井上尚弥「まだまだ井上尚弥だと証明する」中谷潤人「証明したいのは強さ」――”世紀の一戦”2日前会見で両雄が語った覚悟、続編は「ない」

時間がない人向けの30秒で理解ゾーン
WBA・WBC・IBF・WBO世界スーパーバンタム級4団体統一王者の井上尚弥と、元3階級制覇王者の中谷潤人が4月30日、5月2日の東京ドーム決戦を前に公式会見に臨んだ。井上は”まだまだ井上尚弥だ”という事実を、中谷は”強さ”を、それぞれリング上で証明すると宣言。続編については両者とも「5月2日に集中」と言い切った。
↓ 詳細が気になる方は、このまま下へ ↓
“証明したいもの”を問われた両雄、金髪の王者と静かな挑戦者
“世紀の一戦”まで残り2日。井上尚弥(33)=大橋=と中谷潤人(28)=M・T=を含む「NTTドコモ presents Lemino BOXING ダブル世界タイトルマッチ」の公式記者会見が4月30日、都内のホテルで開かれた。会場には報道陣126人が詰めかけた。
髪を金色に染めた統一王者が、挑戦者と微妙な距離を置いて着席する。3月6日の開催発表以来、55日ぶりの対面となった。会見には同じく5月2日にWBC世界バンタム級タイトルマッチで対戦する王者・井上拓真(30)=大橋、初防衛戦=と元世界4階級制覇王者・井岡一翔(37)=志成=も同席し、4選手が並んだ。
記者から「勝ち負け以外に、ボクシング以外のファンも巻き込んだこの興行で何を発信したいのか」との質問が飛ぶ。井上尚は「勝ち負け以外に?」と一度聞き返し、こう語り始めた。「今回初めて試合を見に来るファンがとても多い。ボクシングの面白さ、素晴らしさ、トップ選手同士が戦えば自ずと盛り上がる試合になるんだというのを5月2日に見せたい」。記者が「証明したいものは」と重ねて問うと、短く答える。「まだまだ井上尚弥だ、というのを証明していきたい」。
一方の中谷は表情を変えない。「今まで積み上げてきた僕の人生、井上選手の人生がぶつかる5月2日になる。1人のボクサーが積み上げてきたものをリング上で発揮して、どれだけの人が心が動いて感動してくれるか。そこをモチベーションとして持っている」。そして同じ問いに、こう即答した。「強さです」。
関連記事:井上尚弥が99%”モンスター化”する」平岡アンディが語るTHE DAY全試合勝敗予想と、対戦希望はあの世界王者
55日ぶりの対面、井上の”落ち着き”と中谷の”充実”
井上尚は現在のコンディションについて「やれることはもう全てやってきた。今は非常に落ち着いていて、2日後の試合をゆっくりと待つ状態だ」と動画で語っている。中谷については「とてもクレバーで真面目で、ボクシングにひたむきに向き合っている選手。そういった選手にはこちらもそういう姿勢で挑まないといけない」と評価。ファンに向けては「この5月2日の試合に向けて本当に人生をかけてここまでやってきた。戦う姿をしっかり目に焼きつけてほしい」と呼びかけた。
中谷はスーパーバンタム級2戦目を迎える。計量前日の会見で「体重調整も順調。明日の計量に向けてあと数百g落とすだけ」と仕上がりを報告した。大舞台に立つ心境については「このような場所に立てるボクサーも数多くない。しっかり楽しみながら、感謝しながらこのキャンプを積むことができた。すごく充実したキャンプになった」と動画で語っている。
中学卒業後、15歳で単身渡米するという異例の道を選んだ男だ。高校時代にアマチュア7冠を達成した井上尚との対比は鮮やかだ。歩んできた道は違う。向かう場所は同じリングの中央。
関連記事:「負けず嫌いでムキになってしまう」――中谷潤人が明かす自身の”弱さ”と、井上尚弥に勝つための複数の勝ち筋
両陣営が太鼓判、父トレーナーは「惜しみなく全て出してほしい」
井上尚のセコンドを務める父・真吾トレーナー(54)は、息子にこう期待を寄せた。「今までの経験、キャリアがあるので、今回に向けて練習してきたことを含めて、惜しみなく全ての技術、テクニックを出してもらいたい」。動画では短いコメントだったが、父の言葉には静かな確信がにじむ。
中谷陣営のM・Tジム・村野健会長は「本人の調子を拝見させてもらって、とても軽快に、そして力強く、しっかりとコンディション作りができている。2日の試合は皆さん本当に楽しみにしていただきたい。全力を出していい結果を出してくれると信じている」と教え子の仕上がりに太鼓判を押した。
もう一人のセコンド、中谷陣営のルディ・エルナンデス・トレーナーは、勝つ準備が整ったかと問われ、英語で即答した。「Of course(もちろん)」。続けてこう語っている。「長くトレーニングしてきた。この試合は1戦だけではなく歴史に残る、これからも語り継がれるであろう試合だということは、潤選手本人も知っていると思う。そこに向けてしっかりとトレーニングをしてきている」。
両王者の戦績は、ともに無敗。井上尚は32戦32勝27KO、中谷は32戦32勝24KOと、”32戦全勝同士”の頂上決戦となる。米リング誌のパウンド・フォー・パウンド(PFP)ランキングでは井上尚が2位、中谷が6位に位置する。
「勝つ、それだけ」――タフな練習を支えた両者の一言
これまで以上のタフな練習を何が支えたのか。井上尚は動画内で、迷いなく答えた。「それはもう1つだけ。2日後に勝つ、その気持ちだけ」。当日に貫きたいことも同じだった。「最後までやり抜くという気持ち。自分がしっかりと勝つ、それだけに向けて、それだけを考えて当日はやる」。
中谷を支えたのも、同じく一言だった。「勝利するという強い信念と気持ち」。多くの新規ファンが見守る舞台で何を伝えたいかと問われ、中谷はこう続ける。「今まで積み上げてきた僕の人生だったり、井上選手の人生だったりがぶつかる5月2日になる。1人のボクサーが積み上げてきたものをリング上で発揮して、どれだけの人の心が動いて感動してくれるか、そこがモチベーション」。
席を並べる2人の言葉が、奇しくも同じ地点に着地する。勝利への執念。その一点で2人の選手は重なっている。
続編はあるか、レナードvsデュランのように
シュガー・レイ・レナードvsロベルト・デュランのような再戦の可能性を問われた両者の答えは、ほぼ重なった。
関連記事:「井上が勝つ」バム・ロドリゲスが明かした“その理由”と、勝者への宣戦布告
井上尚「今のところ続編というのは自分の頭の中にはなくて、5月2日のことしか考えていない。まずはそこに集中していきたい」。
中谷「もう5月2日に全員集中している。それが終わってからかな」。
動画の中で中谷は、わずかに”含み”を残した。ただし、どちらも今この瞬間は一戦に全てを注ぐと強調した。同じ夜に同じドームで対戦する井上拓真も「5月2日の試合のことしか頭にない」、井岡一翔も「まずは5月2日、この先の景色を見るためにも必ず勝利したい」と、続編より目の前を選んだ。
WBO記念リング贈呈、プロモーター・大橋会長の万感
会見後、WBOのグスタボ・オリビエリ会長が登壇した。5度以上の防衛に成功した王者に贈られる、ダイヤモンドなどがちりばめられた特別なチャンピオンリング。井上は2023年7月のスティーブン・フルトン戦でWBO王座を獲得。同年12月のタパレス戦で4団体統一を達成して以降は6度の防衛に成功している。5月2日に勝てば、自身の世界記録を更新する世界戦28連勝、4団体統一王座7度目の防衛となる。
プロモーターを務める大橋秀行会長は、会見で感慨を述べた。動画には収められていないが、日刊スポーツなど複数の大手紙の取材に「50年以上前に米倉会長が東京ドームの前の後楽園球場で試合をやった。2年前の東京ドームと今回で2度目になるが、日本人同士の世界戦2つで東京ドームが満員、そしてこの4人中3人がキッズボクシングの出身。後楽園ホールを超えて東京ドームを満員にできたのは自分が思っていた以上の成果だ」と話している。
大橋ジムによると、5月2日の東京ドームは55,000人満員が確定している。井上尚自身も4月1日、自らのXで「現地チケットは完売しました!! 超満員の東京ドームはヒリヒリする。来られない方も、是非Leminoで応援よろしくお願いします!」と投稿。PPVでの応援を呼びかけた。日本人同士による4団体統一タイトルマッチは史上初だ。
5月2日、両雄が持ち寄る”人生”、世紀の一戦が迫る
井上尚が勝てば、自身の世界戦連勝記録を28に伸ばし、4団体統一7度目の防衛となる。中谷が勝てば、日本人史上2人目の4団体統一王者、そして井岡一翔、井上尚、田中恒成に次ぐ日本人史上4人目の世界4階級制覇王者となる。勝者の先には、ただ一つの勝利が示す意味の重みが待ち構える。
中谷は会見で何度か「ストーリー」という言葉を口にした。井上尚は「人生」と言い、中谷もまた「人生」と続けた。5月2日、両者が積み上げてきた時間がロープの内側でぶつかる。試合はドコモの動画配信サービス「Lemino」がペイ・パー・ビューで生配信する。
会見の最後、両者は同じフロアで記念撮影に臨んだ。世界4団体と米リング誌認定の計5本のベルトが光を放つ。中谷は会見中、その5本を取り返しに行くと別の記者会見で明言している(スポーツ報知)。尚弥は「まだまだ井上尚弥だ」と繰り返す。証明したいものが、両雄の間でくっきり分かれた。答えはリングの中で示される。
[文/構成 by 久遠(KUON)]





























































コメントはこちら