、FX口座の不正取引損失を補償へ 見舞金5000円も

熊谷代表が能動的サイバー防御を求めた理由

GMOは24日、政府の関係機関に「能動的サイバー防御」の適用を緊急に要請した。10月1日に関連法の一部が施行されて運用が始まった仕組みで、重大なサイバー攻撃に対し、警察や自衛隊が攻撃元のサーバーなどに入り込んで無害化できる。電力や水道など、国民生活を支える基盤を担う「特定社会基盤事業者」が主な対象として想定されている。

熊谷代表は25日のブログで、要請の背景を説明した。影響が疑われるサーバーは2万6739件。そこから国内外70社以上の証券会社やFX事業者などにつながる環境が狙われ、「国民の金融資産、そして個人のパソコン内の生活データまでが人質に取られている」と訴えた。

AIの悪用にも触れている。グループのGMOサイバーセキュリティ byイエラエの調査で、日本企業約20社を狙った攻撃元が、本来は防御のための自律型AI侵入テストツール「ARTEX(アルテックス)」を悪用していたと確認したという。熊谷代表は、AIが生む無数の攻撃が守る側の力を上回る状況を「AIのサイバー飽和攻撃」と呼んだ。ただし、ブログが挙げたARTEXの事例は約20社を狙った攻撃についてのもので、今回のデスクトップクラウドへの攻撃でARTEXが使われたとは書いていない。

関連記事:マイクロソフト、中国系ハッカー集団がAI「ARTEX」で世界数百の組織を攻撃と発表 国内の不正アクセスでも同じツールの使用を確認

「二つの『ではない』」は承知のうえ

要請には、GMOは法が定める「特定社会基盤事業者」ではない、能動的サイバー防御は民間企業に言われて動くものではなく政府が自ら決めるものだ、という指摘が出ていた。熊谷代表はこの2点を「二つの『ではない』」と呼び、理解したうえで具申したと説明した。そのうえで「形式的な事業者区分にとどまらず、実質的な国民生活への影響に照らして適用可能性を検討していただきたい」と求めた。

自社の落ち度も認めている。社内のホワイトハッカーから改善すべき課題が事前に現場へ指摘されていたが、サービスへの影響やほかの対応との優先順位を考えながら進めた結果、「対応の深度とスピード」が足りず、攻撃者に隙を突かれたという。補償や代わりの環境、システムの作り直しにかかる費用は、すべて自社で負担するとした。

報道によると、X上ではこのブログに対し「経営判断ミスによるセキュリティ対策不足を、国全体の問題にすり替えている」「国への責任転嫁では」といった批判が目立った。今回の攻撃にAIが使われたという根拠が示されていない、との指摘も出ている。

政府は「要請の有無にかかわらず判断」

政府側の反応は26日に出た。木原稔官房長官は記者会見で、攻撃を無害化する措置は「被害組織からの要請の有無にかかわらず」、警察または防衛省・自衛隊が法律の要件に照らして判断すると説明した。法律に被害組織が要請する手続きはないとも述べた。GMOの件そのものについては、政府の対応を攻撃者に知らせることになるとして、コメントを控えた。

同じ日、高市早苗首相は首相官邸で初めて開いたサイバーセキュリティの関係閣僚会議で、能動的サイバー防御について「あらゆる対処オプションを戦略的に選択し、実行する」と語った。被害企業への支援体制づくり、攻撃の素早い情報収集と発信、海外の関係機関と協力した攻撃主体の特定の3点を関係閣僚に指示し、緊急対策パッケージを来週中にまとめる考えも示している。この会議はGMOに限らず、相次ぐ情報漏えい全体を受けたものだ。

GMOの要請に政府がどう応えたのか、具体的な措置を取ったかどうかについて、10月27日未明時点で公式な発表は確認できない。

21日に5000万ドルを突きつけられてから6日がたつ。27日正午の予告を前に、GMOは利用者から預かった端末の解析を急いでいる。

[文/構成 by ライター 凪]

寄稿者

凪
凪(なぎ)です。時事ニュースからスポーツ、社会の話題まで、その日いちばん気になる出来事を短く分かりやすく整理しています。Web記事を書き始めて7年。結果や数字は公式の発表で確かめてから書き、見出しだけで誤解されない記事を心がけています。好きなものは朝のコーヒーと、深夜のスポーツ中継。

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