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VIVANT、中国国営テレビが拷問場面を批判 問題視された「中国の別班」シンシーは架空の組織

VIVANT、中国国営テレビが拷問場面を批判 問題視された「中国の別班」シンシーは架空の組織

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中国中央テレビ(CCTV)系のニュースアカウント「央視新聞」が10月25日、TBS系日曜劇場「VIVANT」第2シーズンを批判する論評を出した。やり玉に挙がったのは、作中の中国系秘密組織「シンシー」が日本の別班員の指を切り、腹部を刺す場面だ。シンシーは”中国の別班”として描かれる架空の組織で、論評は高市早苗首相が「見たい」と名を挙げたドラマだとも紹介した。

央視新聞の論評は何を批判したのか

央視新聞は10月25日、対話アプリ「微信(WeChat)」の公式アカウントで論評を公開し、北京の新京報なども同日に転載した。論評は冒頭でドラマの筋書きを「剧情极其离谱(筋書きが極めて荒唐無稽)」と切り捨て、根拠として作中の拷問の描写を挙げた。

論評によると、ドラマには中国の情報要員が日本の情報要員の指を切り落とし、腹部を刺す場面がある。論評はこれを、旧日本軍が中国の抗日の人々に用いた拷問と「高度に重なる」と主張し、歴史上の加害を現代の中国人の姿に置き換えて対立をあおっていると批判した。

批判の矛先は自衛隊の描かれ方にも向かう。論評は、ドラマが日本の海外での越境行動を美化し、自衛隊の職能の境界をあいまいにして「拡張的な物語」を発信していると主張した。脱出する機内で、この機が攻撃されれば西側が大挙して出動しお前たちを叩きつぶす、という趣旨のせりふも問題視した場面の一つだった。

論評はさらに、日本外務省の対外発信の予算や教科書の記述、靖国神社をめぐる問題などとドラマを並べ、日本の「認知戦」の一部と位置づけた。論評が挙げた外務省予算の金額は中国側の主張で、日本側の資料による裏付けは確認できていない。

論評が出た同日、関連の話題は中国の短文投稿サイト「微博(ウェイボー)」の検索ランキングで一時1位に入った。

「中国の別班」シンシーとは 実在する組織なのか

シンシーは、ドラマの物語の中で作られた架空の組織だ。拠点が置かれる国も、作中だけに登場する架空の国になっている。

報道によると、作中のシンシーは中国における別班のような組織とされ、責任者は元中国公安部第6局長の樊林杏(ハン・リンシン、宮下今日子)。別班は、自衛隊の非公認の秘密部隊として第1シーズンから描かれてきた。その”中国版”にあたるのがシンシー、という位置づけになる。

第2シーズンは、黒須駿(松坂桃李)ら別班員5人が拉致される事件を軸に進む。第14話では、公安の野崎守(阿部寛)がシンシーとつながり、別班の情報を流していたことが明らかになった。続く第15話では、公安部長の佐野雄太郎(坂東彌十郎)が「野崎も私も日本を裏切ったわけではない」と述べ、野崎は潜入捜査の任務に就いていると説明している。拉致された別班員が捕らわれていたのは、架空の国ゴルバド共和国にあるシンシーの拠点・シャキ城という設定だ。

中国側が反発した理由の一つに、組織の”国籍”の描き方がある。10月13日に批判を投稿した微博のアカウントは、日本のドラマはこれまで仮想敵国を架空の名前にすることが多かったが、本作は中国を直接名指ししていると指摘していた。

報道では、中国のSNSで問題視されたのは、シンシーに捕らえられた別班員・和田貢(平山祐介)が拷問を受けて命を落とす場面だと伝えられた。乃木憂助(堺雅人)率いる奪還部隊はシャキ城に潜入して別班員を脱出させたが、和田だけは拷問室ではりつけにされたまま息絶えていた。乃木はヘルメットを取って一礼し、「和田、よく耐えたなあ。立派だ」と声をかけ、「日本に帰るぞ」と語りかけている。

和田を演じた平山は、TBSラジオの番組でこの場面を語った。遺体として映るため撮影中は息を止めていたと明かし、乃木の「帰るぞ」という言葉には「シビれました」と話している。

関連記事:リンリン・木幡竜、日本シリーズ第1戦を横浜スタジアムで並んで観戦 『VIVANT』周役と李役

発端は微博の投稿 高市首相の答弁との関係

央視新聞の論評より前に、批判は中国のネット上で始まっていた。経緯をまとめると次のとおりだ。

日付出来事
10月13日フォロワー約164万人の微博アカウントが、日本の対中宣伝は「エンターテインメント全般を通じた認知戦」に入ったと批判
10月14日高市首相が衆院予算委員会で「VIVANT」を録画していると答弁
10月25日央視新聞が微信で論評を公開、関連の話題が微博の検索ランキングで一時1位に。同日夜に第22話を放送
10月26日中国共産党系の環球時報が、ネット上の声を引用して批判記事を掲載

首相の答弁は、ドラマを推す趣旨のものだったのか。

答弁が出たのは14日の衆院予算委員会だった。参政党の吉川里奈議員が、美容医療を描いた配信ドラマ「ダウンタイム」を見ているかを質問すると、高市首相は「拝見しておりません」と答え、続けて「VIVANT」について「録画している」「年末と正月にまとめ見できればいいなと思って」と述べた。忙しくてドラマを見られていない、という流れでの発言だ。

央視新聞の論評は、冒頭で「VIVANT」を高市首相が名指しで見たがるドラマとして紹介した。ただし、論評の文面は国会での答弁そのものには触れていない。日中関係は、2025年11月に高市首相が台湾有事をめぐって国会で答弁して以降、緊張が続いている。ドラマへの批判は、そうした政治の空気の中で広がった。

環球時報も批判 TBSと日本政府の反応は

翌26日には、中国共産党系の環球時報も批判記事を載せた。中国のネット上の声を引用する形で、ドラマは「中国を中傷し、中国脅威論を誇張している」と主張し、中国系組織による拷問の描写を「中国人を残忍な加害者として描いている」と非難した。記事は、日本国内でもドラマに疑問を投げかける意見があると伝えている。

一方、日本側の動きは見えていない。10月27日未明の時点で、TBSや日本政府がこの批判に公式に反応したことは確認できていない。

ドラマそのものの勢いは落ちていない。央視新聞の論評が出た25日の夜に放送された第22話は、プロ野球日本シリーズの中継延長で開始が45分遅れながら、世帯視聴率18.6%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)を記録した。第2シーズン初回の18.8%に次ぐ数字で、第2シーズンは放送開始からすべての回で15%以上を保っていると報じられている。

VIVANT最終回は11月8日 第23話は11月1日放送

物語は終盤に入った。第23話は11月1日に放送され、最終回の第24話は11月8日に放送される。シンシーと別班の対立がどこに着地するかも、残る2話で描かれる。

関連記事:VIVANT最終回は11月8日 午後7時から2時間の直前特番、そのまま第24話へ

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中国の国営メディアがドラマの1場面を取り上げ、日本の「認知戦」と結びつけて批判した。シンシーは脚本上の架空の組織だが、論評は作中の描写を現実の日中関係の文脈で読んだ。制作側のTBSがこれに何らかの説明をするのかどうかは、現時点では分かっていない。

[文/構成 by ライター 飯田タツヤ]

寄稿者

飯田タツヤ
時事ニュースを中心に、社会の動きから芸能・スポーツの話題まで幅広く書いているWebライターの飯田です。ライター歴は6年。心がけているのは、発表や報道で確認できたことと、まだ分かっていないことを分けて書くこと。「何が起きて、暮らしにどう関わるのか」を最初に整理しています。休日はラジオを流しながらの散歩とサウナ。

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